人生は苦ばかりですか?⑦
信雄の家からバス会社までは歩いて1時間ほどだ。「ノブ!おめぇこんなとこでなにやってんだ?」バスの運転手をしている知人の勝次が不思議そうに信雄を見て叫んだ。
「おはようございます!いいところに!」信雄は勝次に駆け寄った。「実はお願いがあるんだけども」「金はねぇど!」食い気味に勝次は言った。信雄は勝次の両肩を鷲掴みにし、真剣に叫んだ。
「金じゃねぇ!俺、バスの運転手になりたいんだ!」真剣なまなざしに勝次は驚いた。「痛でぇ。肩が痛でぇって!わかっだ!ちょっと待っでっで!社長には俺も話してやるけども、何があっだのよ?トラックの運ちゃん憧れだったんだべ?」勝次は心配そうに信雄の手をゆっくり下ろし、強く握った。
「バスの運転手の方が認められるんじゃないかと思っで。ちゃんと安定した仕事に着けば…」信雄の頭は月子でいっぱいだった。まだ一度、それもただ道であいさつを交わしただけなのに。勝次はおかしいと思ったが、もしかしたらという思いで信雄に伺った。「ノブおめぇ、嫁貰うんか?」信雄は顔が真っ赤になった。(こいつ、いづのまに…、どこの子だべがな。)勝次は左眉毛をくいっと上げて、思い当たる知り合いの娘を思い描いた。
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