父は笑いながら骨となった…と思う
17年前、私の父のお葬式で爆笑した話、聞く?
父のお葬式は家族葬でとりおこなわれた。
とてもアットホームないい式場で、通夜の後、私は父と同じ部屋で兄と布団を並べて寝た。
兄と布団を並べて寝るなんて子供の頃以来だなぁなんて思いながらウトウトしていたらお葬式の朝になっていた。
式場から焼き場まで車で10分程の距離。
お葬式が滞りなく終わって、親族はみな用意されたマイクロバスに乗り込んだ。
私は一応皆さんに乗っていただくよう誘導したりして最後に乗り込もうとしていた。
すると、当時小学6年の息子が私のところに来た。
「パパがおらんねん」
そんなアホなことあるかいな。
どこに消えるっちゅーねん。
「もうバスに乗ってるんやわ。あんたも早く乗り!」
「でも…乗ってへんと思う」
不安そうな息子。
冷静に考えたら息子をほったらかしてダンナ1人でバスに乗るなんて考えられないわけだけど。
その時は私はいろいろテンパっていて正直、ダンナの事なんて考えていられなかった。
「乗ってる乗ってる。ええから乗り!」
と息子の背中を押して、自分も乗り込んだ。
出発するバス。
10分程走ってバスは焼き場の駐車場に入って行った。
砂利道をピーピーと音を鳴らしながらバックして駐車しようとしている。
なんとはなしに窓から外を見ていたら
「あれ!?」
ってなった。
喪服姿の男性がひとり歩いている。
しかも私の窓の下を歩いている。
「見た事ある人やわ」
「知ってる人かも」
「ダンナやん…」
なぜバスに乗っていなければならないダンナが焼き場の駐車場を1人で歩いているのか。
頭の中をハテナマークが飛び散って綺麗。
「なにしてるんやろ」
息子を振り返ると「ほらな」という顔をしている。
ほんまに乗ってへんかったな。
バスを降りてダンナを捕まえる。
「なんで歩いてんの?」
ダンナの第一声。
「置いて行くなや〜〜」
知らんがな。
「式終わってすぐトイレに飛び込んで、出てきたら誰もおらんかったし」
人生の8分の1くらいトイレに居るダンナらしいエピソードだ。
「そしたら式場のおばちゃんが、乗らないとダメな関係のかたですか?って聞くから故人の娘の夫ですって言ったら、そらあかーん!って慌ててな、自分の車出してくれてん。軽自動車。」
軽自動車だから小回りがきいて、バスより先に焼き場に着いたのだとか。
自分の父親の焼き場で膝から崩れ落ちて笑う娘。
お父さん、ごめん。
でもお父さんも笑ってるはず。
だって、
【見ず知らずのおばちゃんの通勤用軽自動車の助手席に座る喪服姿のダンナ】
シュールな光景……。
私に言える事はただひとつだった。
「こんな時くらいトイレ、我慢せえや!」
「いやいや、置いて行くなや!」
これ、どっちが正しい?
今でも仏壇の前に座ると父の遺影に向かって問いかける私なのでした。
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