共に過ごした時間

夫だった人とは大恋愛をした。

きっと、夫だった人にとっても人生で最大の大恋愛だったのではないだろうか。そんな気がしている。

池袋にある彼のアパートで幾度となく重ねた逢引は、2人だけが知っている甘い蜜のある秘密の場所の様だった。
私たちの歴史が始まったのはそんなところだった。

実際に彼の部屋に入るまでに、丁寧に育てられている木々や花々が堺がわからないほどに置かれている。季節ごとに彩りや香りが漂うシークレットガーデンを抜け、アルミ製の階段を足音がなるべく立たない様にそろりそろりと二階にある彼の部屋に向かう。

表参道の大通りにある路面店で働く私は、社会人2年目で社会のひよっこだ。
慣れない社会人生活に疲れたひよっこは、時には表参道ヒルズの前に路駐し待っている彼のもとに、ある時は彼の池袋のアパートに急いだ。
付き合いはじめてすぐに

「セカンドハウスに…」と

合鍵を渡され、甘い蜜を吸い癒されにふたりの居場所に帰った。

お互いに心の養分をむさぼる様に補い合っていた。

そうして私たちの人生の、短く長いページが生まれた。