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他ジャンルの語法で音楽レビュー・葉巻編

この世には様々なジャンルの批評があります。
映画や書物の批評はもちろんのこと、レストランのレビューやお酒のテイスティング、香水のレビューまで。もちろん音楽批評も含まれるでしょう。

では音楽を他ジャンルの語法で批評したらどうなるのでしょうか?

このシリーズではBeach Boys "Pet Sounds"の批評を様々な分野のレビュワーが批評します。

前回まではこちら。

今回は葉巻のテイスティングノート風に書いてもらいました。


どうも、EPOCALCです。
今日は新しい葉巻を購入しましたので、レビューしたいと思います。

"Pet Sounds"

アメリカで生産されている、古典的な葉巻の一つです。発売当時のアメリカ国内売上は芳しくなかったものの、イギリスを中心に人気に火が付き以来世界的な名シガーとして名を馳せています。また流行のおかげか、最近になってさらに評判を増してきているそうです。これは期待できますね!


ちなみに、レビューの前に自宅で二週間ほど熟成させています。


○葉巻外観・ドロー

※葉巻レビューでは着火前に外観とドロー(点火前の吸い心地)をチェックします。

ラッパー(※1)の色は薄め。緑の外装が印象的なものになっています。古典的な方法で生産されていたためか、当時の葉巻と比しても地味なものであったそう。

ドローは良好。土や木の濃厚な香り。これを動物園の匂いと評する人もいそうです。


○序盤

※葉巻は味や香りが変わります。その為レビューも序盤・中盤・終盤で行います。

序盤から濃厚かつ滑らかなチョコレートの甘さからスタート。かなり華やかなスタートと言える。かなり旨い!

しかしながら背後にはコーヒーの苦みがうっすらといる。またペッパーの辛味も抑え目ながらも、少し感じる。

喫煙開始七分を過ぎた時点で序盤の華やかさはやや後退する。それ故コーヒー味が前面に出てくることになる。この時点で着火直後とは違った印象になっている。ここの変化について好みは分かれるように思うが、このような変わり方はなかなか珍しい。

ドロー・燃焼挙動はともに良好で、ほとんど均等に燃え進んでいる。

フレーバーはミディアムフル。ニコチン量は少なめであり、とても良い。


○中盤

序盤での変化は殆ど維持されている。チョコレート主体の甘さはさらに背後に行き、コーヒーの苦みが前に出始めている。しかしただ苦いだけではなく、甘さと苦さの絶妙なマリアージュが楽しめる。焦がしたパンの味も登場するが、乱雑にはならない。

複雑な構成ながら破綻しないこのバランスは、ここにきてこの葉巻の本領が発揮されつつあるようにも思われる。

フレーバーはミディアムフルとそこまで強くはないが、ニコチン量は多め。吸いやすいフレーバーのため気づかずに多量に吸いすぎないように気を付ける必要がある。


○終盤

中盤で感じた苦みと甘みの素晴らしいマリアージュは終盤まで持続している。しかしながら「甘さ」がチョコレートの甘さから滑らかなカラメルソースのような甘さに変化している。これはチョコレートの甘さと焦がしたパンの味がともに合わさり変化した結果のように思える。

絶妙な均衡を保ったままフィニッシュ。途中、火入れ(※2)の心配はなかった。


喫煙時間:36分


○総評

"Pet Sounds"はチョコレート~カラメルの甘みとコーヒーの苦みの唯一無二のマリアージュが楽しめる、素晴らしい葉巻と言えます。後半になるにつれ苦みが増していくのですが、序盤から存在している甘みの質の変化・通奏低音として存在するペッパーの辛味が「ただ苦いだけではない旨さ」を演出していると言えるでしょう。

ただこの変化は大変絶妙なものであり、もしかすると葉巻初心者の方の中には変化が分からず途中で飽きてしまわれる方もいるかもしれません。仮にそう思ってしまっても、様々な葉巻を経験した上でもう一度吸ってみることをオススメします。この葉巻には派手さはないものの、唯一無二と言える風味を楽しめます。


参考までに、この”Pet Sounds”は”Pitchfork”にて、9.4という高評価を得ており、”Rolling Stone”では歴代2位の高評価を得ています。


※1:ラッパーとは外側の葉のこと。(今回はレーベル面やジャケについて考えています)

※2:燃焼挙動が悪い葉巻は途中で火入れが必要になります。



参考資料


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