11、その少年の欲

その少年は学年が上がり、2年生になっていた。

そして着実に友達を増やしていった。

薫や純平、カズに戸田っち、わっかん。

休み時間や放課後はみんなとよく遊んだ。
しかし、学校がない日には遊ばなくなる。

休みの日のその少年と、
学校でのその少年のギアの入れどころが難しかった。

週末には必ずおじぃの家に泊まりに行っていたのだ。

特になにをするでもなく、ただただおじぃの家にいた。
おじぃとさんぽに行き、おじぃの行きつけのスナックに付いていく。

おばあちゃんにはよく、「あんた友達おらんの?」
と、心配された。

一切、休みの日に学校の友達と遊ばないわけではなかったが、
休みの日はおじぃといる事の方が心地よかった。

夏休みなんかの長期休みの期間は、ずーっとおじぃの家にいた。

しかし、その少年が夏休みでもおじぃには仕事があるので、
夕方まではその少年はおじぃの家に1人でいた。

おばぁちゃんも、その少年の昼ごはんだけ作り置いて、
パートに行ってしまう。

その少年は1人で、おじぃの定位置の座椅子に座り、
ボケーっとおじぃの帰宅を待つ。

そんな何の進化もしないでいる小学生になった2回目の夏休みを過ごしていた。


その日は、おじぃの家のベランダで1人で日光浴をしていた。

テレビで大好きな芸人さんがハワイに行って日焼けをしている姿を見て、
自分も黒くなってみたいと思ったのだ。

その少年は集合団地のベランダで、パンツ一丁になって寝そべっていた。

おじぃが帰ってくるまでここで1日を過ごそう。
そんなこと考えて、作り置きのお昼ご飯の焼きそばをベランダで食べていた時だった。

「勇也〜!」

と、下から声が聞こえた。


勇也…?

そういえば、隣の団地に勇也が住んでいたなとその少年は思った。

勇也とは保育園が一緒でよく遊んでいた子だった。

「勇也ー、あそぼー!」

下からの声は断続的に、勇也をお誘いしていた。

その少年は、勇也元気かな、なんて思いながら下から勇也を呼ぶ人の姿を見ようと、ベランダから顔を出し、下を覗いた。

そこには、


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