山に入ることまでは嫌いにならなかった

サークルに入るためにその大学へ進学したようなものなのに
けっきょく卒業まで在籍できなかった。
活動内容には違和感なく、楽しく過ごしていたのにな。

登山にはどうしても最初にそろえる装備にお金がかかるし
山にばかりいるからバイトもできないということで
経済的な理由で辞めていった子もいた。
古本屋に本を売って(さすがに教科書じゃない)なんとかしのいだり、
「教科書代が思ったよりかかって」という学生の3割は使ったことがあるような台詞で親から余計に仕送りしてもらったこと、私もある。

また、1度だけならともかく、そんなに何度も行くほど山に興味がないという子もいた。
1度行けば面白くなるから!と言われ、行ってみたものの辞めさせてもらえない。
そういう同期を見ているのはつらかったなぁ。

で、私が辞めた理由。

1年次の夏合宿は北アルプスだった。3チームだったかが違う山域に入り、最後に集合した某所で、私は先輩に口淫を迫られたのだった。
あぁ、初めて自分の中から外に出す記憶かも。キーボードを打つ手が震える。

あと2-3日で帰るという日の夜。
「うなされてたぞ」と夜中に起こされたのはまだしも、なぜ外に出たのか。
テン場の向こう側にあるテーブルとイスのある所まで行き、少しは話をしたのだったか。まったくもって記憶がない。
私は地面に膝をついていた。事後にコーヒー牛乳を買ってくれたのは覚えてる。

今でも不思議なのは、なぜ私にはそれを求めても大丈夫だと思われたのか。
なぜ私は嫌だと言えなかったのか。
なぜ私だったのか。合宿に参加している女性は私だけだったとしても。

私が山に入るきっかけとなった、高校時の登山イベントで仲良くしてくれた人だった。
のちに部長にもなった人だ。
嫌だという選択肢は浮かびさえもしなかったのかもしれないなと、今でも思う。

あまりにもショックだったのか、感情が動いた記憶がなく
きっと感情がつぶれたままサークルを続けていたのかもしれない。

あぁ、「かもしれない」ことばかりだ。

私はけっきょく、2年次の春には退部した。
秋になる前には同期もすべて退部したことは他部の先輩から聞いたっけ。

私はこのころから、大学生活の記憶が曖昧だ。

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