イベントレポート:Box Virtual Summit Japan Summer

 一昨日、じっくり聞かせていただきました、box主催のオンラインセミナー。
 情シス部門を預かることになっちゃった私にとって、非常に実りあるイベントでしたので、皆様にも情報還元したいと思います。

 てな、前置きよりも本心は、ネット記事等で以前からお話をお伺いしたかった著名なCIO/CDOのお話を聞くためだけに聴講した、ってのが本音ですけどね。笑

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枠にとらわれない働き方~ニューノーマルに向けて~

株式会社Box Japan 代表取締役社長 古市 克典

 最初はboxの古市社長がboxの持っているデータから、世界各国における在宅勤務の状況を解析。boxだと、オフィスからアクセスしているか、自宅からアクセスしているかのデータを取ることが出来るので、そんなビックデータも披露してくれた。やはり、Amazon、Google、Salesforceのような世界のデファクト・スタンダードは持っているデータ量が半端ない!!

 上記の解析の結果や、オープンデータから勘案し、やはり日本はまだまだテレワークが出来ている企業は少ない。就業人口の10%程度しかなく、他の先進国との違いが著しくある。(ドイツや中国と比べても低いので、製造業主体だからという訳ではなさそう。)

 上記の原因となるのが、低いSaaS利用率ではないか?
古市さんは明言しなかったが、日本企業の「なんでも自己流にカスタマイズ」が行き過ぎた結果、SaaSのようなサービスが普及せず、自社ネットワーク内でないと業務が成立しない、などのハード制約があるために、テレワーク率が低いのではないだろうか?

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これからの日本を支えるトランスフォーメーション

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 三輪 昭尚 氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ グループCDIO 谷崎 勝教 氏
国立研究開発法人理化学研究所 情報システム部 黒川 原佳 氏

 スイマセン。業務都合でこちらの講演は聞けず。。。

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働き方を解放しよう~Box最新ロードマップ~

 box社の社員による新機能の説明。商品紹介的なものが多いので割愛。ただし、使う側からすると、痒いところに手が届いた感じの機能が沢山。

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CIOトーク

株式会社荏原製作所 執行役 情報通信統括部長 小和瀬 浩之 氏
ヤンマー元取締役CIO 矢島 孝應 氏

 まさに私が話を聞いてみたいと思っている荏原の小和瀬さん、ご登壇!!
 それだけでテンション上がっちゃいました。

 荏原、ヤンマーともに挙げていたのは、『ITの経営戦略への組み込み』。
 そこまで気負っていき、戦略的にまとまった投資をしないとレガシーに引きづられたITになってしまうということ。この辺りは、兵力の逐次投入すると勝てないよ、というランチェスター戦略とも通じる部分がありますね。ここぞ!というときにはキチンとまとまった投資する必要があると。

 更にヤンマーでは『全社員SE化』というものを進めた。これは社員がコードを書け、と言っているわけではなく、ツールとしてのITをちゃんと使いこなせるようにしていく、というもの。社員のITリテラシーを向上させないと、ツールばかり導入してもダメ!ということを強く感じました。

 また、二人共おっしゃっていたのは、ITはあくまでツールの一つ。ツールを知るだけでなく、ツールを使いこなすためのアクションが重要、と説いていました。例えば、三文字略語でカッコよく言っても社員には伝わらないし、現場の目線に合わせたIT導入&活用が重要とのこと。

 私は特に「活用」は重要だと感じました。バ○とハサミは使いよう、とはよく言ったもんですね。

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製造業のニューノーマルはどうあるべきか

フジテック株式会社 常務執行役員(CIO/CDO) 友岡 賢二 氏

 こちらの友岡さんもお話を聞きたいと願っていた伝説のCIOのお一人。武闘派CIOとして有名人。noteもフォローさせて貰ってます♪

 さて、肝心のお話ですが、まずはVPNのお話。今まではVPNという閉じられた空間で仕事をしていれば安全だったが、コロナ禍で、在宅勤務が始まってしまうと、VPNの渋滞等が発生し、逆に足枷になってしまったとの事。(ココについては私も自分の会社で非常に苦労しました〜。)

 とはいえ、在宅勤務&データのみで仕事ができたか?といえば、デジタル化されていない情報が山ほどあることがコロナ禍で明るみになった。ココをデジタル化することが第一歩ではあるが、実際にやろうとすると泥臭い作業になる。との事。ITはそんなにキラキラしたもんじゃ無い。

 これは一朝一夕で出来るものでは無いので、まずは小さくても良いので、とりあえず第一歩を踏み出すことが重要である。なにせITの世界は脚が速いので、使えるかどうかを検討している間に時代が変わることは良くある話。「まずは確かめる」が重要だが、今の時代は色々なSaaSがあるので、「とりあえずの一歩」を踏み出しやすい環境が揃っている。

 で、本当に良いものであれば、使い始めれば社内への普及は勝手に進む。(考えてみれば、LINEが流行ったのも、手軽にスタートできるからだろう。)そのためにも、情シス部門は他部門よりも、いち早く試用してみるという気概が重要なのかも知れない。

 また、SaaSはまずは使ってみて、使った感想を稟議書に載せておけば、説得力が違ってくる、との事。(そりゃそうだ。)実際に使った人が有用だ、と感じている意見があるのに導入しない経営陣はいないはず。

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 老舗企業のデジタル化への挑戦 ~楽しく効率的に成果を挙げる企業にするために~

株式会社カクイチ 執行役員 事業戦略部 部長 鈴木 琢巳 氏

 明治から続く企業ではあるが、ずっと新事業を繰り返してきた面白い企業。ただし、平均年齢47歳で、経営陣がAmazonを知らないくらいなのに、boxを全社導入しちゃったというストーリー紹介。

 とりあえず、Slack、G Suite、Uniposの導入を決めちゃう、って行動力もぶっ飛んでいるが、上記のバックグラウンドがある中で、全社で当たり前に使い続けちゃう世界観も作り上げちゃったという驚きの運営力。

 その取り組みの中で面白いのは、まずは『データはbox、入り口はSlack、作業はiPhone』スローガンに掲げて、ガンガンと使い始めちゃった。友岡さんのところでも話していたが、まずはやってみる。この考えは今の時代に非常に重要なのかも知れない。

 その他にもコロナ禍で複合機のFAXのケーブルを切断して、boxに直接入るように工夫したり、全社にiPhoneを配布し、工場で必要な書類はiPhoneで見る。資料の在り処はQRコードで貼っておく、等の細かい工夫をしたらしい。

 最初は「うちみたいな会社で出来るのか?」という疑問が合ったが、やってみたら思った以上に広がった。まずは、「ココはムリかも」と思っている部署から始めると、「あそこが出来るならうちも出来るかも」とドンドンと利用者が増えてくると感じたらしい。

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これからの企業ITのあるべき姿~過去、現在、そして未来へ~

日清食品ホールディングス株式会社 情報企画部 成田 敏博 氏
ヤフー株式会社 システム統括本部 情報システム本部 廣瀬 正則 氏
株式会社LIXIL デジタル部門 デジタルテクノロジーセンター 安井 卓 氏
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 白川 克 氏

 3名のパネルディスカッション的な最終セッション。先日直接(と言ってもZoom越しですが)お話できたLIXILの安井さんがご登壇!!

 コロナ禍で今までは進めたかったIT施策が急激に進むことができたと感じている情シス部員が多いのでは無いか?特に脱紙文化などは情シス部門が啓蒙していても「うちはやっぱり紙がないと、、、」と言っていた事業部門のほうが「はやく紙を失くしたい!」と懇願してきた。

 また、情シス部門は業界が違っても、求められていることはあまり変わらないので普遍性が高い。なので、他業界の情シスの知見はそのまま自分の会社に応用できることが多い。(なので、CIO/CDOが色々な企業を渡り歩いているだ、と個人的に納得)また、情シス部門のトップ同士は結構情報交換をしているらしい。

 情シスとしては社内で利用するツールは統一したいが、事業部門事にやりたいこと、使いたい機能は異なる。なので、情シス部門は多くのツールを準備しておくことが寛容である。ただし、自社の業務フローを見直さず、カスタマイズを繰り返して自社独自ソフトを作ってしまう日本企業が多すぎる。これは日本の競争力を落とす原因だといっても過言ではない。

 情シスとしては、新しいツールを経営陣へ説明する必要があると思うが、そこで三文字略語を使うのは逆効果になるので注意。実務に直結した名詞を使い、SaaS利用だと他社事例や自社での試験導入などの結果が使えるので、これを利用するのが良いだろう。

 とはいえ、ITへの理解が低い経営陣が率いる会社はヤバいかも知れない。。。これからはITリテラシーの高低が会社の競争力を決めると言っても過言ではない。経営者だけでなく、従業員も。。。

 だからこそ、情シス部門に求められるものは大きい。社内だけでなく社外にも仲間を作り、一緒に日本の情シスの未来を明るくしていきましょう。


※原田感想を後日追記予定。

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