見出し画像

バチェロレッテに学ぶ。


遅ればせながらバチェロレッテジャパンを拝見させていただきました。
エピソード10もあるーと身構えていたのに、うち2本はスピンオフバラエティで、本編は8本だけでした。結果1.5日で完走。

数多あるリアリティーショーの中でもとりわけ舞台やルール設定など作り物感が強く、自分とは全く住む世界の違うハイスペ人間達の物語である、という、最高に感情移入し辛い条件にも関わらず、結果的には自分の身に置き換えて、色々と考えさせられる良作でした。

見ていない方(盛大にネタバレしているので、見る予定の方は読まないことをオススメします)のために、まずはざっくり内容を紹介します。
======
主人公バチェロレッテは、スポーツトラベラー兼モデルの福田萌子さん、32歳。(わたしと同い年)
顔は安藤美姫をかなり綺麗に整えた感じのカエル顔、178cmの長身に小顔が乗っかった、9頭身のモデルスタイル。

そんな萌子さんを取り合う男性陣は、見た目も職業もキャラクターも、誰一人被ることがない、一人一人強烈に個性的な17人。

恋愛サバイバルゲームのルールはいたってシンプル。

毎回最後に行われるローズセレモニーにて、バチェロレッテからローズをもらえなかったメンバーが脱落。途中バチェロレッテの指名でデートに誘われたメンバーは、バチェロレッテの心を打つデートをして、バチェロレッテからサプライズローズをもらうことができれば、セレモニーを待たずにその回の生き残りが決定。最後の一人まで残った人が見事勝者となり、バチェロレッテとキスをして、カップルに。

エピソード1から7までの間に15人の男性が脱落し、最終話。バチェロレッテの前には2人の男性が残されました。

1人目は、萌子さんより2つ年上34歳・画家の杉ちゃん。バチェロレッテ参加前から萌子さんの絵をしたためて、参加中はその絵に色付けをしていくなど、他の男性にはない独特のアプローチで萌子さんの心を掴み続けます。

エピソード1から自虐発言が多く、目を見て話せなかったり、いつまでも敬語が抜けなかったり、アクションの一つ一つが男らしさに欠ける杉ちゃんは私からすれば「生理的に無理」というやつですが、萌子さんとは波長が合うようで、杉ちゃんといるときの萌子さんはいつもリラックスしていて、子供のようによく笑うのです。

もう1人は、33歳・中国人実業家の黄皓さん。

杉ちゃんとは正反対、自信の塊で、男としての色気がプンプン漂うオスの最高峰みたいな人。顔はイケメン芸人くらいのクオリティだけど、そこがまた丁度いい親しみやすさになっている感じ。萌子さんと二人きりで過ごした時間は他メンバーよりも少ないにも関わらず最後まで残ったのは、個別の時間を過ごさずとも「本能的にタイプ」だと、萌子さんの中に確信があったから...。

そんな2人の間で揺れ動く萌子さんの心。最終回、2人との最後の時間を過ごす萌子さんは、終始悲しい表情。杉ちゃんの前では、バチェロレッテの参加理由でもあった過去の失恋を思い出し号泣。尋常じゃない情緒不安定さは画面越しにも伝わってきました。

果たしてどちらを選ぶのか…
順当にいけば黄皓さんだろうけど、大番狂わせで杉ちゃんもあり得るのかな…だとしたら面白いな!と…

来たるべき最後の瞬間を、視聴者の誰もが首を長くして、鼻息荒く、楽しみに待っていたのです。

======
と、ここまでが、見てない方(見ない前提)向けの、バチェロレッテざっくりあらすじ。

このあと、ご覧になった方はご存知の通り。萌子さんはどちらも選ばないという前代未聞の決断を下しました。
衝撃的でしたというか、直後は普通にイラッとしました。「誰か1人を選ぶのがルールでしょう?誰も選ばれないと知ってたら、これまでの過程も見てないわけで。。」と。

ただ、時間の経過とともに、「萌子さんの気持ちもわかるな、、というか、この結果でよかったな」と、考えが変わっていきました。
そしていまにいたっては、
世間的にどうとかさておいて、福田萌子さんという1人の女性が、選ばないという選択をしたことを、心から褒めたたえたいと思うまでになりました。

その理由を少し長くなりますが、お話したいと思います。

〜〜〜〜〜

私や萌子さんが幼少期を過ごした1990年代〜私たちが青春時代を過ごした2010年代までの20年間で、日本は大きく変容しました。機器や文化の発展もそうですが、人々の価値観も多様に、柔軟に変化していったと思います。わたしたちの目の前には、いつも古いもの(価値観)と新しいもの(価値観)が並べられ、その間でわたしたちは様々な選択を迫られてきました。
ただ、わたしたちの前に並べられる新しい選択肢は発展途上のものがほとんどで、育った家庭の経済力や教育方針によって、新しいものを選びたくても、選べない、、という人が多かったように思います。

例えばランドセルの色。

今では、性別に関係なく好きな色を選ぶという考え方は当たり前になり、黒や茶色のカバンを背負っている少女を見かけることも少なくありません。わたしたちの頃にもそうした考え方、選択肢はありました。しかし、当時はまだ選択肢が存在しているというだけで、それを選択している子は少なく、女の子が黒や茶色のランドセルを選ぶのは勇気のいることでした。

例えば携帯電話。

今でこそスマホは中高生でも当たり前に持っているコミュニケーションツールになっていますが、私が中高生の頃は携帯電話を持つということは当たり前のことではなく、新しい選択肢の一つでしかありませんでした。
ちょうど私が中学にあがった頃にコードレスの携帯電話(PHS)が普及し始め、一部の流行りに敏感なおませさんや、親とのやりとりに携帯を必要とする鍵っ子のような子達が持っているだけで、その他大勢は、欲しいけれど親の教育的な方針でなかなか買ってもらえない…。そんな状況でした。

私たちは、こうして新しい選択肢を目の前に、それを選ぶことができそうでできない経験をたくさんしてきました。そうして、「好きなものを迷いなく選ぶ」のではなく、「空気を読んでできる選択をする」ことに慣れてしまったのです。

そして今。私たちアラサーの目の前には、これからの人生の歩み方に関して多様な選択肢が並べられています。

「結婚して子供を持つ」「結婚せずに子供を持つ」「結婚もせず子供も持たず、仕事をバリバリこなす」などなど…。ひと昔前の「結婚して家庭を築く」ことが当たり前だった時代とは異なり、その他の生き方も選んでいいんだよ!という新しい女の一生が応援される時代が到来したのです。

けれど、先に述べたように「空気を読んだ選択」をすることに慣れてしまった私たちには、そのひと昔前の価値観の前で、新しい価値観を選択することが、簡単なようですごく難しいのです。
親や親戚のおばさんおじさんに「いつまで一人なの?いつ結婚するの?いつ落ち着くの?」そんなプレッシャーをかけられるのは物語の中だけの話だと思っていたら、自分がこの歳になって、案外普通に言われることだということを知りました。
「結婚して子供を持つ」ことが、最善の選択であるかのように意識付けられる瞬間は、意外と日常の中に潜んでいる気がします。

私のような一般家庭ではなく、裕福でインテリな家庭に生まれ育った萌子さんは、上記のような例でいえば、いつも新しい選択肢を選びやすい立場にあったかもしれません。ただ一方で、そうした特別な環境下で育ったからこそ、古い価値観に縛られることもあったかもしれません。新しいものを自分だけが選ぶことで受ける嫉妬の目や差別がある中で、あえて古いものを選んだこともあったかもしれません。


今回の番組出演を決めた時も、当初のゴールは「結婚」(を前提に付き合うことも含め)だったと思います。それは適齢期の彼女が結婚することを周りがのぞんでいるし、彼女もそれが幸せだと思い込んでいたから。
しかし、17人の男性から1人を絞り込んでいく選択の過程で、彼女の中にはきっと、「自分だけの選択をしたいのに、誰かの期待に応えるための選択をしようとしてしまう自分がいる」…という葛藤が生まれたのではないでしょうか。
特に2人から1人を選ぼうという最終回、その葛藤はピークに達していたように思います。どちらかを選んで結婚に一歩前進することを誰もが期待しているし、番組のルール上どちらかを選ばなければいけない。でも、、どちらとも結婚したいと思えない。


空気を読む選択をすることに慣れている私たち世代の女なら、あの場でどちらか1人にローズを渡してめでたしめでたし、、で終わらせる方を選ぶのが普通だし、楽なのに、萌子さんは選ばないことを選びました。


あの瞬間、萌子さんは一皮剥けたんじゃないかと思うのです。誰かの期待に応えるためではなく、自分が望む自分のための選択をする。婚期が遅れても、周りに叩かれても構わない、「私の物語の結末は私が決める!」と、回顧番組の中でも強く語っていましたが、萌子さんは、選択肢の多い時代にふさわしい、自分で望む道を切り開ける強い女に生まれ変わったんだと思うのです。

その萌子さんの姿に、私は勇気をもらいました。

今まさにたくさんの選択肢を目の前に、自分は何が欲しいのか、どう生きていきたいのかわからず迷走している最中ですが…選択する際の一つの軸として、「自分らしくある」ことを据える決心がつきました。人がなんと言おうと関係ない。私らしい選択をしよう。そう思うことができました。

〜〜〜〜〜

軽い気持ちで見始めたバチェロレッテでしたが、最終的には「好きなものを好きなように選ぼうよ」という、至極シンプルだけど大切なことを改めて学ばせてくれる、とても良いコンテンツだったと感じていますし、見てよかったなーと思います。おすすめです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?