シャニPは浅倉透と共に未来を歩めるのか?

要約


浅倉透というキャラクターについて、コミュを重ねるにつれて自分の理解が変化していることを自覚した為,この文章を書こうと思いました。
結論から言うと、現在の浅倉透とシャニP(アイドルマスターシャイニーカラーズに登場する、283プロダクションのプロデューサーの通称)の関係は破綻するスレスレを彷徨っており、「10年後も一緒にいたい」と透が主張し続けなければならないほどに危険な状態ではないか、という事です。
何故上記のように推測するに至ったかを、「つづく、」「LP」「チョコレー党、起立!」などのコミュ内での描写を挟みながら記述します。

1. 透明だった君が爆弾魔になるまえに

2021年に実装された第4の育成シナリオ、「Launding Point」。
このシナリオでは、大手デベロッパーの広告に出演することと引き換えに行動が制限され、「自由」が奪われることに強い忌避感を抱く透と大きい企画に参画する経験を経て「自由」を掴んでほしいとのぞむシャニPの亀裂が描かれました。
最終的に透はこの広告のオファーを受けますが、「爆発するかもしれない」「交通事故を起こすかもしれない」と同時に言っています。
この2つの言葉で、彼女は何を伝えたかったのでしょうか。私の見立てでは、そのヒントは「つづく、」の中に存在しています。

「つづく、」のTrue End内で、シャニPの使用しているPCのハードディスクが壊れた際に、透は「燃えたら何も残らない」と言っていました。そして、このシナリオのメインメッセージは、「10年後もシャニPと一緒に生きていたい」という思いを透は抱いているというものです。
燃える≒爆発すると置き換え,2つのコミュを並行して見れば、彼女の担当ライターの表現したい事が、一つ推測できます。

「浅倉透はシャニPと一緒にいたいと強く願っているが、シャニPの価値観だけで彼女を拘束するならば浅倉透は爆発し、シャニPの元から去っていくだろう」

ここでいう爆発を具体的に置き換えるならば、チョコレートを販売している途中に店のショッピングカートに乗ったり、生放送のライブ中に歌う事を拒否することです。
クライアントや283プロダクションの信頼を損なう行動を躊躇なく行い、事務所との契約解除まで至るかもしれないことです。


一つ注意書きをしておくと、シャニPは彼女を利用したい訳ではありません。むしろ担当アイドル達が自由に生きていけるようにと強く願い、行動している人物であるとシナリオ内からは読み取る事ができます。
それにも関わらずこのような摩擦ができつつある構造については、後で触れていきたいと思います。

2.乗りたかった、ショッピングカートに。どうしても


前述の通り,浅倉透は仕事中にクライアントのショッピングカートに乗るというある種の「交通事故」を起こしています。
この時、「さざ波はいつも凡庸な音がする」でノクチルは不良集団ではないというメッセージを貰ったのにまた逆戻りしたのかと落胆した人も少なからず存在したのではないでしょうか。

この件で反省文を書いた際,彼女はその日の出来事を朝起きるところから振り返った上で,こう締めました。「ショッピングカートに乗ってみたかったので、ショッピングカートに乗った」

一見何も考えずに書いたとしか思えないこの文章にも、意味はあると言い切れます。

ここで「つづく、」の第4シナリオをみてみましょう。
ここでは日誌を出すノルマを課しているシャニPが、その意義を語るシーンがあります。

「経験した出来事だけじゃなくて、その時に何を感じたのか、未来の自分のために書いてほしい」
つづく、

WINGの時には「練習した」などといった表現に終始していた浅倉が、文書の中で「どうしても乗ってみたくなった」と語っています。
浅倉透は逆戻りしているのではなく、ずっと変わり続けているのではないでしょうか。それが良くない方向への変化だとしても。

間違えて浜に出てしまったゾウのように 時間は戸惑いを含みながらゆっくりと進んでいく それは青く硬い心にとってそれはつまずくほどに長く感じられるかもしれない

しかし巻き戻るということはない
海に出るつもりじゃなかったし 予告文


3.「自由」を塗り替えた奴ら


ここまで、浅倉透の描写に焦点を当てた推測をしてきました。
最後には、彼女のシナリオ中で描かれているシャニPの行動にも焦点を当てます。

まず、LPでのシャニPは大手デベロッパーの広告案件を受諾することで,透が成長することによる自由を掴んでほしいとずっと願っていました。彼が意図している「自由」の意味を、芹沢あさひのシナリオ「空と青とアイツ」の中で似たようなシチュエーションに置かれたときの言動から推測すると、

・他者の命令・圧力に対する拒否権を持つ事
・その基盤を作るために社会の一員としての役割或いは責任を果たし、自分以外の人間(ファンなど)からの信用を得る事

という風になりました。

俺が壊したくないし 誰かに壊されてほしくもないんだ --もし、この島が別の誰かの物だったとしても
『空と青とアイツ』より

空と青とアイツ

上記のコミュ以外からも,シャニPは担当アイドル達が迷った時に個人の未来がより良いものになるように行動します。
時にはアイドル個々人にとって耳が痛くなるような、一番触れられたくない部分に踏み込む事も躊躇わないと読み取れます。

シャニPは担当アイドル達の「個人の自由」の為に行動できると人物だと私は認識しています。

しかし、浅倉透にとっての「自由」はもっと普遍的なもの。この世界は誰のものでも無いはずなのに,他者から自由を奪うもの。捕食するだけで捕食されない、ただ肥え太る存在が彼女は許容できないのです。
それは、出演者を部品のように扱って番組を制作するスタッフの形を取り、時には閑古鳥が鳴いている映画館が収容された建物の土地を買収し、取り壊しに追い込む大手デベロッパーの姿を取っている。

以上の事から、私はLPで起きていたシャニPと透のすれ違いは、「自由」の説明する対象が個人のものか世界のものであるかという認識の違いから起きたものだと結論を立てました。

今の浅倉は彼女が嫌う捕食者達のようには振る舞いたくない、と考えているように見えますが、「チョコレー党」の中で仕事中に小売店のショッピングカートに乗るという事を早速やらかしています。
最初に似たような事を起こした「天塵」では、幼馴染である小糸を軽んじられたという大義名分があった為悪い事だという印象は抱きにくかったと思います。しかし、彼女は再び取引先に被害を与えかねない事を行いました。2021年の夏に実装された「さざ波はいつも凡庸な音がする」のシナリオの中で「ノクチルに反社会性のある振る舞いを期待するのは思い込みが過ぎた」という番組ディレクターが描かれ、ノクチルや透の中の暴力性を否定するニュアンスと解釈できたにも関わらずです。

現状、浅倉透が本気で暴力性を振るおうとすれば、幼馴染にすら止めることは難しい。
これを「友達が侮辱されたから」というだけで正当化してしまい、そのあり方を否定する何かが現れなければ、いつか浅倉透が権力を手に入れた時に、かつて彼女が叛逆した捕食者達のように、独りよがりな「自由」のために社会に大きい損害を与える可能性は低くありません。

だからこそ、シャニPが透に新しい「自由」の道を示した事は真っ当に若い人間を育てようとする大人としては正しい態度だと言わざるをえないのです。例えそれが誘導尋問の形を取っていたとしても。

4.それでも、共に10年後を迎えるために

最後に、2022年のバレンタインデーとホワイトデーのコミュを見ていきましょう。

ここでは、透はプロデューサーに靴やネクタイをプレゼントする為に貯金する、と言っていました。

ここまでの考察を元に、透は自分の本能に従って行動すれば契約解除などの形でシャニPと別れる事になりうる自覚を持っている前提で話を進めます。

贈り物をする為に貯金するから待ってほしい、という言葉は、お金が貯まるまで自分と相手は関係を絶たないう事を暗に示しています。

似たような言動として、「つづく、」のコミュの中でも10年後にシャニPは自分が録音テープに残したメッセージを聞いてくれる、と透は確信しているような言動を取っています。

つまり、透はシャニPと将来一緒にいられるか不安であるからこそ「録音テープ」「靴やネクタイのプレゼント」という約束をする事で10年後も共に歩いていける未来を迎えようとしたのではないでしょうか。

あとがき

シャニPと透は、生き方が全く違う。だからこそ、これからずっと、透やノクチルは他のアイドル達のように「応援してくれるファンの為に」アイドルとして活動する事はないのかもしれません。

そしてその事が原因で、ノクチルはどれだけ時を重ねても、経験を積んでも、本当にやりたい事をして生きていけば、それは社会から迫害されるに値する行動になってしまうのかもしれない。
この先ずっと、「礼儀知らず」「自分本位」「不人気」と言われるようなキャラクターとして扱い続けられるかもしれない。

これから先、浅倉透をはじめとするノクチルの4人がどう描かれ、どのような交流をしていくかはわからない。

ただ、天塵でどれだけ批判されようと、その後作中でどれだけ不遇に扱われようとも彼女達は決して誰かに責任を押し付けなかった。その上で、自分達の道を貫いた。
私はノクチルが今も持ち続ける輝きを信じて、今後のプロデュースをしたいと考えている。

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