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母とわたしの通信簿戦争

世の中に"オール5"の通信簿を持って帰ったことのある人はどのくらいいるだろう。

わたしの人生の過去の栄光、それは"オール5"を2度獲得したことだ。
だがそれは今でももっと評価されるべきだったのでは?と思うような、微妙な記憶として残っている。


わたしはそれなりに勉強ができた。
中学生の頃、テストの順位でいつもトップ3に入るとか、ズバ抜けて良い訳ではないが、約240人中30位以内に入る程度の頭を持っていた。

小学生まで、わたしは自分の頭がそこそこいい作りをしているだなんて思ったことがなかった。
なぜなら小学校ではテストを受けても順位付けすることがなかったからだ。

小学生の時は、褒められる時は褒められたし、怒られる時は怒られる、100点の時もあれば60点の時もある、ふつうの小学生だった。

ただ、高学年の時の担任の先生はやたらと褒めてくれていた。それはきっとわたしの成績がよかったからだ。



そして中学生になり、初めての中間テスト。
わたしは約240人中7位をとった。
自分でびっくりである。衝撃の順位で今でも覚えている。わたし結構すごいじゃん、と思った。

そして一学期末テストでは16位くらいだったと思う。
下がったとはいえ、なかなかすごいではないか。

そして先生からも好かれていたわたし。自分で言う。かなり好かれていた。だって根が真面目なのだ。
授業は真剣に聞くし、ノートもしっかりとるし、提出物も必ず出すし、テストの点数もそれなり。
嫌われる理由がない。


ただわたしは体育がすこぶる苦手で(どのくらい苦手かと言うと、長距離を走った後に校庭にゲロを吐くくらい。実話。)1学期の体育の欄には"3"の判子が押されていた。

そして美術も"4"だった。
絵を描くのは好きだったが、センスが無いんだと思う。
小学校の通信簿も図工の項目はオールBだった。
『好きなこと』と『できること』はやはり別物なのだ。


さて、いよいよ2学期。

勉強できる人によくある
『体育、座学がはじまると成績上がりがち現象』
そして美術は、わたしお得意の
『根っからの真面目さで先生に気に入られ現象』
のお陰でなんとめでたく"オール5"の成績を納めたのである。


相対評価様々。

終業式にひとりひとり成績を見て「次はここを頑張ろうね」なんてコメントしながら通信簿を手渡していた先生も、私の番では「あなたには言うことないよ」と言って渡してくれた。


そして小躍りしながら親に通信簿を渡すと
「えっっ!?!?へぇ〜〜〜〜」

という感じ。以上。
それまでも親に成績で褒められた覚えはないので、まぁこんなもんか、と思った。

その時、わたしは賭けに出た。

当時お小遣いが月1500円だったわたしは
「3学期もオール5だったらお小遣い3000円にしてよ」
とお願いした。

とはいえ1学期には3があるし、3学期につけられる成績は1年間全体の評価だと知っていたので、これはもうダメ元である。

母もそれを知っていたのでどうせ体育は間をとって4だろうと思ったらしく「いいよ」と快諾した。


そして3学期最終日、学校から帰ったわたしはニヤニヤしながら母に通信簿を渡した。

母はわたしの表情で全てを悟った。

通信簿を開き

「なんでオール5とるのー!!」

と、めちゃくちゃがっかりしていた。
がっかり所ではない。絶望していた。

「1学期、3があったからオール5はとらないと思ったのに!」

ここまで否定されると記憶に鮮明に残るくらいにはショックである。

そして最後まで褒められることなく、母は不機嫌な顔のままお小遣いは上がるという、悲しいような嬉しいようなよく分からない中学1年の通信簿戦争は終わったのだった。


今の時代、自己肯定感という言葉をよく聞く。
わたしの自己肯定感の低さはこういう事の積み重ねである。


子どもの頃、身内から褒められた記憶といえば、祖父の妹である人に褒めてもらった事くらいだ。

小学1年生の学習発表会でやった『大きなかぶ』の劇。
おばあさん①役だったわたしの「なんておぉーーーーきなかぶなんでしょう!!」というセリフがよかったよ、とか、夏休みの宿題だった作文で、家族で海に行ったことを書くと、まるで情景が浮かんでくるようだよ!とか。

本当にそのくらいしか思い出せない。

なんとも切ない小中学生時代だが、こんな感じの人たちは世の中にたくさんいるだろう。


褒められていないだけで、ダメだとは言われていないが、なんとなく大人になってから自分はダメな人間だなと思うことが多い。

外見、中身、特技、センス、何につけてもわたしは特に良いところがないし、自信満々の人を見ると怯んでしまう。

きっとわたしにも取り柄はあるのに、なにも出来ないと思ってしまう。

でもわたしは以前の記事でギターをはじめたように、やろうと思えば結構なんでも出来る。

自己肯定感を自分で上げていく為にこんな風に文書にしたりしている。


わたし、実は意外とできる子なんです。


なんちって。

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