見出し画像

ワンランク上の人材選抜 【良い人材を確保するための多肢選択式問題の作り方(1)】

今回は、前回に引き続き、良い「多肢選択式問題」について、考えていきます。特に「良い問題の作り方」を中心に解説していきます。(Mr.モグ)

良い多肢選択式試験のための12のポイント

多肢選択式問題は、採点が簡単ですが、良い問題を作らないと、受験者が(問題を)誤解をしたり、出題意図を理解できずに誤った解答をするなどして、「真の能力」を測定することができません。

誰が見ても理解できるような、簡潔な質問、誤解を招くことのない問題文、誰もが一度は聞いたことのあるような課題等、問題作成上の留意事項があるので、これらを解説していきましょう。

私の経験や過去の論文等からの次の12のポイントとなります。

1 確実な正答が1つのみに絞り込める問題にすること

2 解答に必要な条件を問題にいれること

3 問題文や選択肢は、できるだけわかりやすく簡潔な表現にすること

4 誤答の選択肢は、惑わしの効果があるものにすること

5 選択肢の長さはなるべく同じような長さにすること

6 問題文や選択肢に使用する用語の統一を図ること

7 選択肢には、なるべく「常に」「必ず」「・・・のみ」といった、いわゆる強調語や限定語を避けること

8 選択肢には、なるべく「上記のすべて」「上記のいずれでもない」を用いないこと

9 問題文や選択肢は、なるべく「肯定文」にすること

10 問題文や選択肢の一つ一つの表現にも注意して問題を作成すること

11 その他、問題集全体として、他の問題のヒントになる問題がないこと

12 正答位置の不自然な偏りがないこと

では、これらのポイントについて、できるだけ具体例を取り混ぜながら、何回かに分けて説明していきます。

1 確実な正答が一つのみに絞り込める問題にすること

 例1にあるように、受験者が問題を考える際に、正しい答えが選択肢に一つのみあるようにすることが重要になります。(組合せ問題の時は正答肢をいくつか選ぶ解答方法もありますが、その際の留意事項は後述します)

よくない問題【例1】
(確実な正答が1つのみに絞り込める問題にすること)
問題文 4台の自動車A、B、C、Dの最高速度について、次のような関係が分かっているとき、次のうち正しいのはどれか。
〇Aの最高速度はBより遅い。
〇Bの最高速度はCより速い。
〇Dの最高速度はBより速い。
1.Aの最高速度はCより速い。
2.Dの最高速度はAより遅い。
(略)
5.Cの最高速度はDより速い。
(正答1)
(理由)
 この問題文の条件だけだと、AとCの最高速の関係は分からないため、選択肢1は(必ず)正しいと判断できない。
他方、選択肢2や5は判断できる。(両方とも×)
 そのため、問題文を修正して、論理的な可能性を問う問題にしないと正答がないことになる。

上記の「よくない問題【例1】」は、確実な正答が1つのみに絞り込める問題になっていないので、次のような改良を加えることが必要になります。

改良例1
問題文 4台の自動車A、B、C、Dの最高速度について、次のような関係が分かっているとき、次のうち可能性として考えられるのはどれか
〇Aの最高速度はBより遅い。
〇Bの最高速度はCより速い。
〇Dの最高速度はBより速い。
1.Aの最高速度はCより速い。
2.Dの最高速度はAより遅い。
(略)
5.Cの最高速度はDより速い。
(正答1)
(理由)
 可能性を問う問題に変更したが、できれば次の改良例2ように「確実にいえるもの」を選ぶ問題にしたほうが無難。


改良例2
問題文 4台の自動車A、B、C、Dの最高速度について、次のような関係が分かっているとき、次のうち確実にいえるのはどれか。
〇Aの最高速度はBより遅い。
〇Bの最高速度はCより速い。
〇Dの最高速度はBより速い。
1.Aの最高速度はBより遅い。
2.Dの最高速度はCより速い。
(略)
5.Cの最高速度はDより速い。
(正答2)

2 解答に必要な条件を問題にいれること

 例2にあるように、解答するに当たって必要な前提条件や、数値等を明示した問題になっていること。(これがはっきりしないと問題が成立しないことになります。)

よくない問題【例2】
(解答に必要な条件を問題に入れること)
問題文 2㎏の物体が床の上に置かれている。これに対して3.0Nの力を加えた。このとき、この物体の加速度として正しいのはどれか。
1. 1 m/s²
2. 1.5 m/s²
(略)
5. 3 m/s²
(正答2) (理由)
 この条件だけだと、正しい答えが導けない(摩擦係数の有無、力を加えた方向等がはっきり書かれていないため)。
そのため、問題文を修正して、必要な条件を明示する必要がある。

上記の「よくない問題【例2】」は、解答に必要な条件がはいっていない(曖昧な)問題になっているので、次のような改良を加えることが必要になります。

改良例
問題文 2㎏の物体がなめらかな水平の床の上に置かれている。これに対して水平方向右向きに3.0Nの力を加えた。このとき、この物体の加速度として正しいのはどれか。
1. 1 m/s²
2. 1.5 m/s²
(略)
5. 3 m/s²

3 問題文や選択肢は、できるだけわかりやすく簡潔な表現にすること(問題文や選択肢の表現が曖昧な(わかりにくい)ことでミスを誘わないこと)

例3にあるように、問題文や選択肢の意味がわかりにくい表現だったり、まどろっこしい(理解するのに時間がかかる)表現であると、受験者が本来なら正答できたのに、(問題文がわかりにくかったため)単に問題や選択肢の意味が理解できずに間違ったのか、わからなくなります。

そのため、正しい能力測定のためには、誰もがわかる簡潔な表現にする必要があります。

よくない問題【例3】
(問題文はわかりやすく簡潔な表現にすること)

問題文 一般に、生物の体の中では様々な変化が起こるとされており、植物や動物などいろいろな場合が考えられる。次のうち生物の体の中の変化に関する記述として正しいものはどれか。
1.無機物から有機物を合成する反応として同化かある。
2.無機物から有機物を合成する反応として異化がある。
(略)
5.生物の体内では窒素が触媒として働くことで化学反応が生じる。
(正答1)
(理由)
 問題文は、わかりやすく簡潔な言葉にするべきで、受験者が解答に当たって無用な労力を使わなくて済むようにした方が望ましい。
他方、選択肢を見ると1と2が同様の内容を聞いており、一方が正答もしくは誤答ということはすぐにわかってしまう。
そのため、問題文を簡潔にするとともに選択肢を工夫する必要がある。

この問題の改良例としては次のようになります。改良したところがゴチックで示されています。

改良例
問題文 生物の代謝に関する記述として正しいものはどれか。
1.無機物から有機物を合成する反応として同化かある。
2.酸素が分解されエネルギーが吸収される反応を呼吸という。
(略)
5.生物の体内では窒素が触媒として働くことで化学反応が生じる。

4 誤答の選択肢は、まどわしの効果があるものにすること

例4例5にあるように、選択肢を見ただけで、誤答と見抜かれてしまうような問題は適当ではありません。(受験者が、内容が分からなくても誤答と分かってしまう問題では、正しい能力測定が出来なくなります)

そのため、各選択肢が同じことを表と裏で聞いている問題や、明らかに異質な選択肢論理的に考えると明らかに誤答と分かってしまう選択肢は、避けるようにします。

(そのような選択肢の問題があると、せっかく五肢択一式の問題を出題しても、実際は四肢択一式、三肢択一式の効果しか出なくなってしまいます)

よくない問題【例4】
(誤答の選択肢は、まどわしの効果があるものにすること)
(選択肢は、順番にも注意を払うこと)

問題文(略)式の計算として正しいのはどれか。
1. 2.5
2.    4.0
3.    1.0
4.    3.0
5.  28.4
(正答2)
(理由)
 選択肢の並びが、順番になっていないので、受験者が解答肢を選びずらい。
そのため、選択肢の並びを順番になるようにする。
また、選択肢5が、ほかの選択肢と比べて異質なので他の選択肢と比べて、異質感を与えないようにすることが望ましい。
改良例
問題文
(略)式の計算として正しいのはどれか。
1. 1.0
2.    2.5
3.    3.0
4.    4.0
5.    5.5
(正答4)
このように、できれば、等間隔での数値の並びの方が、問題の選択肢の並び順としては機械的で望ましい。
よくない問題【例5】
(誤答の選択肢は、まどわしの効果があるものにすること)

※論理的に考えて、明らかに誤答(もしくは正答)と分かる選択肢は、避ける
問題文 二つのサイコロを無作為に振ったときに、出た目の数の合計として、確率的に最も高いのは、次のうちどれか。
1.  2 
2.  5
3.     7
4.   12
5.   15         (正答3)
(理由)
サイコロは1~6までの目しかないので、二つのサイコロの合計は最大でも12(=6+6)になる。そのため、選択肢5の15は明らかに誤答と分かってしまう。
また、選択肢1は、各サイコロの目が1の時しかあり得ないので、誤答と分かってしまう。
そのため、選択肢を次のように工夫することが考えられる。
改良例
問題文
 二つのサイコロを無作為に振ったときに、出た目の数の合計として、確率的に最も高いのは、次のうちどれか。
1. 5 
2.    6 
3.    7
4.    8 
5.    9        (正答3)

このように、問題文を改良すると、多肢選択式問題としては、より良いものになるのです。

次回は、引き続いて効果的な人材選抜をするうえで必要な多肢選択式問題の作成におけるポイントを解説していくことにします。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。(Mr.モグ)









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?