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Sonic Youthについて語ってみるよ⑤

 Sonic Youthの活動期間を下記の6つに分け、今回は⑤について書いてみます。

①黎明期:1st EPから『Bad Moon Rising』
②確立期:Steve Shelley加入から『Daydream Nation』
③オルタナティブ期:メジャー移籍、オルタナブーム
④メジャーでの実験期
⑤Jim O'Rourke参加、加入による転換期
⑥Jim O'Rourke脱退~Matador移籍~活動停止


NYC Ghosts & Flowers

 2000年リリース作。まず本作を語る前に補足を。Sonic Youthは『Washing Machine』のリリース後にSYR(Sonic Youth Recordings)というレーベルを作り、そこからメジャーでは出せないような実験的な音源をリリースしていく。SYRからのリリース作品には通し番号が付けられ、一作目はSYR1、二作目はSYR2、のように続いていく。『A Thousand Leaves』リリース前にはJim O'Rourkeとの共作でSYR3がリリースされている。さらにその後『SYR4: Goodbye 20th Century』においてもJim O'Rourkeが参加している。その流れで、本作はSonic YouthとJim O'Rourkeによるプロデュースとなっている。
 またもう一点大きな出来事があり、1999年7月、ツアー中にバンドは機材が盗難に遭ってしまう。今まで使用していた機材がなくなってしまい、スタジオにあった古い機材や新しく買った物でアルバム制作やツアーを行っていくことになる。盗難それ自体は不幸なことではあるけど、ある意味強引にこれまでと違う方法で音楽を作らざるを得なくなった、という点ではターニングポイントとも言える作品。
 というわけで、本作の音は『Washing Machine』や『A Thousand Leaves』からの延長線とは呼びにくい。勿論Sonic Youthの音ではあるけど、やはり機材がなくなったことが影響しているのか、方向性が変わったように思う。穏やかに始まる『Free City Rhymes』は徐々に激しさを増していき、ギターが大きく主張していく。続く『Renegade Princess』は彼らの曲ではかなり激しさがある。『Nervermind (What Was It Anyway)』は前作までの流れを感じ取れる曲。Kimのヴォーカルが淡々と続いていくんだけど、バックでは小さな音でギターのノイズが鳴っている。『Small Flowers Crack Concrete』は朗読のようなヴォーカルから始まり、こちらも徐々に激しさを増していく曲。、本作で一番と思うのはタイトル曲『NYC Ghosts & Flowers』で、Leeの語りかけるようなヴォーカルに覆い被さっていくようにギターの音が重なっていき、終盤では大音量のノイズ。まさにSonic Youthと言える曲。最後の曲『Lightnin'』は少し実験的とも言える曲で、静かではありつつ時折Kimのヴォーカルとギターの大きな音が鳴り響き、そのままアルバムは幕を閉じる。
 改めて聴いてみて思ったのは、ミニマルで静から動へと展開する曲が多い、ということ。これは当時流行していたMogwai等のインストロックの影響があったのかもしれない(勿論彼らにSonic Youthは大きな影響を与えている)。色々な状況が重なったこともあったとは言え、少し異質なアルバムだったのではないかと思う。

Murray Street

 2002年リリース作。前作のツアーからメンバーとなったJim O'Rourkeを含め5人体制となってから初めてのアルバム。本作は前年に起きた9.11テロの影響を受けた作品であり、スタジオも世界貿易センタービルの近くだったため、レコーディングも中断せざるを得なかったとか。
 肝心の音の方は前作とは打って変わり、非常に聴きやすくなっている。Thurstonがヴォーカルを取る最初の3曲、特に『The Empty Page』は非常に軽やかな曲。続く『Disconnection Notice』は若干暗めな曲で、中盤はお得意のノイズパートが入る。3曲目『Rain On Tin』は冒頭少しThurstonが歌うのみで、あとは終わりまで楽器のアンサンブルのみ。しかし、これが非常にかっこいい。『Karen Revisited』はLeeがヴォーカルを取る曲で、ポップではあるけどギターの音がどこか不穏で、そこもまたSonic Youthらしい。10分を超える長尺曲で、中盤から一気にノイジーな展開に。『Radical Adults Lick Godhead Style』は確かLou Reedを意識して作曲された曲だったような。全体的に良いメロディと不協和音、ノイズが素晴らしいバランスで組み合わさっていて、非常に評価も高いアルバム。

Sonic Nurse

 2004年リリース作。こちらも人気の高い1枚。Kimのヴォーカル曲『Pattern Recognition』からいきなりSonic Youth節をぶつけてくる。続く『Unmade Bed』や『Dripping Dream』は一転して穏やかな曲調。とはいえ、ノイジーなギターが当然のように挟まれるのだけど。他にも『Stones』や『Peace Attack』など、Thurstonのヴォーカル曲は歌を聴かせてくるようなものが多いように思う。『Kim Gordon & The Arthur Doyle Hand Cream』はアルバムリリース前からライブで披露されていた曲で、元々は『Mariah Carey and the Arthur Doyle Hand Cream』という曲名だったけど、さすがにNGだった模様。Kimのヴォーカル曲で非常に攻撃的と言える激しめの曲。Kimのヴォーカル曲とLeeのヴォーカル曲『Paper Cup Exit』はSonic Youthと聞いてイメージするような曲である一方、Thurstonはこれまで以上に歌ものと言っても良いような曲調。これもまた、このアルバムが人気のある一因でもあると思う。

 というわけで、ここまで5回に渡って取り上げてきたけど、次回で最終回の予定です。活動停止までのことを書いていきたい。


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