怒りを持て

カネがない。電車で後ろから押される。すれ違いざまにぶつかる。悪口を言われる。小言を言われる。説教をされる。誰も助けてくれない。生きる気力がない。

怒りを持て。生きる気力がなくなる前に怒りを持て。すべてのことに対して怒り狂え。どうしておまえが我慢しないといけないのだ? どうしておまえが感情を押し殺し、周りに配慮しないといけないのだ? 周りがオレに配慮しろ! と怒りを持て。自分中心で世界が回っているのだと錯覚しろ! わめき散らせ! もっと怒りを!

日常感じるささいな感情。それをため込む。自分が悪かった、と。こんなことで心が揺れ動くほどの繊細さを持っている自分が悪いのだ、と。それを繰り返す。何度も、何度も。そうして、おまえは怒りを持てなくなる。気力がなくなり、何もやりたくなくなる。この世界からフェードアウトして、いなくなる。存在が消える。誰も気にしない。存在を主張しない者の失踪に誰が気づく? おまえはもはや透明人間だ。誰からも気づかれない。それでいいのか? おまえは自分の存在を主張したくないのか? オレはここにいる! ここにいるんだ! と。

怒りを持て! 怒り狂え! 自分の存在を主張しろ! カネがない! 電車でオレにぶつかってくるな! 人に配慮しろ! 叫び出せ! その場でありったけの怒りをぶちまけろ! おまえの怒り狂った姿をぶちまけて、オレはここにいる! と力の限り主張しろ!

どうして自分ばかりがこんな目に合うのか。どうして自分はすべての攻撃を引き受けてしまうのか。ずっとそんなことをやっていたら、自分はすでにボロボロ。瀕死状態だ。心も体も、赤ランプが力なくチカチカ光っている。もう途切れそうな光。自分の命がそろそろ終わりを迎える。こんな人生でよかったのだろうか。人に迎合し、波風立てず、誰からも嫌われずに生きる人生。これは自分が本当に生きたかったものなのだろうか。本当に過ごしたかった日常なのだろうか。

そんなことはない。そんなことはないはずだ。だから、今、自分はこうやって後悔している。命の終わりがやってくる今になって、今までの人生を後悔しているのだ。もっと怒りを持てばよかった、と。自分を押し殺して生きることが一番やってはいけないことだ。それなのに、自分はそのことに気づかず、生きてきてしまった。なんとむなしいことであろうか。まだ自分に力が残っているのなら、それが最後になってもいい。力の限り、怒り狂いたい。

今まで我慢してきたすべてのこと。今まで自分を虐げてきたすべての人間。今まで自分の感情を踏みにじってきた家族。怒り狂おう。最後に私はやるだけやって、この世からいなくなる。それが私が生きた証しになる。怒りを持っている者は私についてこい! 皆で怒り狂おう! このくそったれな全日本に、全世界に! 怒り狂え!

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