【3日目】ウルグアイ牧場滞在記2019
DAY 3 2019/8/28(水曜日)
5:30起床。
朝食では搾りたての牛乳を生まれて初めて飲む。臭みがなく爽やかで美味しい。
朝一番の仕事は、赤い印のついた羊12頭を6頭ずつトラックで運ぶ。
荷台に乗せるため、暴れないように脚を紐で括っていく。
羊は必死に逃げようとするが、座らされた途端に大人しくなる。
呼吸が出来るよう、頭が重ならないように注意してトラックに載せる。
これらは群れからはぐれた羊たちだ。
羊や牛、馬など、目が横についている動物たちは必ずグループを作る。
目が顔の正面に付いている動物たちと比較して、被支配(支配される)動物と呼ぶようだ。
そのため、グループから後れを取っている、もしくは取り残された羊は
何らからの問題を抱えていることがすぐに分かる。
そういった羊たちを小屋に戻し、手当をしてパドックに戻す。
また問題を抱えた羊は、体に赤いインクを付けて区別する。
今回は12頭と数が少ないため、トラックで輸送する。
フェンスが高い位置(1.4~1.5M)に設置されており、
30kg前後の羊を持ち上げて静かに下すのは大変な作業だ。
1歳未満の子羊は一人でも軽く持ち上げられるが、大人の羊はかなり重たい。
フェンスの内側に降ろした羊たちは、紐をほどいて開放する。
ほどかれたことに気づかずにぼーっとしている羊もいるため、
「さあ、いけ!」と背中をぽんと叩く。
脚を縛っていた紐は、動物たちが食べてしまう可能性があるため必ず拾い上げる。
帰り途にチャクラと呼ばれるパドックに向かう。
ウルグアイで「チャクラ」というと100ヘクタール以下の
人口的な農地を指す。例えば、野菜や米の栽培地など。
ここSAN RAMONでは、パドックの名前にチャクラと名付けている。
土地が柔らかく植物が育ちやすいため、栄養価の高い1年草を植えている。
いくつかの地点で草の育成状態を確認するため、見渡す限りの平原を2人で歩いていく。
歩いていると草に付いた水滴でブーツが濡れてくる。
(ところどころ小さな水たまりが出来ている。羊には適さないため、ここには移動させない。)
(草の育成状態を確認するミゲル)
(育成状態の良い草。クローバーは栄養価が高いが、牛が食べすぎるとお腹にガスが溜まり死ぬ場合もあるため注意が必要)
週に何度かこうした見回りをして、
草の育成状態、地面の状態、動物の状態などを確認する。
それらの情報を元に、どのパドックにどのグループを移動させるかを決めていく。
(帰り道にガウチョ2人に出会った)
(若頭のアルベルト。青いシャツに赤いパンツ、革ブーツに生成りのハンチング。腰には短刀を指している)
(手前が牧場長のウゴー)
その後、40分程度馬に乗せてもらった。人生初の乗馬。
一番大人しい雌馬とのことで、まずは乗ってみる。
乗ってから、左右への誘導、ストップ、スタートを教えてもらう。
ミゲルの馬と共に、ゆっくりと歩いて湖のほとりへと向かう。
どのくらい足に力を入れたらいいのか、
どのくらいの乗り方が馬にとって心地いいのか、全くわからない。
ゆっくりと歩いているだけなのに、結構疲れる。
こんなんで馬に乗ってガウチョたちと仕事が出来るようになるのだろうか、、、?
馬から降りて「ありがとね」と話しかけながら、首や頭をなでると
なんとなく気持ちよさそうにしている。
馬と仲良くなる方法は、体をなでて話しかけることらしい。
隣の馬は嫉妬したように、こちらを見ながら前足で地面を叩いている。
(羊肉の煮込みのパスタ)
(デザートのプリン)
(ガウチョたちが約500頭の牛たちを石垣の柵に誘導してくる)
午後からは牛たちの作業開始。
この柵は自閉症の人が設計したらしい。
動物の空間認識能力を理解し、ストレスを軽減させるデザインになっている。
(石垣の柵に入った牛たち)
(ガウチョたちが100頭前後の牛を次の柵へと誘導する)
(隙間の大きい木製の柵。隙間から外の様子が見えるため、割とすんなりと入ってくる)
(手前の柵の隙間が大きいのに対し、奥の柵は隙間がない。この空間の差を動物たちは認識する。ガウチョたちが白い旗を振りながら、奥の柵へと誘導する)
(隙間の無い柵へと誘導された牛たち)
(次の柵は、牛1頭が通れるだけの幅しかない。この通路でICタグによる個体管理と注射を打つ。)
(興奮して逃げ出す牛)
(注射の準備をするトルコ)
(体重を計測するため、1頭ごとに柵を閉めるウゴー)
(293㎏、子牛)
(種類ごとに出口を手動で切り替えるルイス)
季節は冬の終わりだが、気温は30度程度とかなり暑い。
夏は40度を超えるというので、外にいるだけでも大変な仕事だ。
ハエや蚊、雑菌、悪臭も増えるだろう。
柵の中は牛の糞尿でぬかるんでいるので、ブーツや服は結構汚れる。
16時30分ころに作業は完了し、今日の仕事はこれで終了。
SAN RAMONでは、食肉用の牛を放牧している。
穀物は与えないため、霜降りの柔らかい肉ではなく、赤身の詰まった肉になるそうだ。
家に戻るとショセリンがおやつのパンを持ってきてくれた。
商店街のパン屋で売っている菓子パンのような懐かしい味がする。
(上には砂糖がかけられ、中にはジャムが入っている。)
喉の痛みがあるので、しばし休息。
早めにシャワーを浴びて、ミゲルに貸りた羊の本を辞書片手に読んでいく。
ミゲルはサルトにある羊の学校に1年間通っていたという。
羊の飼育方法について詳しく書かれているテキストブックだ。
マテを飲みながらまったりとした時間。
ミゲルもこの時間が一番好きだと言っていた。
19時15分頃に夕食が運ばれてくる。
(ジャガイモのトルティーシャ)
(羊肉の煮込みスープ)
(料理や掃除、洗濯などをしているショセリン。僕と同い年の35歳。ここで働いて15年になるという)
住み込みで働くガウチョたちの食事も作っている。
彼女の料理が本当においしい。
昼と夜に出来立ての料理を運んでくれるが、味付けがレストランで食べているように美味しい。
この地方の習慣として、夜にはスープ(煮込み)を食べる。
マトンと小麦粉ペンネ(リングイネ?)、じゃがいもの煮込み。トマトも入っている。
良く煮込んだじゃがいもで少しとろみがある。
パスタだったり、米だったり、日によって変わるが、基本的な味付けはだいたい同じ。
夕食後、ミゲルと一緒にテレビでサッカーの試合を見るが、
ハーフタイムで眠気が限界のため、早めに寝ることに。
「眠たい」というスペイン語の表現は、「夢を持っている」(Tengo Sueno)という。
日常で使う言葉だけれど、とても詩的な表現だ。
(湖に沈む夕日)