母の介護に疲れた。2

最近イライラする事が増えた。自分の思うような行動をしてくれない母に、とにかくイライラした。理解はしている。もう母は正常な判断が出来ないのだと。以前出来ていた事が出来ないのだと。それでも、ダメだった。とにかく耐えられなかった。
タクシーに乗って買い物に行き、冷蔵庫にあるものを買ってこられても｢ありがとう｣とは言えない。そもそも往復のタクシー代もばかにならない。買い物は私がしてくるから、欲しいものがあったら言って欲しいと言っても、｢あんたは仕事行って疲れてるから｣と買い物に行こうとする。
週末にまとめて洗濯しようと思っても、先に洗濯されてしまう。ご飯を炊くのは明日にしようと思っても先に炊いてしまう。全ての私の予定をダメにされる。良かれと思ってする母の行動が、全て私には『余計なこと』になってしまっていた。
何もしなくていいと言った。私がちゃんと計画しているから大丈夫だからと言った。それでも数日経てば忘れている。多めに炊かれたご飯は余るから結局冷凍しなくてはいけない。会社に着ていくシャツを洗濯する為に、少量で洗濯しなければならない。
イライラした。家事自体にはストレスはない。トイレ掃除も風呂掃除も苦じゃない。けれどイライラした。
認知症の方には優しく接しなければならないと言われる。判断が出来ない人に、記憶が曖昧な人に怒っても仕方がない。あるがままを受け入れなさいと。
全て受け入れるなんて、私には無理だ。
テレビの電源を消す事が出来ない。お風呂を適温に沸かす事が出来ない。同じことを何回も聞かれる。母と2人暮らしの私に、全て振りかかってくる。
引き出しの中をぐちゃぐちゃにしてしまうので、保険証類は全て私が預かった。タクシーに乗って買い物に行き、転倒でもしたら大変なので銀行のカードも全て私が預かった。本人も納得した。はずだった。

数日おきに、｢銀行のカードがない｣｢保険証がない｣と言う。私が預かっていると言ってもまた同じことを聞いていくる。お金があったら余計なものを買うし、タクシー代が勿体ないから預かっていると言っても、｢私だってお金をもっておかないと｣と言う(全く持たせていない訳では無い)。
そのうち｢盗られた｣と言い出した。私が持っているからと言ったら渡せと言う。理由を言っても渡せと言う。挙句の果てには泣きながら｢警察に言うしかない｣と言い出した。

私は母の保険証と銀行のカード、そして通帳を常に持ち歩かなければならなくなった。
優しくしなければ、とは分かっている。でも私だって人間だ。実の親子だからこそ耐えられないものがある。

私が死んでしまいたかった。消えてしまいたかった。