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アンカースクリューの思い出

歯医者に行って上顎のアンカースクリューを取った。
前回はアンカースクリューに装着していたワイヤーを外したため、いつかは本体も取るだろうと思っていたが、まさか今回だとは思っていなかった。
ワイヤー交換をし終えてから「アンカースクリュー取るかな」という先生の声が後ろから聞こえたときは本当に焦ったし、今日はもうこれで帰れると思っていたので絶望した。

アンカースクリューとは、医療用の小さなネジである。つまりこれを上顎に使うということは、骨に穴に開けて埋め込むということだ。
二年ほど前、これを埋め込んだときのことは今でも覚えている。治療を受ける前に説明は聞いていたし、自分で調べもしたが、どう考えても「骨に穴を開ける」という行為に対する恐怖感は消えなかった。もちろん治療中も怖かったし、体にネジが埋め込まれていく感覚はもう二度と味わいたくない。

行為自体は抜歯よりも痛くはないし、チクチクする感覚が一番近い。だが、「気持ち悪さ」に関しては抜歯よりもこちらの方が勝る。
上顎に触れられ、舌を圧迫されるため思わずえずきそうになるし、治療中は鼻呼吸を意識していないと苦しい。死にはしないが、普段あまり触れられない部分に痛みと違和感を感じるからこそ「してはいけないことをしている」という気持ちが強くなり、恐怖で冷や汗をかく。
埋め込んでからしばらく経っても「あぁ、あるなぁ」という感覚は消えない。これにワイヤーが装着されると、慣れるまでは必然的に滑舌も悪くなる。
当初は「早く抜きたい」と思っていたが、抜くときは抜くときで怖い。私の場合は約二年も口内にアンカースクリューがある状態で過ごしていたし、入れるときと同じ気持ち悪さをまた味わうのも怖かった。

抜く前に「ピアス代わりみたい」と先生に言われたが、私も本当にそう思う。埋め込んだその日に「上顎に穴を開けるのと比べたら、耳たぶなんて軽いよな」と思って耳にピアス穴を開けようか考えたが、さすがに衝動的すぎて後悔しそうだったのでやめたことを思い出した。
帰宅してからスマホで口内を撮影し、現在の状態を確認したところ、口蓋に赤い穴が二つ並んでいた。今までずっとあったものがなくなったということを実感し、何だか寂しい気持ちになったので今度こそ体のどこかにピアス穴を開けようかと思ったが、今までこいつがどれだけ邪魔だったかを思い出したので、しばらくはどこにも穴を開けずにこの快適さを味わおうと思う。

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