37、その少年とおじぃの別れ

おじぃの死を聞いた数時間後、その少年は家族の写真アルバムを母の押入れから引っ張り出しおじぃが写っている写真を集めた。

すぐにでもおじぃの元へ行きたかったが、父から「もう少ししたらみんなで行くからそれまで待て」と言われていた。
おじぃの娘の母だけ先に行っているらしかった。

これまでにおじぃと行った旅行や、花火大会、遊園地、何でもない日の夕食の瞬間の写真がそのアルバムにはあった。

ひとしきり泣いたその少年はそれらの写真を、懐かしみ穏やかな気持ちで見ていた。
おじぃの死を消化できたわけではなかったが、理解はできはじめていた。

その少年はおじぃが写っている写真だけを集めておじぃ用のアルバムを完成させた。
それが何の為になるのか分からなかったが、おじぃの事に夢中になっている時間を過ごしたかった。

アルバムが完成した頃、父が「行こうか」と姉や兄を含め全員にこのひと言だけで声をかけた。
それぞれが自分の部屋にいたが、リビングでボソッと声を発しただけの父の声に全員が反応した。

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