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支援者として、人として、人に向き合う~更生支援の現場から 千葉龍一さん、インタビュー記事②

3月13日午後8時から、「支援者として、人として、人に向き合う」
~更生支援の現場から~
の講師を務めていただく、千葉龍一さんのインタビュー記事です。
取材、執筆はいずれも中條幸子(臨床心理士の経営を考える会代表)
情報は2020年2,3月時点のものです。

②・千葉さんが支援をする上で大切にしていることは?

「例えば、物事を伝えられない、とか、そういう方が多い。障害といえば、障害かもしれないですね。(障害者)手帳も取れるかもしれないし、持っているかも。でも、彼らと一緒に暮らしていると、何が苦手なのか見えてくるんですよ。だからうまく伝えられないなら、書いてみる。“苦手を見つける”“本人が何をしたいのか”というのがすごく大事。一人一人、みんな違いますから」

・一人一人、オーダーメイドで支援する

「ある男性のことです。それまでの彼の生涯は壮絶でした。出所して、“やっぱり生きていたくない”とリストカットをしていたのです」

・リストカットは他人の気を引くため、ということもありますが

「うーん。僕は彼をいつも見ていた。リストカットした腕を隠していた。ということは気を引くためではない、と思ったんですよね。だから彼に“どういう気分?”と聞いたら、“リストカットをしたら死にたい気分が落ち着く”と。本人にどうしたい、と聞いたら“生きたい”と。なので生きるためなら(リストカットは)ある程度いいよ、と。そうしたらその後、かなり落ち着いて。もちろん、リストカットはいけない、ということは正論です。でも、リストカットも一人一人違うんですよ。」

・一人一人見る、具体的には?

「上下をつくらない。同じ目線ですね。“先生”は禁止です。先生が苦手な人が多いですからね。一定の線引きはありますが、友達感覚のような感じで接しています。彼らは一律の「出所者」じゃない。一人の人して見る。そうすると、相手からもらうものがすごく大きい

・そういう支援関係はなぜ作れたのですか?

「それはものすごく失敗したからですよ(笑)」

・多くの失敗が今の支援につながっている、ということですか?

「はい。自立準備ホームを初めて任されたとき、いきなり施設長。出所者のことはまったく知らない中で始めたのです。彼らを押さえつけて、差別的な目線を送っていたのかもしれません。よく言われましたよ”千葉さんは刑務所にいたことがない。オレらの気持ち、わかっていない“。彼らは壁を感じていたのでしょうね。うまくいかなくて・・。けんかばかりしていましたね」

(続く・全3回の②)


<用語>

※1<自立準備ホーム>刑務所を出所したものの行き場所が無い人に一時的に住居を提供し、再起を助ける民間施設。NPO法人などが、あらかじめ保護観察所に自立準備ホームとして登録し、受託する形で運営している。自立準備ホームの職員が毎日 生活指導などを行うことで、自立を支援している。

※2<満期出所>満期出所とは、受刑期間が終了して出所すること。身元引受人がいない自分は必然的に満期出所となる。出所後は、住居、衣服、携帯電話などを全て自分で用意しなければならない。
<仮釈放>仮釈放とは、模範囚(他の受刑者のお手本になる)と認められ一定の条件をクリアしている受刑者が満期終了前に、条件付で釈放される制度。大まかな条件は、帰住地(帰る家)があること、無事故であること、刑務所の規則に違反し懲罰を受けないこと、身元引受人がいること。


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