見出し画像

あの時聞き込んだ歌。

春。別れの季節。わたしにも苦い失恋の思い出があります。

24歳の春。当時付き合っていた15歳年上の彼氏に振られた経験は、わたしにとって強烈なものでした。彼は、わたしがその頃働いていた小さな出版社によく出入りしていたフリーランスのデザイナーで、ある時から、うちのオフィスの余っていたmacを与えられ、毎日隣の席で仕事をするようになりました。

今思えば、その会社で独身の若い女といえばわたしくらいだったので…ちょっかいを出されるのは必然の流れだったような。そんなこんなで出会って半年後の冬に付き合い始めました。

振られたのはその数ヶ月後の春。彼の部屋でイチャイチャしている時に、ふと思いついたように彼が言ったのです。「なんか違う。ゆいのことはかわいいと思っている。けど、そのかわいいは、赤ちゃんとか、犬とか猫とかがかわいっていうかわいいであって、女としてじゃない。なんかこういうことしていると申し訳ない気持ちになる。ごめん無理」と。

なんっじゃそりゃーー!!かわいいかわいい好きだ好きだ言って近寄ってきたくせに、都合悪くなったら、かわいいけど、別のかわいいなんですわ…って。ふざけるなーでした。

別れてからもしばらくはいつも通りうちの会社に通っていた彼。毎日会うたびに胸が苦しくて苦しくて張り裂けそうだった日々の感覚を今もはっきりと覚えています。

彼は、デザイナーでありながらインディーズバンドのボーカルなんかもやっていて、とにかくよくおモテになる方でした。彼をよく知るお兄さんお姉さんとも少し交流があったので、彼の女の噂をちょくちょく耳にしました。目当ての子をライブに誘ってはそういう関係に持ち込み彼女やセフレにすること。元はといえば、超の付く歳上好きで、ヒモ体質だ…ということ。ほとんどは別れてから知った話でした。

そんな彼の悪い噂を耳にしながらも、好きな気持ちをなかなか捨て切ることができなかった24歳の春、わたしがめちゃめちゃ聞いていたのがこの曲です。

下田逸郎さんの「泣くかもしれない」をホームレスハートさんがカバーした楽曲。

誰にでも愛される女に
なればなる程
ダメになってく私がいて
誰からも嫌われる女に
なればなる程
強くなってく私もいる
あなたどっちが欲しいのか
はっきりしてくれなきゃ
たまらないってつぶやいて
私泣くかもしれない

この世になびいてこの世に
なじんで行くことを
やらせで出来る私がいて
あの世に呼ばれてあの世に
でかけて行くことを
自然に出来る私もいる
あなたどっちが好きなのか
態度で示さなくちゃ
助けてよってつぶやいて
私泣くかもしれない

私を見ぬいて身体の
芯まで抱きしめて
やすらぎくれるあなたがいて
とことん普通の男の
ポーズで逃げて行き
むなしさくれるあなたもいる
私どっちもいらないと
今夜はきめなくちゃ
愛してるってつぶやいて
私泣くかもしれない
ひとり泣くかもしれない
私泣くかもしれない

どういうわたしでいれば彼に受け入れられるのか、必死で彼好みの女になって復縁してやろうとしている若い自分と、同時に、彼は悪い男で、彼に好かれる必要なんかない、彼の好みなんてどっちだっていいんだ!彼なんていらないんだ!と決心して前を向こうとあがく、強い自分と…わたし自身の葛藤をそのまま言葉にしてくれたようなこの曲に、すごく心を掴まれたのを覚えています。

ああ、いい歌詞、心にしみる歌詞って、こういうのだなと。綺麗な言葉をそれっぽく繋いだものよりも、こういう生々しいそのままの言葉を、話すように訴えるようにストレートに届けてくるそんな歌。

ともすると曲を作った人の思いが乗りすぎていて自分に重ねづらい…なんてこともあるかもしれないけど、その歌のストーリーの解釈は人それぞれ。想像力さえあればどんな歌も自分のことのように心に刻めるはずです。

今でもこの曲を聞くたびに、あの時の苦しい失恋体験をリアルに思い出せる!そのくらい聞き込んだ曲。みなさんにもそういう忘れられないほど聞き込んだ曲きっとありますよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?