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Review One-Shots! 平沢進のPCMスネア編

こんにちは。ハニワニハと申します。
まずはこちらをご覧ください。

「どこかで聞いたことがあるな」「あれ、この音って……」などの感想を抱いた方もいるのではないでしょうか。
これらは、主に80年代後半〜90年代前半にかけてP-MODEL/平沢進のソロ作品でよく用いられたスネアドラムのサウンドです。

いまやパソコン一台あれば打ち込みで曲が作れる時代なのは、みなさんのご存知の通りです。しかし、P-MODELや平沢進ソロ初期の作品が作られた当時は、ドラムマシンやシーケンサーといった数台のハードウェア機材を用いて打ち込みをするのが一般的でした。平沢氏も例外ではありません。

この記事は、それらの作品で用いられたPCM音源機材のスネアの音のみをレビューしていく大変ニッチな記事です。
取り上げる機材は、

  • Roland R-8

  • YAMAHA RX11

  • KORG M1

の、3点です。
なお、再生には実機ではなく、DAW『KORG Gadget』のサンプラーとM1のクローン音源を利用しています。

補足:PCM音源ってなに?

シンセサイザーやドラムマシンで使われる、デジタル音源の種類のひとつ。楽器などを実際に鳴らした音を録音(サンプリング)して再生する。
電子回路で音を合成するアナログ音源に比べ、格段にリアルな音が出せる。

Roland R-8

言わずと知れたRolandの名機。サンプリングレートは44.1kHz、ビットレートは16bitと、CDに匹敵する音質を誇ります。
大きな特徴として、実際に人間がドラムを叩く時の打点の変化や微妙なリズムの揺れを再現する「ヒューマン・フィール」機能がついていることが挙げられます。シンバルの連打なども非常に自然。

さて、スネアの音は……

抜けのある、いい意味で軽いサウンド。高域の響き方が気持ち良いですね。
こちらはR-8の拡張別売りサウンドカード「SN-R8-10 Dance」に収録されている「House Snare」のようです。

入手方法

当たり前ですが生産はもう終了しているので、実機を入手したい場合は中古を探すことになります。価格は、メルカリを覗くとおよそ5万円前後です。
また、これに限った話ではありませんが、昔のドラムマシンは経年劣化によってパッドが接点不良を起こしている場合があるため、ラック版があればそれを購入した方がいいようです。R-8の場合はR-8Mが該当しますね。

音源がほしいだけなら、割と色々な場所でサンプルが配布されているのでダウンロードしてみると良いでしょう。House Snareのほかにも、聞き覚えのある特徴的なサウンドが収録されているので、要チェックです。

YAMAHA RX11

1984年発売のリズムマシン。P-MODELでは、アルバム「ワン・パターン」で大活躍しました。
説明書によれば、ビットレートは8bit(ただし、圧縮により14bitに相当)とのことです。デジタルドラムマシンの草分け的存在であるLM-1は80年の発売で8bit、LM-2が82年の発売で12bitなのを考えるとなかなかのスペックですね。

さて、スネアの音は……

Roland R-8とはうって変わってローファイで、独特なタイトさを含む音
収録されている音源28音色中の8音をスネアが占めていますが、ここではその中の「HEAVY」を聞いていただきました。連打は「Zebra」そのままです。
R-8のような人間味のあるドラムではありませんが、個人的にはこうしたいかにも「デジタルドラムマシンでっせ」というサウンドの方が好きですね。

入手方法

こちらも中古を探すのが前提になります。メルカリではだいたい2万円に届かないぐらいのお値段ですが、ハードオフのジャンクコーナーなどでもたまに見かけます。
またRX11の廉価版としてRX15というドラムマシンも存在します。こちらは5000円を切る値段で販売されていることも珍しくありません。ただし、音色数が28から15になり、主にスネアがめちゃくちゃ削られているので購入時は注意が必要です。

音源がほしいだけなら、主に海外のあちこちのサイトで配布されているのでダウンロードすると良いでしょう。シェイカーやハイハットの音も必聴です。

KORG M1

ワークステーションキーボードとして時代を築いたシンセサイザー。ドラムマシンではありませんが、シーケンサーやエフェクトも内蔵されているのでこれ一台で音楽制作が可能です。
ドラム音色もパートごとに多数用意されているリッチなシンセサイザー。中でも代表的なスネアの音が……

これですね。ほかの機材ではあまり見られないギラつき、ハイファイな音が最高です。
M1の音は初期の平沢進ソロ作品や「error CD」に高頻度で登場しています(ただし、ラック版の「M1R」であると推測されます)。特に後者ではパートに関わらずプリセットがそのまま使われているケースが多く、M1を堪能するためのアルバムと言っても過言ではないでしょう。

入手方法

中古で売っていますが、値段云々以前にとにかく大きくて重いです。出先のハードオフなどで見つけても軽率に買わないことをお勧めします。買うならラック版のM1Rにしましょう。

またKORGはM1を完全再現した「M1 V2」「iM1 for iPad」をリリースしています。エディットのしやすさや制作への取り込みやすさを考えるとこちらに軍配が上がりますね。

おわりに

平沢進・P-MODEL作品で使われたPCMドラムマシンのスネアの音を紹介しましたが、いかがだったでしょう。楽器・パートレベルでの音楽レビューは初めての試みでしたが、それなりに書けるものですね。
「次はこの音について書いてくれ」というリクエストがあれば、お気軽にコメントをお寄せください。

それではまた来週!

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