先日のドイツ下院選挙(小選挙区比例代表併用制)と、日本の衆院選挙(小選挙区比例代表並立制)、投票所で、小選挙区と比例の二枚投票するけれど、全然違う制度だった。ちゃんと理解している?どっちがいいと思う?

前置き ここ数日、野党の候補者調整が進んでいるが、いろいろ摩擦も聞こえている。いや、仕方ないとは思うよね。

 今日になって、ツイッター上で「××県××区で共闘が実現し、私は下りることになりました。」「私は比例単独で戦うことになりました」とツイートしている人が何人か目について、その人のプロフィールを見ると、みな共産党なんだな。


 立憲・共産、両方が準備してきた候補がいる選挙区では、共産党が降りる形で一本化が進むことが大半になりそうに見える。


 れいわとの関係で言えば、東京八区問題が解決したと思ったら、昨日は、別の県の、れいわの候補予定者の決起集会に、過激な立憲支持者が乗り込んで「降りろ」と暴れるという事件も起きた。


 自公政権を倒すために「小選挙区では立憲候補に一本化」というところが多くなると思う。それで立憲の議席数が伸び、共産党以下の小政党は、比例がほとんどになり、(まあ、いままでもそうだったと言えばそうなのだが)、議席数を減らす可能性が高いと思う。


 そうであれば、立憲民主は、選挙後も(おそらく政権はとれないと思うので)より野党内では圧倒的な野党第一党ということになると思う。のだが、そうなったときも、継続的に共産党以下、選挙協力で譲歩してくれた党と対話を続け、合意できる政策での協力関係を維持する責任が生まれるということは、立憲執行部はよく自覚すべきだと思う。そういういわば仁義とか恩義とかを、立憲が組織として持っているのかを、有権者は見ているぞ。


 へんな話、自民党の派閥というのは、立憲と共産と社民とれいわ新選組くらいの政策の違いの幅を持ちつつ、政権維持のために「自民党」といって固まっているわけだから。立憲民主も、「野党の最大派閥になったが、弱小派閥(政党)の声も聴く、意見も取り入れる」態度が、この総選挙結果の衆議院が続く限りは立憲にはあるということなんだがな。なんか、そのあたり、すごく信用できない感じが、今からしてしまうのは、なんでだろうね。

 と、誰かを悪者にしても仕方なくて、そもそも、選挙制度がなんか変なんじゃないか、と思ったわけ。それぞれの政党が普通にそれぞれ候補を立てて思いきり戦って、その得票結果に基づいて、きちんと国会議員数が振り分けられれば、それでいいんじゃないの。その「得票比率」と「国会議員数」が、異常に解離してしまう今の選挙制度がおかしいんじゃないの。

 この、なんか野党第二党以下の政党にとって、すごく不利な感じがするのは、日本の選挙制度が、「国民の投票した政党を国会の議員数に正しく反映しないといけない」という理想を実現できない、できそこない制度だからなんじゃね?

さて、ここからが本題。この前、行われたドイツ下院選挙って、どんななのかな。

 そう思って、つい最近、行われた、連立政権当たり前の、ドイツの下院選挙制度を詳しく調べてみたら、あらまあ、よくできている。

 そこのところ、すごくうまくできているんだわ。つい先日行われた、ドイツの下院選挙(日本の総選挙にあたる。)


 ドイツの選挙制度は「小選挙区比例代表併用制」というと、「え、日本の衆院選挙と基本、一緒じゃん、と思うかもしれないが、全然違う。日本のは「小選挙区比例代表並立制」というんだな。


 「選挙区では候補者に投票し、比例では政党名を書いて、二票投するんだよ」と言われると。「日本と一緒じゃん」と思うかもしれないが、全然違う。


 比例の方での得票比率に、そのまんま(国会の細かく言うと5%以下の弱小政党は除外される。)国会の議員配分が決まる。

日本で言えば、前回総選挙の比例投票の方の政党別得票率は
自民党33% 立憲民主20% 希望の党17% 公明党13% 共産党8% 日本維新の会7%。ここまで。
社民党2%はじめそれ以下はカウントされません。
弱小政党分を除いて100%に計算し直した比率で(まあ、上記とほぼ変わりない)、この比率で議員比率は決まります。自民公明じゃ過半数に届かないと言うことだな、ドイツの選挙制度だと。

 衆院定数が465だから、33%だと自民党は155議席しか取れないことになる。

 いやちょっと待て、ここからが、ドイツの選挙制度の面白いところというか複雑なところ。


 いちおう、小選挙区に定数の半分を、比例で定数の半分を、ということになっている。日本で言えば、定数の半分、(465だと奇数で割り切れないから、ここから勝手にひとつ増やして466ということで議論は進めていくぞ。)、233議席は、小選挙区で勝った候補者は、当選なわけだ。


 日本の前回総選挙では、(そもそも小選挙区定数289 、比例176と、日本では比例の方が少ないのだが)、小選挙区289のうち自民が218を取っちゃっている。獲得率76%だ。

 もしドイツと同じように小選挙区・比例半々だとして、(奇数だと面倒なので仮定でひとつ増やしちゃうけど)この論での小選挙区定数233ずつだとすると、自民党は小選挙区で233議席中178議席取れちゃっているわけだ。

 そこで、初めの条件に戻るよ。比例の獲得比率でしか議員は配分されません。466議席の33%は155人。

 あれ、小選挙区で177人当選しているのに、自民党は小選挙区比例合わせて、衆院全部で155人しか議員は獲得しちゃいけないんだよね。33%しか獲得しちゃいけないんだから。22人、多く当選させすぎじゃん。小選挙区分だけで、もうオーバーしちゃってる。

でも、この人たち、小選挙区で当選しているから、議員にしなきゃ。当選させちゃいます。


(わかりにくいから確認ね。衆院定数を466と仮定します。小選挙区に233人を配分します。比例に233人を配分します。その小選挙区233議席のうち、自民党が178人を取ってしまいます。しかし、比例で得票率は33%だから、(次、重要比例ではなくて)衆院全体466議席の1/3、155議席しか獲得しちゃいけないことになる。)


この矛盾をどう解決するか。ここからがドイツの選挙制度の変わっているところ。

自民党議員が177人でも、自民党比率が33%になるように、衆議院議員の数を増やしちゃうんですね。既定の定数が466人のところ177×100/33=531人。はい、衆議院議員の数は531人に決定。

定数531人に増えれば、自民党小選挙区177人全員当選させても、自民党比率は33%。めでたしめでたし。そのかわり、比例当選は0だよ、自民党は。

で、その増えた531人に対して、下位政党に、比例獲得比率で議員を割りふります。

衆院全体の議員比率が、自民党33% 立憲民主20% 希望の党17% 公明党13% 共産党8% 日本維新の会7%になるように、531議席を各政党に割りふります。

当然、小選挙区では自民党が過剰に勝った分、ほとんどの下位政党は小選挙区で過剰に負けているので、その分を比例名簿で復活させていきます。(各県ごとの、その政党候補の得票率に応じて割りふっていく。)


 ほんとうは、細かいところはいろいろあるのだが、基本、そういう仕組みなのだな。ドイツの仕組み。


 つまり、日本が、もしドイツのような選挙制度になると、まあだいたい自民党1/3 公明と維新、前回希望の党から出て自民に戻ったようなやつ合わせて、5割強、立憲、共産、前回希望の党に参加しちゃった立憲・国民の民主系の野党で5割弱、という具合になると思うのだがな。

こういう「比例の得票比率に国会の議席配分はなる」を大原則に、小選挙区を併用する制度なら、別に小選挙区で野党候補一本化、なんて無理をする必要もなくなるんだけどな。

 日本の制度だと、「基本は小選挙区で勝ったやつが偉い。」それだと三位以下政党には議員がほぼゼロになっちゃうから、比例代表をちょびっとだけ配分して、ほんのすこしだけ(得票した比率よりはずっと少ない数の)議員を下位弱小政党も、お情けで当選させてやろう。っていうのが、日本の「小選挙区比例代表並立制)なんだよな。

 選挙制度がいびつだから、民意が議席数に反映されない、不完全民主主義の国になっちゃっていて、そのいびつな国会では選挙制度改革なんて進まないから、トホホな選挙戦になるのである。

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