【21日目】ウルグアイ牧場滞在記2019
DAY 21 2019/09/15(日曜日)
7時に仕事場へ行き、馬の準備。
昨日、ガウチョたちが既に羊たちを小屋に連れてきており、柵の中には羊たちが溢れている。
しばらくすると、大型のバスやトラックがベースに入ってくる。
毛刈りの専門家たちだ。
トラックを小屋に付け、機材を降ろしていく。
20人もの人たちが、手際よくセッティングを始めていく。
SAN RAMON班は、グレードごとに羊たちを分ける作業を始める。
SAN RAMONでは、右耳に付けられた色付きピアスでグレードを管理している。
羊毛のグレードは、繊維の細さを表す「μ(マイクロン)」という単位で変わる。*ミクロンともいう。(スペイン語ではミクラス)
カシミヤの平均繊度が14μで、そこそこ高級なウールで17~18μ程度。
ここSAN RAMONの最も細いウールの平均繊度は13.5μ。
希少性の高い超高級原料だ。
僕が好んで使っている15.5μは12000頭いる羊のうち、300~350頭からしか取れない。
13.5μとなると、30頭しか取れない。
カシミヤはスケール(キューティクル)やクリンプ(縮れ)が少なかったりするので単純に比較は出来ないものの、繊度だけでみればカシミヤよりも細い。
ちなみに、「平均繊度」という言葉について解説すると、羊1頭の中でも、部位によって繊度がバラついている。
お尻・背中・肩・脇腹の順に繊度は細くなる。
お尻と脇腹では、2μ弱のバラつきがある。(本出ますみさん「羊の本」参照)
流れ作業の中で、確実に15μだけを収集することは不可能で、
繊度の細いもの太いものも混ざっていて、平均すると15μですよ。というのが平均繊度。
ピアスの色を見て選別し、毛刈りの時にグレードが混ざらないよう準備を進める。
羊を追っかけまわしていると、いつの間にか毛刈りがスタートしている。
初めて見る毛刈りの光景。
ものの5分で丸坊主にされた羊たちは、洋ナシのような姿になり、白く輝いている。
毛が刈り終わる前に、次の羊が用意され、
刈られた毛が回収されると同時に、次の羊がセットされる。
9人の毛刈り職人たちが次々に毛を刈っていく。
刈り取られた毛は、選別班へと運ばれる。
選別班は2人1組×2チームの4人で、毛の品質とクラスを分けていく。
すのこのようなテーブルの両サイドに分かれ、1頭当たり20秒程度で作業を進めていく。
まずは見た目を確認し、色の変化や汚れを確認する。
次に、1房の毛を取り出し、手で引っ張って毛の強さを確認する。
手の力で切れてしまう毛のグレードはB判定となる。
(先端から2㎝くらいのところが弱くなっているのが見てわかる)
(引っ張るとプチっと切れる)
クラス分けは、お尻、脚、腹、頭の周りを、それぞれ別々に仕分けし、大きな袋に投げ入れていく。
部位によって汚れ方や色に差があるため、クラスにより価格が異なる。
残ったきれいな毛はA品質として、次工程のパッキングへと受け渡される。
パッキングはディーゼル圧縮機で、1ベールに約200キロの羊毛が圧縮される。
この機械が無かった頃は、人間が足で踏んで圧縮していたようだが、
恐らく同じ大きさでも100㎏程度しか圧縮できないだろう。
ベールごとのラベルには、品質、重量、ロットが記入され、倉庫に入れて完了。
オーストラリアでは、毛刈り、クラス分けを一人の人が担当するらしいが、ここでは、それぞれ担当が決まっていて、効率よく作業が進められていく。
(ロベルト作の煮込み)
なぜ難しい煮込みに挑戦したんだろう、、、。
ショセリンがいないと、こういうことになるのかと実感。
午後も同様に作業を進め、今日一日で8ベール(1580㎏)が出来上がった。
これらの他に、お腹の毛やお尻、頭の周りの毛、くず毛などを含めると
2000㎏は超えているだろう。
今日の毛刈りは1歳未満の子供たちのため、1頭当たりの毛の重さは1㎏に満たない 。
1日で2000頭以上の毛を刈ったことになる。
5時頃に今日の作業は完了。
今日の気温は30度以上で、人や羊であふれた小屋の中はものすごい暑さだった。
春先の作業とはいえ、一日中腰をかがめている毛刈り職人たちはかなりハードな仕事だろう。
どうやら明日は雨になるらしく、その場合の作業は中断する。
羊の毛は完全に乾いていないと、ベールの中で腐ってしまうため、毛を刈ることは出来ない。
そのため、数日晴れて毛が乾いた後でないと、毛刈りのスケジュールを立てることが出来ない。
毎週末に雨が降って、毛刈りのスケジュールが遅れていたのは、そんな理由がある。
(夕食のアサド)
いつもはナイフフォークで食べているが、ずっとやってみたかった手づかみで食べてみると、こっちの方が食べやすく味も美味しい。
肉のうまみや骨の香ばしい香りがしてくる。
最後の1週間。
毛刈りはどうなることか。
日本人が珍しいらしく、撮影していると色々話かけられたり、
「あいつは卵というんだ」とハゲている人のあだ名を言っては笑っている。
言われた人はやり返すように、「こいつはカピパラ」とか、
その他、ゾウやマザコンなど、言い合いながら楽しく作業している。