『手当たり日記 21』ゾンビの夢 畳の夢 2023年11月30日
数日前に買ったマットレストッパーが昨夜届いた。マットレストッパーというのは、文字通り、マットレスの上に設置する敷布団みたいなやつだ。実家から今の家に引っ越した時、ちょうど仕事が忙しかったからか、急いで安めのベッドを買ってしまった。これが良くない。起きると腰が痛くなる。回復を求めて睡眠するのに、体の痛みで目を覚ます。1年半使っていたのだけれど、睡眠の質がもう少し上がれば、さらに昼間パフォーマンスを発揮できると思い、買ってみた。昼間のパフォーマンスが低い原因は、半分くらいは怠惰で、もう半分は睡眠の質。伸び代がある。
入眠するために、マットレストッパーを設置したベッドに寝転がってみると、いい感じに体を支えてくれている感じがする。いつものように、本を読んでいたらだんだんと眠くなってきたので本を閉じる。電気を消して目を閉じると、今度はいい感じに支えられている感じ、が気になってきた。これまでは雑なコイルが無遠慮に弾性力を発揮していたのだけれど、マットレストッパーは気を使ってくる。雑さに慣れていると、繊細な気遣いがむしろ鬱陶しく感じることがある。それだ。だが、慣れ。慣れが大事だ。などと考えているうちに眠りに落ちていた。
その夜夢を見た。初めて見る夢だった。僕はゾンビと戦っていた。初めてゾンビと戦った。ゾンビ映画やゲームにあまり興味がないのでわからないが、とてもリアリティがあった。襲ってくるゾンビを何度も何度も押し返しては、走って逃げ、追い付かれては襲われた。ゾンビは、雑で配慮のないコイルの弾性を象徴か。あるいは、1万円の繊細で優しい思いやりか。
今朝はいつもより倦怠感はなかったので、きっとコイルがゾンビ、もしくはゾンビがコイルだったのだろう。慣れていけば、いずれゾンビも出てこなくなるだろうか。そもそも、僕は睡眠にすこし繊細な方だという自覚がある。普段と違う寝具だと、入眠に時間がかかる。それから、次の日が早いと、眠れなくなる。登山などに行く前も、なかなか寝られないし、ロケの前なんかも全然寝付けない。
以前、アラスカに留学している時に行った雪山一泊登山を思い出した。雪を溶かしてお湯を作るようなキャンプで、雪は深くはないが、風が強く、とにかく寒かった。寝ているだけでもエネルギーを消費してしまい、空腹で目が覚めてしまうからと、胸ポケットにチョコレートバーを忍ばせておくことを勧められた。男3人が2人用のテントに文字通り川の字になり、テント内を体温や呼気で温める作戦。たくさん着込んでシュラフに入るものの、やはり深夜に目が覚めた。チョコ菓子を食べても、とにかく眠りが浅かった。しかも、気になる音が聞こえてくる。カサカサ、カサカサと、ひっきりなしに音が聞こえる。夢の中でカサカサ音が具現化した。その時は、ゾンビではなく、実家の畳をひたすら撫でる夢だった。なぜだろう、日本が恋しかったのだろうか。結局音の正体は、テントの外側に収納用の袋が結びつけられたままで、風に煽られて擦れる音だった。幽霊の正体見たり枯れ尾花。それと比べれば、先回りの鬱陶しい優しさなんて、むしろありがたい。明日は早いので、優しさに包まれて早く入眠したい。
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