犬を拾った話

 高校一年生の春頃、僕は犬を拾った。朝の通学の途中だった。その犬は小型犬で、青い首輪をしており、どこかの家から逃げてきたのだろうかボロボロの紐が首輪に繋がっていた。そしてこの犬はボロ雑巾のように汚く、人間を見ると威嚇し、噛み付こうとする犬だった。

 僕はしばらくその犬を観察していた。自分以外にも通勤・通学のために歩いている人もいたのだが、その人達は犬には気がついている様子だったが、みんな素通りしていった。

 その犬は本当に汚かったし臭かった。明らかに病気も持っている様子だった。SNSで時々イヌネコを助ける動画が話題になるが、そこに出てくるような可愛らしい動物ではない。どちらかと言えば人に害をなす野犬である。

 実は僕はおそらくこの犬を以前に見たことがある。この通学路とは全く別の、もっと離れた場所で、この犬種と同じ犬が誰かの家の敷地で彷徨っている様子を見た。僕と犬の距離が50mくらい離れていたこと、他人の家の敷地であったこともあり、すぐに見失ってしまった。不確かではあるが、特徴がこのボロ雑巾のような犬と一致したように思えた。

 あのとき見捨てずに探していればここまでひどい目に遭わなくても済んだかもしれないと思うと、目の前のボロ雑巾のような犬を放っておくことができなくなってしまった。威嚇されつつも、その犬を無理やり抱きかかえて家に連れて帰った。

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