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全部のせ88鍵 M-AUDIO Hammer 88 ProがいかにDTMerのために作られているか全力で説明したい

 もともとMIDIコントローラとして使っていたKORG SP170-Sの一部の鍵盤が壊れてベロシティが127に振り切れる問題があったので買い換えることにした。M-AUDIO Hammer 88 Proに買い替えてから3ヶ月くらい触った結果、とても良い買い物をしたと思っているので、M-AUDIO Hammer 88 Proがいかに良いMIDIコントローラなのかを全力で紹介したい。

 この記事を見てM-AUDIO Hammer 88 Proを気に入っていただけたら、ぜひこちらからお買い上げください。今後も製品レビューを書くモチベーションになります。(Amazonアフィリエイト)


M-AUDIO Hammer 88 Proを全力で推したい

 価格・品質ともに満足できる買い物だったのでM-AUDIO Hammer 88 Proを全力で推したい。この記事が参考になりそうな人は以下の通り。

  • 88鍵のMIDIコントローラを探している

  • 価格はできるだけおさえたい

  • 25鍵 / 37鍵 / 49鍵 / 61鍵 のMIDIコントローラは持っているが、88鍵が気になり始めた(73鍵の人はあまり88鍵を避けた結果のはず)

  • ピアノはピアノとして弾けるMIDIコントローラのクオリティを求めている

  • DAW上のパラメータをフェーダやツマミでいじることもしたい

  • 鍵盤だけではなく、フィンガードラムも楽しみたい

  • MPCやMaschineのようにサンプルを加工してPad演奏したい

  • Ableton Liveのセッションビューをコントロールしたい

そんな欲張りなあなたの要望を満たすのがM-AUDIO Hammer 88 Proなのだ。

ハンマーのタッチが良い。安かろう悪かろうではない。

 M-AUDIO?いや聞いたことはあるけど、自分でM-AUDIO製品を触ったことはないかな。という人もいるだろう。私もその一人だった。結論としては、M-AUDIO Hammer 88 Proの鍵盤のタッチはすごく好みですごく満足している。少なくともこれまで使っていた KORG SP170-S よりも好き。重すぎず軽すぎない。こればかりは好みによるところなので実際に触ってみなければわからないので、実際に触れるお店で確認して欲しい。

 Youtubeで音楽関連のデバイスのレビューをしているSanjey Cこちらの動画で、YAMAHAやKORGやNative InstrumentsやArturiaの88鍵よりも軽めであると表現しており、重めのタッチが好きな人は他の88鍵を好むかもしれない、と言っている。
 確かにタッチは軽めなのでずっしりとしたピアノ鍵を思うと物足りないかもしれないが、オルガンやシンセを軽快に弾くにはこれくらいの重さと軽さのバランスが絶妙なのではないかと思う。

 M-AUDIO Hammer 88 Proの開封直後は鍵盤にフィルムが貼ってあってあまりに鍵盤がピカピカ過ぎるゆえに、指が鍵盤上ですべりにくくキュッキュというひっかかりがあって弾きにくいが、弾いているうちに手のあぶらが鍵盤に全体的になじんできて気にならなくなる。最初にピアノ用のクリーナーで拭いても良いのかもしれない。


Hammer 88 Pro は DTMerとしての費用対効果が抜群である

 M-AUDIO Hammer 88 Proが候補に上がる人は多くはピアノ経験者だと思う。私もこれまでピアノタッチの88鍵をMIDIコントローラとして使っていたので、88鍵の中から次のMIDIコントローラを選ぶことにした。

 88鍵のMIDIコントローラを選ぼうと思ったときに候補として考えたのはこのあたりだった。

  • MIDIコントローラ

    • 2.4万円 M-AUDIO Keystation 88

    • 7.0万円 M-AUDIO Hammer 88 Pro

    • 11.4万円 Arturia Keylab 88 MkII

    • 11.6万円 Native Instruments KOMPLETE KONTROL S88 MK2

    • 12.0万円 Roland A-88 MkII

  • 音源搭載でMIDIコントローラにもなる

    • 3万円 Roland GO:PIANO

    • 4.7万円 KORG D1

    • 13.7万円 Roland JUNO-DS88

    • 13.8万円 Roland RD-88

    • 22.0万円 KORG NAUTILUS-88
      ※価格は2021/12/30現在のサウンドハウス価格

 これを機にKOMPLETEに手を出しNative Instrumentsと一生添い遂げるか、あるいはハードウェア音源を当てにしてJUNO-DSやNAUTILUSも視野に入れるかと迷ったが、まずは音源付きを考えることはやめた。FANTOM-8(40.2万円)へのあこがれはあるが高すぎてもはや候補にもならない。

 純粋な88鍵のMIDIコントローラを選ぼうとなるとM-AUDIOか、Artriaか、Rolandかという選択になる。他にもNovationがLaunchkeyというDTM界隈に対して良いMIDIコントローラを世に送り出しているが、残念ながらNovationから88鍵のプロダクトは出ていない。

 老舗Rolandが手掛ける2020年3月ごろにまだ発売されたばかりの88鍵の高級MIDIコントローラ A-88MKII。

 たしかにデザインもシンプルでツマミが8個ついていて、USBはまさかのType-C。いかにも時代の先を行く最新の88鍵といわんばかりの仕様。

 が、しかしちょっと待て。Roland A-88 MKII 12.0万円。これはあくまでもただのMIDIコントローラ。今日日、コントローラにソフト音源やハード音源やらセットでもようやくこの価格という時代にコントローラだけで12万円は払えない。だったら気持ちばかりのピアノ音源が搭載されているRoland GO:PIANOやKORG D1だって候補に入れたって構わないくらいだ。

 MIDIコントローラ単体で10万超えは許容できない。と考え始めてから目に止まったのがM-AUDIO Hammer 88 Proだった。自分のために作られた88鍵ではないか。とさえ感じさせるつくりだった。仕様をひとしきり眺めたあとでピアノのタッチも確認せずにすぐに購入を決めた。

 クラシックピアノも弾きたいし、MIDI入力にも使いたいし、フェーダでボリュームもいじりたいし、パンも振りたいし、パラメータもツマミでグリグリしたいし、Padも叩きたい。

 7万円でDTMに必要なピアノタッチの88鍵盤とフェーダーとツマミとPadまで手に入ると思えば十分コストパフォーマンスに優れているといって良い。


フェーダー x8, ツマミ x8でパラメータ操作に十分なコントローラと16Padがつく変態88鍵

 2021/12月現在、ハンマーウェイトの88鍵MIDIコントローラでフェーダたくさん, ツマミたくさんを搭載し、しまいにはPadまで16個つけた製品は自分が調べた限りではM-AUDIO Hammer 88 ProかArturia KeyLab 88 MkIIのしかない。異色の製品である。


M-AUDIO Hammer 88 Pro
Arturia KeyLab 88 Mk2 (Black)

 フェーダやツマミでパラメータをいじりたいひとは主にシンセサイザーの音作りを直感的に操作したり、オートメーションを描くためのものなので、シンセ音源を弾くのに必ずしも88鍵は必要としない。なんなら88鍵になることで設置場所のスペースは必要になるわ、モバイル性は下がるわで88鍵を手にするというのはDTMerにとっては大きなハードルなのである。

 一方、MIDIコントローラが88鍵であることを要件として上げる人が弾きたいのは主にピアノ・エレピ・オルガンに限られる。もう少し広げてもオーケストラを作る人くらいだろう。音作りのためにツマミがあれば便利なことは間違いないが、DAW上をマウスで操作して一度音を作ってしまえばそれをグリグリと頻繁に操作したくなるようなケースはそれほど多くないので、せいぜいモジュレーションホイールがあればこと足りる。

 そんな中、88鍵に16Padがついている?もはや奇行。フェーダやツマミをつかってパラメータをいじりつつも、Padでドラムやパーカッションの演奏ができて、鍵盤数に制約のない自由な環境で、さあ両手でピアノやエレピを弾きなさい。オーケストラだってやりたいんでしょう?あなたの欲しい物、全部のせてみましたがどうでしょうか?

 Arturia KeyLab 88 MkIIはM-AUDIOが7.0万円なのに対して11.4万円とお高い。確かに、CV Gateが付いていてアナログシンセサイザーをコントロールできたり、Padがプレッシャーも読み取れるなど、M-AUDIO Hammer 88 Proからさらに細かい事ができたり、単純にデザインやプロモーションがおしゃれであるなどお値段なりのことはある。

 少し値がはるおしゃれ88鍵 11.4万円 Arturia KeyLab 88 MkII

 一方、M-AUDIOは、ちょいダサプロモーション。これがM-AUDIOらしさなのかもしれない。7.0万円 M-AUDIO Hammer 88 Pro。

 いやいや、プロモーションなんだからPad使ってよ…。せっかく良いPad持ってるのに。フェーダーやツマミも使ってよと。でも、これで7.0万円なのだ。ちょいダサだけど、プロモーションよりも製品なのだ、ということで。

 私は、コストパフォーマンスを意識して7.0万円のM-AUDIO Hammer 88 Proを選択した。

16Padがおまけではなく、フィンガードラムにも使えるレベル

 私は知っている。Roland JUNO-DS やFAについているPadはただのON/OFFボタンであって、SP-404のようにサンプルをアサインして叩いて遊べる類のものではないことを。
 私は知っている。Novation LaunchkeyのPadがLaunchPadのそれとは品質が異なっており、劣化版Padがおまけとしてついてるだけであることを。

 こちらの動画は、Launchpad ProとLaunchkeyを触っている様子である。

 左のNovation Launchpad Pro MK3はPad演奏のためのデバイスなのでPadの感触・かたさ・感度ともに品質が高いが、一方で右側の同じくNovationの Launchkey 37 MK3のPadは見た目はおなじに見えるが品質は劣る。使えないとは言わないまでもLaunchpadとLaunchkeyのPadは別物であるということは間違いない。LaunchkeyのPadはあくまでもAbleton Liveのセッションビューを操作するためのものであり、Pad演奏がメインとしての用途ではないのでこれに文句を言う人はそう多くはないだろう。むしろ、Padをどうしてもやりたい人はLaunchpadを買いなさいというだけだ。

 この中でM-AUDIOのPadを評価するなら、品質の高い順にこうだ。

 Padの品質(個人の感想)
 Launchpad Pro MK3 > M-AUDIO Hammer 88 Pro > Launchkey 37 MK3

 といっても当然といえば当然の結果で、LauchpadはPadこそがデバイスの本質なのでそこに妥協はない。Launchpad Proは本当に表面を指でなぞるくらいの力で反応するほどPadは精巧に作られている。一方で、88鍵にフェーダー・ツマミにPadまでつくこのM-AUDIO Hammer 88 Proと考えると、16Padはまあ、おまけ程度でも仕方がないか、と思いがちだが、豈図らんや、十分実用に足る品質なのである。


実はソフトウェア音源$330相当がついてくる

 M-AUDIO Hammer 88 Proにはサードパーティのソフトウェアバンドルがついてくる。

M-AUDIO Software Managerの画面

ついてくる音源は3つ。いずれもAir Music Technologyのプロダクトで、このM-AUDIO Hammer 88 Proだからこそ触りたい音源が揃っている。当然いずれもVST音源なので自分が使っているDAWから起動できる。

Hybrid 3(シンセサイザー) $150相当

Mini Grand(ピアノ)$80相当

Velvet(エレピ) $100相当

88鍵だからこそ、フェーダやツマミがたっぷりあるこのM-AUDIO Hammer 88 Proだからこそさわって楽しい音源がバンドルされているのである。初めての88鍵として持つにふさわしい音源が揃っているといって間違いないだろう。


Ableton Live liteやMPC Beatsがついてくる

Software ManagerのAppsセクション

 ループを中心に構成される曲作りでよく利用されているAbleton LiveとMPC Softwareの廉価版がついてくる。いずれも正規版に制約をかけた廉価版という位置づけではあるが、いずれもトラック数に制限があるだけでそれ以外の機能に大きな差はないので、初めてさわるAbleton Live、初めてさわるMPCにはちょうど良い。

Ableton Live lite(Ableton Liveの廉価版)※動画は正規版

MPC Beats (MPC Softwareの廉価版)


ペダルが4つも挿さる

サスティン・フットスイッチ1・フットスイッチ2・エクスプレッションの4本挿さる

 88鍵なんてせいぜいサスティンペダルが挿さる程度のものが大多数の中、サスティンが挿さって、フットスイッチ1、フットスイッチ2が挿さり、さらにエクスプレッションペダルまで挿さるという驚異的な仕様。私は4つもペダルが挿さるMIDIコントローラを他に知らない。

 4つもいらないでしょう?と思う方も多いかもしれないが、4つもあるなら何に割り当てようかと新しいワークフローやショートカットを考えるワクワクがある。

 Ableton LiveやLogic Pro Liveloopsでリアルタイム演奏をするとき、Rec開始と終了を足でコントロールするというのが便利だ。多くの人は事前に入力するまえに小節数を決めておいて4小節なり8小節入力したらRecが止まるようにしていると思う。私はこの操作が非常に面倒なので、Rec開始と終了を足で操作するようにしている。

 足でRec開始・終了を操作できるようになると、両手を88鍵盤上でスタンバイした状態でRec開始ができるため4カウントでもゆったりRecが開始できるのである。手でRecボタンを押してから両手をスタンバイしようとするとせわしなくなりミスタッチの原因になりやすい。

 さらに言えば、ギターをRecしたいときは足でのRec開始はもはや必須と言っても良い。Recボタンを手で押してからドタバタとギターを抱えてポジションを作るのはかんたんなことではない。

 このように足Rec操作をやろうとするとサスティンペダル以外にもう1つフットスイッチが必要になるのである。さて、まだフットスイッチ2もエクスプレッションも空いているので何をアサインしようか。クオンタイズを足でやったっていい。バスドラムを足で叩くことにしたっていい。足をうまく使って手を空けることは演奏に自由を与える。

2つのモードDAWとPRESET

 モードは大きく分けるとDAWとPRESETの2つありボタン操作で切り替えることができる。

  • DAW
    各DAWのボリュームフェーダ、PAN、トラック選択、MUTE、SOLO、RECアームの操作などを行う。デフォルトで入っている設定は以下の通り。

DAWリスト(ユーザガイド p.84)
  • PRESET
     
    各音色のパラメータの操作などを行う。デフォルトで入っている設定は以下の通り。

プリセットリスト(ユーザガイド p.84)

 DAWモードは主要なDAWが入っているので、ふんふんなるほど。かもしれないが、プリセットリストは正直私には馴染みのないものばかりで最初は意味がよくわからなかった。
 PRESETは結局何ができるかというと、自分がよく使う音源についてパラメータをどのツマミで操作することにするのか予め決めておけば、モード選択で操作ができるようになるというものである。

 例えば、Logic ProでAlchemyをよく使うのであれば、Alchemyの各種パラメータをDAW(LogicPro) ⇔ M-AUDIO Hammer 88 Proの間でどのMIDI信号を送ることにするのかという決め事をPRESETで用意しておこう、という発想である。

(例)右下のADSRをツマミにアサインする

 Alchemyを操作するときはこのPRESET、ドラムを入力するときはこのPRESETなど、DAWの受け側とM-AUDIO Hammer 88 Proの送り側のルールを選ぶのがPRESETだと考えれば良い。

 もちろん、前述のバンドルされている3つの音源をコントロールするPRESETは用意されていて、Hybrid, MiniGrd, Velvetそれぞれを選択するとDAWで起動したそれぞれのソフトウェア音源のパラメータをツマミでコントロールできるようになっている。

Preset Editorでボタンから出すMIDI信号を任意に設定できる

 M-AUDIO Hammer 88 Proで選択するDAWモード、PRESETモードはデフォルトで用意されている他、自分でもカスタマイズすることができるPreset Editorというソフトが用意されている。

Hammer 88 Pro のPreset Editor画面

 各コントローラを操作したときに送信されるMIDI信号を任意のMIDI信号に変えることができるため、M-AUDIO Hammer 88 Proから何を送信するのか、それを受けてDAWはどのように動くのか両側の送受信プロトコルを操作することでDAW上で好きなように操作させることができる。

 上の例はPadをたたいたときに発音するNoteとPadの色を変更してフィンガードラムを叩きやすい形に変更したオリジナルのPRSETであるFingDrmである。
 赤色はバスドラム、黄色はハイハット、白はスネア、マゼンタは金物、シアンはタム。このように配置しておくことでフィンガードラムができるようになる。

 自分で作ったDAWモードとPRESETモードは、Preset Editor経由で本体にSendしたり、逆に本体からPreset EditorにRetrieveすることができる他、ファイルとしてMacOSやWindows側に保存しておくこともできる。
 Preset Editorから本体にSendしたものは本体の記憶領域に保存され、電源をOFFにしても揮発しない。Novation製品を知っている人であれば、Componentsと同じ感覚で利用できると思えば良い。

インクリメンタル式のツマミは使い方いろいろ

 Panなどでよく使われる左右に回転の下限上限があるアブソリュート式(絶対値入力)のツマミだけでなく、インクリメンタル式(相対値入力)で無限に回し続けられるツマミがある。これも前述のPreset Editorの設定とDAWの受け方次第でどんな使い方でもできる。

 DAW上の音色選びをツマミをくるくる回して選んでもよし、DAWの画面の拡大・縮小に割り当ててもよし、くるくる回すことでノートを半音ずつ上げ下げするコントローラにしてもよし、MIDI信号そのものが任意にコントロールできるためインクリメンタル式のツマミもいろいろな使い方できるので、自分にあった使い方や、自分が編み出した効率化を簡単に実現できる。

88健なのにオクターブボタンがある

 以外と嬉しいオクターブボタン。いろいろな音色を入力するにあたって、高音部分を入力することもあれば、低音部分を入力することもある。ピアノのように両方を同時に入力したいときもある。高音と低音両方を弾くときは気にならないが、ベースを入力したいときに左側の端によった鍵盤は弾きにくいので、できれば真ん中で入力したい。こういうときにオクターブボタンはとても便利だ。

電源ケーブル不要。本体側はUSB Type-B 1本で電源からMIDIまで完結する

M-AUDIO Hammer 88 Pro 裏側の端子

 もう一度、M-AUDIO Hammer 88 Proの裏側の端子を見てみる。右側に電源が挿さる口があるのがわかるが、これは必ずも必要なわけではない。なぜならUSB Type-Bから電源を取ることができるからだ。最近のMIDIコントローラでは標準になりつつある電源専用のケーブルは不要でPCとのMIDI連携のほか電源もUSBで完結する仕組みになっている。

 では、電源の口は何に使うのかというと、PCを介さず従来のMIDIケーブルでMIDI OUTしてPC以外の外部音源を操作する場合に限り、電源をアダプタから確保する必要があるというだけで、PC上のDAWを介して音源を操作する人にとっては電源の口は意味はないと考えて良いだろう。

 Ableton Push 2などはUSB電源で駆動するが、電源を挿さないとディスプレイが暗くて見づらいなどがあるらしいが(私自身は持っていないしさわったこともない)、

Ableton Push 2 FAQより

ACアダプタを抜くと、Push 2のディスプレイとパッドのライトが暗くなるのはなぜですか?
Push 2のボタン/パッド/ディスプレイを最大の明るさにするには、相当量の電力を必要とします。そのため、ACアダプタを接続せず、USB経由の電力だけでPush 2を使用すると、自動的にライトが暗くなります。

ACアダプタを抜くと、Push 2のディスプレイとパッドのライトが暗くなるのはなぜですか?

 現時点で、M-AUDIO Hammer 88 Proに関しては電源ケーブルを挿さないことによる不利益は遭遇していない。

 USB Type-Bであることも高く評価している。前述のRolandの高級MIDIコントローラA-88 MK2は今どきの流行にのってUSB Type-Cが挿さるようになっているが、個人的にはうすっぺらいUSB Type-Cの端子を重たい88鍵の端子に採用するのはいかがなものかと思っている。88鍵を持ち歩いたり、USBケーブルを挿したまま動かしたりすることはまずないので、USB Type-Cにしても問題にはならないと思うが、逆に言うと、USB Type-Cにする理由もないので、太さが若干あるUSB Type-Bが鍵盤にはちょうど良いと思っている。

M-AUDIO Hammer 88 Proのここがちょっと惜しい

ピッチベンドとモジュレーションが赤く光っていてダサい

 ピッチベンドとモジュレーションのホイールの中に赤色LEDが仕込まれているようで、電源ONにするとピッカーンと光ってちょいダサ。Preset EditorでLEDをOFFにできるようにして欲しい。

M-AUDIOがちょっとだけダサいのは鍵盤だけでなく、ペダルも。

ちなみにこのちょいダサ ペダルは、踏む部分の面積が広くて踏みやすいのでこちらもおすすめ。極性の変更もできるので踏むと127、はなすと0にするのか、踏むと0、はなすと127なのかカスタマイズもできるのでつなぐデバイスを選ばず使えて良い。

トランスポーズはSHIFT + OCTAVEなので両手が必要

 トランスポーズは本体真ん中のSHIFTを右手で押しながら、左端にあるOCTAVEで+ / - しなければならないのでどうやっても両手が必要になる。

 この仕様はよくあるのでそれほど嘆くほどのことでもないかもしれないが、例えばかつて触ったことがあるJUNO-DSであれば、TRANSPOSEボタンを押しながらOCTAVE +/-操作なので同じといえば同じだが、ボタンは隣り合わせになっているので、左手薬指でTRANSPOSEを押しながら、中指でマイナス、人差し指で+ができるので、片手で完結する。

 トランスポーズを使うときは、ルート音をたたきながら、あるいはメジャースケールを弾きながら上げ下げして音を確かめたいので、両手がふさがってしまうのは困る。

フィンガードラムPRESETとXLN Addictive Drumを1つ付けて欲しかった 

 せっかく使えるPadを搭載しているのにPadの推しが全然足りない。Preset EditorでPad配置をカスタマイズできることがわかった瞬間、これはフィンガードラム用のPadとして十分だと感じた。わざわざユーザにカスタマイズで作らせるのではなく、フィンガードラムに最適な配置をPRESETで用意した上で、Addictive Drumの一つでもつけてくれれば、もっとHammer 88 Pro の間口が広がったのに、と思う。

 M-AUDIOがそこに気づいていればXLNのAddictive Drumのうち1 packが選べるアクティベーションコードをバンドルすることもできただろうに。

まとめ

 初めての88鍵でも良し、買い替え時にフェーダやツマミをグリグリしたくなった人にも良し。コンパクトで小さな鍵盤でのDTMも良いけれど、鍵盤が88鍵あると発想も豊かになるので88鍵をおすすめしたい。

 もう少しお金を出しても良い。アナログシンセサイザもつなぎたい。もっとデザインにこだわりたい、という人はArtria KeyLab 88を選んでも良いかもしれないが、コストパフォーマンスにこだわるならM-AUDIO Hammer 88 Proという選択が妥当だと思う。

 88鍵はオフィス用の机には幅も奥行きもたいていおさまらないので、幅150cmのダイニング用テーブルなども視野にいれると気持ちよく88鍵が収まる机が見つかるの。これはちょっとした88鍵ライフハックなので覚えておいて欲しい。

(再掲)この記事を見てM-AUDIO Hammer 88 Proを気に入っていただけたら、ぜひこちらからお買い上げください。今後も製品レビューを書くモチベーションになります。(Amazonアフィリエイト)


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