見出し画像

バスケットボールにおけるホームコート・アドバンテージについての私的に思うこと。(これは私の感想です。エビデンスはありません、)

ホームコート・アドバンテージという言葉がNBAにはある。プロボクシングにはホームタウン・デシジョンという言葉がある。


どちらも、ホームのほうが有利ということである。が意味合いはちょっと違う。


 ボクシングのほうは、露骨に「ジャッジの採点がホーム選手有利になる」という、まあズル、ホームえこひいきがあるよ、ということである。これがあることはもう常識なので、同じ日本人のチャンピオンでも、海外特に本場アメリカのラスベガスなどでタイトルを獲得したり防衛したりした選手は別格の扱いを受ける。日本国内でも、アメリカや世界のボクシング界でもそうである。ホームタウン・デシジョンをぶっとばすにはKOで勝つしかないのである。


 NBAのホームコート・アドバンテージのほうは、ホームが有利なのは観客の大半がホームをものすごい迫力で応援するから、選手がその声援に応えてものすごく頑張るから、という意味で、まあ普通はというか、表面的には使われる。別にズルじゃない、ファンの力が選手の力を引き出すから、相手を萎縮させるから、という意味合いだと一般的には思われている。


 でもでも、なのだな。前にも何度かいろんなところで書いたり言ったりしてきたが、NBAの

ホームコート・アドバンテージには、ちょっと「ホームタウン・デシジョン」的な、審判のごくごくわずかな裁量で、ホームチーム有利、少なくとも大差でホームチームが負けていたのを、終盤接戦になるくらいに調整してもよい、いやむしろそういう匙加減はNBAというリーグにおいては暗黙のうちに推奨されている、というのが僕の見立てなのである。


 バスケットボールで審判の裁量コントロールしやすいのが、シュートでリングに向かってドライブしていった選手がディフェンダーに激突したときの、「オフェンスファール(チャージング)か、ディフェンスファールか」というシチュエーションである。一応ルールブック的にはディフェンダー両足が地面について静止しているところにオフェンスがぶつかりにいけばチャージング、足が動いていればディフェンスのファール。


だが、もうこれは審判の裁量である。

(話はこの文章とは反対の、例になるが、先日の日本×オーストラリア戦では第4クォーターでの渡邊のドライブのシュートが入りファール、エンドワンで追い上げムードだと思った瞬間、オフェンスファールが吹かれて追撃ムードが萎んだ。あの裁量ひとつで流れが大きく左右された。あれはホームではなく、メダル候補オーストラリアをここで敗退させるのはまずいという強豪国への忖度裁量が発動したと僕は読んだ。)


話を戻すと、審判はゲーム全体ではおおよそ公平に判定をしたように見えるよう、帳尻を合わせようとする。


 なので、前半はややホームに厳しめに吹く。そしてホームチームがやや不利な点差で後半に入ったあと、段々とホームに有利に笛を調整していく。


 そして、第4クォーターにはいってかつてのブルズ全盛期でいえば、ジョーダンが攻めてドライブに行けばファールをほぼもらえる。シュートを外してもフリースロー。シュートが入ったときはエンドワンで三点プレーに。

 ピッペンやロン・ハーパーが、見事なディフェンスで相手のオフェンスファールを誘う。そのファールがまたチームファール上限を越えているので、攻められてもらったファールで、またフリースロー獲得。どんどん点差が縮まる。


 NBAはプロスポーツで、ホームチームが勝つか、勝たないまでも終盤まで接戦をして盛り上がる。それが地元ファンの集客につながり、どのチームも経営的に安定することが望ましい。そういうビジネス上の要請がホームコート・アドバンテージを発生させる審判の微妙な匙加減を容認、いやむしろ推奨している理由であろう。これがNBA文化「微妙なファールは試合後半ではホームに有利めに吹く」として定着したというのが、僕の見立てである。(あくまで私の私見、長年30年間ほどNBAを見続けてきた感想である。エビデンスはない。)


 ところが、2010年代にはいり、ゴールデンステート・ウォリアーズ全盛期になり、これが変質したと僕はさらに、分析している。スプラッシュブラザース、ステファン・カリーとクレイ・トンプソンという、史上最高のスリーポイントシューターが二人同時期に在籍し、これまたブルズで史上最高のスリーポイントシューターとして活躍したスティーブ・カーがヘッドコーチとなり、(現役時代はマイケルジョーダンやピッペンのような万能選手の陰で、脇役だったわけだが)、スリーポイントシューターを主役にする戦術を開発採用した。


 第4クォーターの追い上げの主役はスリーポイントシュートにかわった。


 ドライブしての得点中心なら審判がファール裁量でゲームの流れをホーム有利にコントロールすることは容易だが、スリーポイントがその主役になると、審判が介入しにくい。ゲームの流れの変化はスリーポイントシューターの調子による影響が、審判コントロールより大きくなる。そういう変化がNBAに起きた。


 その結果、ウォーリアーズが出場したNBAファイナルでは、お互いアウェイチームばかりが勝ってしまう、なんていう珍シリーズが出てきたりした。その傾向は現在も続いている。


 あるいはアウェイでもお構いなしにスプラッシュブラザースがスリーポイントを決めまくって、敵地ホームのファンがすっかり意気消沈、みたいなゲームが増えたのである。


 こうしたNBAの文化とトレンドは、オリンピックやW杯という国どうしの戦いの大会にも影響を与えている。審判は無意識のうちに後半になるとなんとなく(観客応援圧力を感じて)「激突ファール」をホーム有利に吹くし、そういうこととは無関係に、終盤でスリーポイントを決めまくったチームが勝つことが多い。


 今回、沖縄開催でホームで観客圧力が審判に影響を与えるくらい強烈であることと、(フリースロー獲得数で相手を上回ったこと。もちろん懸命にプレーした選手も偉いが、それをファールとしてとってくれる場合とくれない場合に審判による偏りがあることは試合を見ての通りである。それを、決めたのは100%選手が偉い。)と、後半にスリーポイントを爆発的に決めるシューターが複数揃ったこと、河村、冨永、比江島。日本の快進撃にはこの二要素が効いている。

 日本代表は、ホームでなら世界の強豪と戦えるようになった。世界のトップ10とは差があるが、それ以下となら互角の勝負になる。

 しかし、それはホームでなら、である。ホームコート・アドバンテージが存在するバスケットの世界で、アウェイでどれだけ力が発揮できるかはパリ五輪に出場して、試してみないと分からない。明日カーボベルデに勝って、パリ五輪アウェイでの日本代表の実力を見てみたいなあ。


(追記)

こういうホームコート・アドバンテージを発生させるには、満員のホームの観客の審判や敵チームへの圧力が必須であることをNBAで五シーズンも戦っている渡邊雄太は熟知しており、だからこそ、ベンチ前一等席が空席ガラガラ(スポンサーチケット問題)に激怒してツイッター投稿し、2試合目から解決させたのである。今回の日本代表活躍の要因として、「渡邊雄太選手の空席チケット問題への怒りと解決へ即座に行動したこと」というのは、ものすごく大きなことだったのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?