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みんなちがって、みんないい。


この曲に出会ったのはニューヨーク留学中の2015年の冬だったと思う。

1年間交換留学していたなんて言うと、すごいと言われる。留学前の自分もそう思っていた。けれど、当たり前だけど、現実はそんなに甘くなくて、留学中の私はずっとモヤモヤとしていて、毎日、同じ留学先に来ていた、遮光カーテンを挟んで隣に住んでいた同級生のことをずっと恨んでいた。最初は留学前の彼女の態度(私が先に見つけたシェアハウスに彼女が断りもなく先に連絡したこと、一緒の航空券で行こうと彼女の方から言ってきたのに結局彼女が先に断りもなくチケットを取ったこと、エトセトラ)にすごく腹をたてていて、2年経った今もあれはないな〜と思ってはいるけれど、でも、留学時の恨みは、それだけではなかったのだと思う。


私の留学生活はあきらかにうまくいっていなかった。

思ったように現地の友達はできないし、日本人のコミュニティにも入れないし、英語は上達しない。浴槽が恋しくてたまらなかった。次の旅先を考えること、博物館に行くこと、観劇することだけが心の救いで、目の前のことに取り組むことをやめ、その場から逃げることしか考えていなかった。そんな態度しか取れない自分が嫌だったし、でもどうすれば良いかも全くわからなくて、日本帰国までの日数を指折り数えていた。

理想の留学像に縛られて、それ以外の道を肯定できない自分がいた。

そんなときに出会ったCreepy Nutsの音楽は、そういう理想から自由になってもいいのだ、と少し自分を肯定する理由になってくれた。留学の思い出は最後まで灰色がかっていたけれど、最後には意固地になっていた自分も少し柔らかくなれたと思う。同じ日本人留学生の中には実は私のことを気にかけてくれていた人もいて、もっと素直になって、変なプライドや鎧を早く脱ぎさって、目の前のことに飛び込む勇気を持っていたら、違ったのだろうなと思う。

でも、後悔はしていない。その代わりに得たものもたくさんあったのだから。ニューヨークの街自体を嫌いにならずに済んだのは、きっと、そういうものがあったからで、そう思えたきっかけの一つが、この曲。多様性について、自由になることについて、こういう角度から背中を押してくれる曲はなかなかいない。


みんなちがって、みんないい。