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"感情は本人の自由"なのか/映画「クロース」

フランス映画「クロース/CLOSE」を見た。


個人的な好みで言えば、好きじゃない。
だけど、完成度の高い素晴らしい作品だとも思う。

後半に出てくるセリフが、ずっと引っかかっている。
"感情は本人の自由だ"
たしかにそうだ。
だけど、本当にそうか?

人は常に"社会"や"他人の目"にしばられて生きている。生まれた瞬間から、ずっと。

主人公のレオとレミは、彼らにとって"最適な関係"を、外的な要因で自ら崩してしまう。

"感情は本人の自由"
そんな言葉が虚しくなるぐらい、感情を"社会"にコントロールされてしまう事実。
なぜこんなに"恐れ"なきゃならないんだろう。
自分自身で自分自身の感情を恐れてしまう。

後半はずっと"レオにちゃんと悲しんで欲しい。悲しむ心すら自分で摘み取らないで"って一心で見ていた。
(だからこそ、レオが一番涙を流すタイミングと場面が絶妙で唸った)

この物語を見て、"たしかに悲劇だが、これは誰でもが経験する子どもから大人への成長の過程だ"って言っちゃう人もいるかもしれない。

でも、確実に摘み取られているものがあるよね…あるんだよ。っていうのを静かにしっかりと描いている。

子供ではなく、大人にもなりきれない。って年齢設定と配役も上手いし、俯瞰にせず、常に彼ら目線で追い続ける撮影も素晴らしい。だからこそ、辛い。

喪失とがっつり向き合っている。

「怪物」との類似点が指摘されたりしているけど、個人的に後味はそれほど変わらなかった。

ただ、"2人から逃げない"強い覚悟のようなものは今作でより感じた。それは周囲の家族の彼らへの向き合い方がしっかりしているからだと思う(レオのお兄ちゃんやレミのお父さんは、短い出番ながらしっかりと印象に残る)。

まったくないわけじゃないが、激しいヘイトやハラスメントは描かれない。
だからこそ、問題の根深さがより際立つ。

"感情は本人の自由だ"って心から言える社会になって欲しい。自分で自分の大切なものを摘み取る人がこれ以上増えないように。

余談だけど"自分が何かを練習してる様を見せられる"って、かなり親密度が高いと僕は思った。

あと、日本版の宣伝コピーがすごく嫌い。
"壊したのは、僕"って個人の問題にしないでほしい。

#映画クロース #closemovie #映画

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