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失恋3日目の夜です

こんばんは、皆様いかがお眠りでしょうか? すいれんです。
今日も先生との残業を終え、少し前に帰宅。
今日は満月です。
しかもスーパームーンだそうです。

月に祈りをささげてみようと思います。

さて、失恋3日目の今日。
朝から先生は上機嫌です。
思えば、この頃先生はいつも上機嫌です。
しかも、8月の初めから中旬まで感じられた『なんとなくぎこちない態度』をとらなくなり、4月以降一貫していた『わたしを一直線に特別扱い」する態度に、いつのまにか、一転して戻ったので、『逆に』戸惑っています。

午前中、先生はときどき大きな独り言を言いながら、それは上機嫌で書類仕事に猛進していました。

わたしも、先生が書類を作るときに必要な情報を収集するために、前日先生が『こんなのあったらいいな』と言い、必要な内容をピックアップしていた問診票を今日中に作るべく、集中して作業に取り組んでいました。

そんななか、事務さんに「この新規の方の特別指示書がないんですけど作ってないんですか?」と言われ、はたと考えました。
その方はいわゆる『癌末期』の状態で訪問看護に入る方であり、適用される保険は『医療保険』の約束だったはず…
それならば、医療保険を適用し制限なく訪問看護は入れるはずですが、退院直後の特別指示での医療保険を適用するのであれば、基本の保険は『介護保険』ということになる…
『そういう約束だったっけ?』
わたしの中に迷いが生まれました。
「特別指示書が交付されていない」と言ってきたのは契約を担当している事務さんだったからです。
そのため、退院時カンファレンスに参加した『マネージャー』という立場の看護師に『どういう話だったのか?』を尋ねたところ、「初診の時に訪問看護いませんでしたか?」と言われました。
初診時訪問看護はいなかったと伝えると、「ふつう、初診の時に訪問看護に訊いて、どうするか確認するんですけど」と言われ、カチンとしてしまったわたし。

そんなことってあるのでしょうか?
なんのために退院時カンファレンスに行ったり契約をしてきたりしているのでしょう?

初診の状況を伝達した翌日の朝礼で、先生から『この方は癌末期で入ります』というお話があったし、そもそも退院時『癌末期の患者様』という案件で受けたケースなので、当クリニックだけではなく訪問看護も共通認識でしかるべき…
医療保険で請求するのと介護保険で請求するのとでは報酬が違うし、そもそも保険が違うので不正請求となり、訪問看護ステーションに『返戻』『取り下げ』『再請求』という負担をかけることになってしまいます。
それを懸念したため「訪問看護に何の保険で入っているか確認しますね」といった私に対し、ついには、訪問看護経験があるという、クリニック立ち上げメンバー(いわゆる一番の古株)のナースから、「訪問看護に訊くんじゃなくて、先生が『癌末期でいいよ』と言わなければ癌末期は取れないので、先生に訊けばいいんじゃないですか?」と言われてしまう始末。

申し訳ありませんが、これらのやり取りはまさに不毛でした。
お話にならないのだなと途方に暮れました。

ちょうどそのタイミングが12時前くらいの時間帯。
マネージャーが「すいちゃん、お昼どうしますか?みんなで行きますか?」と訊いてきました。

昨日先生が非常勤の女医さんと来年からの診療体制について話をするので…と断りをいれ、先生とわたし、非常勤の女医さんの3人で湖畔のレストランでランチ+デザートクルージングを楽しんだのを妬み…というか、診療体制の話に、マネージャーである自分を外したのがおもしろくなかったのでしょう、今日の朝礼でさっそくマウントをとりにきて、「今日は診療もないし、お昼は少しゆっくり2時間くらい休めればと思っています」と発表。

2時間くらい。
まさに、昨日わたし達がランチを楽しんだ時間を名指しし朝礼で発表するあたり、なんともバカ丸出し感が否めず、人としての品のなさを感じざるを得ませんでしたが、
その発言を受け、先生が「そうだね、みんなたまにゆっくり、普段は一緒に時間を過ごせない人と楽しんで」と言いました。
『あぁ、先生があいつらに連れていかれる…』と思い、朝から肩落ち。

わたしは誰とでもご飯を食べられる人間ではありません。
先生は皆と行くんだとしても、ゆっくり2時間休んでもいいのなら、自分は家に帰ってゆっくりしようと決めていました。

なので、「わたしは家に帰ってゆっくりしますので」と断り、嫌味たっぷりに投げられた訪問看護への訪問看護指示書の作成に取りかかりました。

先生もマネジャーに誘われていましたが、「書類があんねん」と断る声が聞こえ、それを背にわたしは訪問看護指示書を作成していました。
皆がクリニックを出て行ったあと、すぐに先生がわたしのデスクに来て
「あいつらバカだな、まったくすいちゃんの言ってることがわからんのやな」と言いました。
そしてすぐに「お昼いこうや」と誘われたので、「先生皆と行くと思ったので、わたし家に帰ろうと思ってたんですよ」と言いながら、さっさと書類作成を終了し、二人でイタリアンランチ+イタリアンカフェに行ってきました。

優秀すぎるあまり、いつもクリニックの看護師の攻撃の的になっているわたしをいつもかばって守ってくれる先生。
とても嬉しい。
しかし、挑発に乗って余計なことを言ってしまう愚かな自分にわたしは落ち込んでいました。
挑発に乗って言ってしまった余計な言葉とは、
1.退院時カンファレンスや契約時にどういう話だったのか、訪問看護の請求制度を知らない相手に訊いてしまったこと
2.『保険が違うと訪問看護の請求に過誤が生じる』という部分がわかっていない相手に、冒頭にその説明をしないまま「訪問看護に確認する」と言ってしまったこと

先生は移動の車の中で、「あいつらでなく、全部おれに訊いたらいいで」と言ってくれました。
先生もわかっているのです。
わたしが言うことには、他の看護師全員で猛攻撃するのでなにも言わない方が良いのだということを。
失敗しました。
毎回同じ失敗を繰り返し、いつも先生を煩わせてしまいます。

猛省するわたしを見かねた様子の先生を右隣に感じ、『申し訳ないな』と思ったわたしは、先生が左手首にはめているヘアゴムをぱちんとはじいて、『気落ちしていないよ、大丈夫だよ』と伝えようとしました。
前にヘアゴムをぱちんとはじいて先生を痛めつけたことがあったので、先生は「やめてや」と腕をひき、「そんなことしたら、乳もむで」とその手の甲でわたしのおっぱいに触れました。
そんなひと時のじゃれあいを経、うっきうっき気分に変換し二人でランチ+カフェを楽しむことができ幸せでした。

午後診療は楽しく順調に終わり、18時クリニックに戻るとほかのスタッフはすぐに帰って行ったので、すぐに先生が「まずなんか食いに行こうや」と再び二人でラーメンを食べに行きました。

食べ終えて戻り、ひとつの机で先生と残業をしました。
先生は検査結果から、病歴や治療を見直す作業、
わたしは先生から要望のあった問診票の仕上げ。

先生は、これからやっていく仕事の展望を話し、開業も考えている中で、このクリニックは2年を限度に辞めるので「妹ちゃん(わたしのこと)、一緒にいこうや」と言ってくれました。
わたしは即決、「絶対行きます!」

先生は4月にこのクリニックに来た頃すぐに、「おれ妹っておらんけど、すいちゃんなんか妹みたいやねん」と言っていました。
わたしは『妹』なのです。

残業中、バッグに入っている先生のプライベートのスマホがLINEと思われる着信音を鳴らしました。
心に嵐が吹き抜けます。
『彼女から?』
妄想でここまで嫉妬するのか…と自分に辟易しながら、今先生の隣にいる自分は幸せなのだと、その幸せだけをしっかりみよう、と思っていました。

わたしは幸せ者です。
大好きな人に、仮令看護師としてだけだとしても、こんなに大切にしてもらえている。
今を大切にしよう。

月に祈りをささげて、また明日先生に会えるのを楽しみに、眠ります。

失恋は続きます…


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