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沖田修一作品が好きだ。

沖田修一監督の作品が好きだ。なんかふいに見たくなる。先日通勤準備をしながら「キツツキと雨」を見て、そしたら久しぶりに「南極料理人」も見たくなって、先週は沖田ウィークとなった。
キツツキと雨は、こんな感じのストーリー。

木こりの克彦は、妻に先立たれ息子とふたり山奥で暮らしながら、毎日淡々と木と向き合う仕事に勤しんでいる。一方の幸一は、東京からやってきた25歳の新米映画監督。自分の書いた本で映画が撮れるという名誉にあずかりながら、自分を主張できないがゆえに思い通りの作品作りができず、傷心の最中。いっそ映画を捨てて東京に逃げ帰ろうとしている。そんなふたりが出会い、克彦が映画作りを手伝うようになったことで、物語は大きく動き出す。小さな山村を巻き込んでのゾンビ映画づくりを通して、ふたりはそれぞれに成長していく。

ふたりの出会い、克彦が映画づくりにのめり込んでいく過程、幸一が自分を取り戻し映画づくりへの情熱を取り戻していく過程…すべてが完璧で美しい。必要以上にドラマチックに描かなくとも、小さな成功体験の積み重ねで人はやる気を取り戻すし、生きている喜びを思い出せる。沖田監督の映画はそういう人間の心の動きをとてもリアルに描くなぁと思う。だけど退屈にさせないバランスで、ちゃんとドラマもある。クライマックスのゾンビVS人間の撮影シーン、一瞬の晴れ間を根気強く待った結果、納得のいくシーンを撮り切ることができた幸一が、雨の中佇んで喜びを噛みしめる。まさにこの映画最大のドラマティックかつカタルシスを感じられるシーンだったと思う。

沖田監督の代表作といえば「南極料理人」だと思うが、こちらも大きなドラマこそないものの、南極という場所で1年間を過ごす男たちの暮らしを通して、人と交わることの楽しさ、淡々とした日々の中で感じられる小さな喜びの積み重ねで人生は続いていくこと…「あー生きているっていいな」…って思わせられる、良作だ。
見ている最中はただほっこりしているだけなのだが、見終わった後にそう感じさせられる。

そして何より、沖田監督の作品はキャラクターが魅力的だ。わかりやすいイケメンや美女は出てこない、基本的に小汚いおじさんたちが、少年のように夢中で仕事に取り組みながら、ワイワイ楽しそうにやってる。なのに、この世界観に自分もまざりたいと思わせられる。不思議だ…。見終わったあとも、時折、「ふじドーム基地の人たちは今頃どうしているんだろう」とか「克彦さんや幸一はその後、たまに会って、一緒に海苔食べながら将棋うったりしているのかな?」とか、映画のその先が気になる。後日譚を見てみたいと思わせられる。(まあ、やらないほうがいいと思うけど)

沖田監督作品でしか味わえないこの空気が好きで、何度でも見たくなる。これまたオールタイムベストってやつですかね。

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