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音楽メディアの最初のweb記事を読む

みなさん、webの音楽メディアって読んでますか?

インターネットやスマートフォンの普及によって、雑誌からwebでの記事に力を入れるメディアが増えているという言説が流布してからはや数年。
音楽雑誌は買わないけど、これまで買っていた所と同じ出版社・メディアのweb記事は読んでいる、という人も少なくはないはず。
かくいう私は音楽雑誌の購読はしていないし、かといってwebの記事も熱心に読んでいるわけではない。新着の記事で気になったらクリックするか調べ物をしてるときに出てきたら読む、それくらい。

でもそんなんじゃ得られる情報を取捨選択しすぎな気もするし、有益な情報を見落としている可能性もあるのです。
それは単体で記事を読めてしまうweb媒体の弱点であって、対して雑誌の良いところは求めていたこと以外の同時に掲載された情報も入手できる点だったわけです。


ということで、あえて雑誌的にいつもとは違うところに狙いを付けて、普段ではたどり着かないようなwebの音楽記事を探して読んでいこうと思います。

そして、どんなメディアにも必ず"一つ"は存在する記事があります。
それは、最初に投稿された記事
物事には始まりがありますからね。
もちろん削除された可能性もあるので、今回は現存している最古の記事を読んでいこうと思います。


rockin' on

まずはみなさんご存知、「rockin' on」。
ライトな音楽好きからコアなオタクまで、誰もが一度は目を通したことがありそうな大手メディア。
ロックジャンルを中心にした、国内外のさまざまなアーティストの記事がいっぱいです。
そんなrockin' on、最初の記事は2007年6月18日11:53に投稿。

https://rockinon.com/news/detail/250

こちらはサンボマスターの新曲リリースとライブの告知。両国国技館でのライブだったんですね。

私はサンボマスターをフェスでしか観たことがないのですが、大体出番は30〜45分くらい。
それを過去の曲全ての5時間のライブが予想されると。
フェスで見ても凄まじいエネルギー量で45分で演者も客もヘトヘトだった気がするんですけど、それを5時間も演るとなるとエゲツない疲労があったんじゃないかなぁ......

ということで調べてみると、rockin' on内にライブレポが。

https://rockinon.com/live/detail/28.amp

ホントに5時間以上やったっぽい...



音楽ナタリー

株式会社ナターシャが運営する音楽や漫画、お笑いなどのカルチャーの最新情報を発信する大型ニュースサイト、の音楽部門「音楽ナタリー」。
公式によると、ナタリー全体で毎月3500本を超えるニュース記事を投稿しているらしいです。
すっごいですね。
最古の記事は2007年1月15日
ナタリーの開設日は2007年2月らしいんですけど、どうなってるんですかね。

https://natalie.mu/music/news/17

現存最古はAAAのカバーアルバムの告知。
「過去に着うたなど配信のみで聴くことができた数々のカバー曲をまとめたもの。」とのこと。

懐かしいタイトルの曲名がずらりでちょっと面白いし、AAAってそういう戦略でのアプローチをしていたグループだったんですね。全然知らなかった。
ジャケを見たら全身デニムの8人組がCREAMのGoodbyeくらいピッチリと並んでいて、あまり知識のないAAAなだけに、初期はちょっとイメージと違うっぽい。

ていうか、着うたとかいうワードの懐かしさよ。

どうでもいいんですけど、モンキー・マジックって歌唱の部分で個を出しづらい気がしてあんまりカバーに向いてない気がするんですよね。どうでもいいんですけど。

そんなナタリー、今年15周年ということで記念ムービーというものが公開されています。
私の好きな伊藤万理華さんが出演されてるので未聴の方は要チェック。



ローリング・ストーン ジャパン

世界で最も有名と言っても過言では無いアメリカ最大のカルチャーマガジン、「ローリング・ストーン」の国内版webメディア。
元が海外のメディアということもあり、国内での展開は遅めだったようで、最古の記事は2015年12月11日

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/25094/1/1/1

うわ〜、クリス・コーネルのインタビューですよ......
2015年ってことは亡くなる2年前の記事だし、それ以降どれくらいメディアのインタビューを受けてるのか分からないけど、生前の貴重なインタビューであることには変わりなさそう。
実際読んでみると割と前向きというか、自分の活動を振り返ってポジティブに話しているような内容のインタビューなだけに色々と考えてしまいます。
最後のやりとりがとても印象的で、自身のソロツアーに挑む姿勢をニール・ヤングに重ね合わせています。

電車で読んでたのですが、この最後の会話を見てちょっと泣きそうになったのを堪えました。

しかし、シアトルのカリスマ的ロックスターであるクリス・コーネルとカート・コバーンに関わってくるニール・ヤング。その偉大さが十二分に分かりますね。


BARKS

現存している最古の記事は2000年3月29年
国内の音楽媒体の中ではかなり古参のweb媒体っぽい。
世紀が揺れ動く時代の年度末。めちゃくちゃ忙しかっただろうなぁ。

https://www.barks.jp/news/?id=52000132

アメリカで最も売れたアーティストの一人、ガース・ブルックスについての記事なんですけど、まず音楽の話ではなくて、新作映画プロジェクトの話なのが驚き。
さらに驚きなのが、ガースってMLBでプロ野球選手だったこと。

全然知らなかったよ......
打率、散々だし......
どんな経緯でプロ野球選手になったんだよ、ガースは...…


最後にコンサートの告知が。
「Tribute To Healing」というコンサートだったようですが、チケットは1000ドルからとのこと。

高くない???どんなコンサート???

Tribute To Healingについても調べてみたんですけど、情報が出てこなかったのでご存知の方がいたら教えてください。


Mikiki

Mikiki」は大手音楽ソフトチェーンのタワーレコードが運営するwebメディア。
国内外問わずニッチな音楽からメジャーな音楽まで様々なジャンルのレビューに加えて、タワレコのフリーマガジンの「bounce」の記事の掲載なども行なっています。
設立は2014年。最古の記事も同年の3月25日

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/20

ギリシャの作曲家、エレニ・カラインドルーのアルバムレビュー。

レビューにもある通り、東欧音楽と現代音楽をベースにした幻想的な雰囲気のクラシカルな作品。
エレニは巨匠、テオ・アンゲロプロスの劇伴を担当していたとのことで、アンゲロプロスの映像美とリンクするような儚さを感じますね。

恐らくかなり著名な作曲家であることは間違いないのですが、当方恥ずかしながら初めて名前を知り、作品を聴きました。
というか、映画音楽の作曲家のソロ名義の作品ってなかなか聴くことがなかったかも。

ちなみに、この記事の次に古いのはアイドルグループ・°C-uteの元メンバー梅田えりかのソロデビュー作のレビュー。
振れ幅というか、守備範囲がものすごい。


Real Sounds

”ホンネで音楽を楽しむリスナー”に向けて、をコンセプトに設立されたWebメディア「Real Sound」。
アーティストの近況、リリースやライブの情報から、シーンの分析記事などなど、読者のの音楽生活をさらに楽しくするコンテンツが盛りだくさんとのこと。

珍しく現存最古の記事が「創刊のお知らせ」でした。
たしかに普通はそうだよね。
何故、他のメディアではそれが残ってないのか。

https://realsound.jp/2013/07/post-13.html

ということで、その次に残っている記事がこちら。

https://realsound.jp/2013/07/orz.html

謎のパーティー集団orzについての記事。
エレニ・カラインドルーと同じくorzについては全く知らず、初めて名前を見ましたが、リアルサウンドの最古の記事が謎のパーティー集団のインタビューって尖りすぎてる。
クラーク博士みたいな煽り文句も、無茶苦茶な選挙ポスター風アー写も絶妙なセンスで嫌いじゃない。

Wikipediaに記事があり、「FC2の広告動画で楽曲がヘビーローテーションされ話題になった経歴がある。」らしい。
これ、時代が違ったらTikTokでバズってた可能性があると考えると惜しいですね、orz。

シングル曲の「世界はひとつ」は意外とトラックがかっこいい。
パンデミック以後の世界には足りないものが溢れていますね。


Pitchfork

海外メディアからも一つまみ。

創業からディスクレビューを中心とした多くの記事を送り出したネットの音楽メディアの先駆けである「Pitchfork」。

世界中の音楽好きから愛され、時には嫌われるド級音楽情報メディア。その影響のデカさ、説明不要。
大人も子供もおねーさんも、誰もが10.0点と0.0点のアルバムリストを調べたことだろう。

現在は創業当時のウェブサイトとは違ってはいるがサイトのアーカイブがちゃんと残っていて、最初に投稿されたレビューもしっかりと現存。
興味本位で調べて既にご存知の方も少なくはないはず。

正確な投稿日は記されていないが多分創業した年である1996年に投稿されている。
当然、今回紹介したどのメディアよりも古い。それがこちら。


http://web.archive.org/web/20000816161549/http://www.pitchforkmedia.com/record-reviews/a/amps/pacer.shtml

1995年にリリースされたThe Ampsの唯一のアルバム「Pacer」のレビュー。ライターはp4k創始者のRyan Schreiber

90年代から2000年代に活躍し、オルタナやインディーロックシーンに現在進行形で影響を与え続けるThe Breedersのメンバー達のサブプロジェクト・The Amps。
Guided by VoicesのRobert Pollardが参加しており、Kim Dealと合わせてオハイオインディーシーンのヒーローが2人並んでいる中々のアルバム。
無論、内容も素晴らしいです。

Kim Dealといえば、ピロウズの山中さわお氏が熱烈なファンで有名。


https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/17549


ていうか、p4kの最初のレビューは8.2なんだよね。
ムカつくアルバムを酷評するべくサイトを始めた、とか全然ありそうなだけに普通に自分の好きなアルバムをレビューしたくて立ち上げたと思うとちょっと安心。

そのほかにPitchforkのレビューの歴史について気になるヘッズ達にはこちらを。

https://pitchfork.com/features/lists-and-guides/the-history-of-the-pitchfork-reviews-section-in-38-important-reviews/



ちょっと本筋とはズレますが、海外の特大リスナー参加型音楽レビューサイトであるRate Your Musicに最初に登録されたアルバムをみなさんはご存知ですか?
音楽好きなら誰もが一度は覗いたことがありそうなサイトであるRYM。
でも、最初に登録されたアルバムはあまり知られていないかも。

それがこのアルバム。

https://rateyourmusic.com/release/album/counting-crows/august-and-everything-after/

アメリカのロックバンド、カウンティング・クロウズの1stアルバム「August and Everything After」です。
90年代のアメリカンロックを代表するアルバムである今作が記念すべき一作目だったんですね。
現在、RYMでは500万を超えるアルバム、シングル等の情報があることを考えるとちょっと意外ですよね。

ちなみに、二番目に追加されたアーティストはイギリスのバンド、ケニッキー。

ビートルズでもレディオヘッドでもピンクフロイドでも無いんです。

詳しく知りたい方はこちらのRYMの歴史をご覧になってください。

https://rateyourmusic.com/list/marvelmaker/a-select-history-of-early-rym/




ちなみに本アカウント、Water Walkもwebの音楽メディア。ちゃんと最初の記事があります。
最近読み始めていただいた方でしたら、もしかしたらまだ最古の記事を読んだことがない人もいるかもしれないので、一応紹介。

こちらはWater WalkのオーガナイザーであるEPOCALC氏による独創的な筆致(?)の名作note。
Corneliusの代表的な楽曲の一つ、「Point Of View Point」のまさかの文字起こし。
まだ未読の方がいたらぜひに。

以上、様々なweb音楽メディアの現存最古の記事を紹介させていただきました。

スゴい時間のサンボマスターのツアーファイナル、元プロ野球選手のガース、謎のパーティー集団、etc...
知らなかった色んなことを知ることができてとても満足でございます。

皆さんも雑誌のアーカイブを読むかのように、様々なweb記事を遡って読んでみると新しい発見があるかもしれないです。
それでは、良いネットサーフィンライフを。



Text by レイレイ・セフォー


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