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悪女とは
7500万円の横領金を資本に、銀座のママに転身したベテラン女子行員、原口元子。店のホステス波子のパトロンである産婦人科病院長楢林に目をつけた元子は、元愛人の婦長を抱きこんで隠し預金を調べあげ、5000万円を出させるのに成功する。次に彼女は、医大専門予備校の理事長・橋田を利用するため、その誘いに応じるが……。
夜の紳士たちを獲物に、彼女の欲望はさらにひろがってゆく。
2021年2月26日
この本を読もうとしたきっかけは、谷崎潤一郎の「痴人の愛」だ。妖婦ナオミが平凡なサラリー・マンを誘惑し、思いの通りに操る。そのナオミの心情、言い換えれば悪女の内面を知りたくて本書を読み始めた。
読み進めていくうちに、主人公の元子はビジョンをしっかり持ちたった一人で決断のできる女性だとわかった。欲に目がくらんだのではない。承認欲求に振り回されるのでもない。自我を保って目的を遂げる強い精神力を持った女性だ。
自分の行い、横領をはっきりと認めたうえで、身一つで目的のために冷ややかに笑う彼女はとても格好よく見えた。
しかし、悪行には変わりがない。当時絶対者であった男たちと対等に渡り合う様は美しいが、必ずその悪行の対価があるのではないか。
果たしてそれがどんな形で元子を襲い、彼女がどう切り抜けるのか。
下巻が楽しみである。
悪女の内面がわかったかというと、微妙である。ナオミと元子を比べることも難しい。
二人に共通しているのは、自分に自信があることだろう。そして相手に与える自身の影響力をはっきりとわかっていたことだ。
悪女になりたいわけではないが、その自信の一部でも欲しいものである。
追記
実はこの読書記録を書いたのち、禁じ手である下巻の流し読みを行ってしまった。それくらい楽しみだったのだが、あまりの結末に読む気力を失ってしまった。
2022/02/27現在もその衝撃から立ち直れず、下巻を開くことができない。
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