2、その少年の家族の完成

その少年が祖母の家から帰った我が家。
母と姉、兄…と、みんなからお父さんと呼ばれる人のいる我が家。

そんな我が家は、木造アパートの1階の2部屋を借りており、
それぞれのベランダをつなげて、行き来できるようになっている。
ひと部屋は台所とリビング。もうひと部屋は寝室となっていた。

このベランダ移動が辛かった。冬は寒くて夏は暑い。
そして、毎晩怖くて寝室まで一人では移動できなかった。
姉か兄が寝室まで手を引いて連れていってくれる。
もしかすると、姉と兄も怖くて一人ではベランダ移動が出来なかったのではないかな。
その少年の前では、怖いものなんてない人間になれたのではないだろうか。


その少年はみんながお父さんと呼ぶ人を、
言葉を覚えた時には何の抵抗もなく、お父さんと呼んでいた。

父は足が悪く、母が入院中の病院で母と出会った。
母より10歳年が上の父は、いきなり3人の子供の父親になるという覚悟を決めたのだ。


母に惚れたから。
それ以外の理由はなかった。


父は母への愛情表現の言葉や姿を、誰にも見せたことはなかったが、
一緒にいるということが何よりの父からの愛情表現だった。

その少年が何も考えずに、泣いて笑って甘えているうちに、
どんどん姉と兄はたくましく育っていき、父は黙って愛情表現を続け、
母は孫にオモチャを与えることしか考えない例のおじぃをなだめ、


その少年の家族が出来上がっていった…。


つづく…。

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