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【7日目】ウルグアイ牧場滞在記2019

DAY 7 2019/09/01(日曜日)


今日は一日休みなので、SAN RAMONとも密接に関わりのある
CENTRAL LANERA(CENTEX)とのモンテビデオでのミーティングについてまとめたい。

牧場探し、条件の交渉から、バスの手配までとてもお世話になっているガブリエルさんがセールスマネージャーを務ている会社。

世界中の原料商社や紡績工場に、ウールの販売を行っている。


ガブリエルさんは、年に1~2回、世界中を飛び回っており、
生の情報を活かした経営戦略と、人工授精プログラムによる極細原料の生産を強みとしている。


日本製のニット製品(ウール)が出来上がるまでは、主に下記工程を辿る。

 ① 牧場(汚毛の生産)
 ② 洗毛(羊毛を洗う工程)
 ③トップメーキング
 ④ 輸出(現地の原料商社)
 ⑤ 輸入(日本の原料商社)
 ⑥ 紡績(染色・撚糸)
 ⑦ ニット工場
 ⑧ 製品

今回の例でいうと、①をSAN RAMON②~④をCENTEXが担っている。


日本の洗毛工場は何十年も前に無くなってしまったので、ほとんどの羊毛は海外の洗毛工場を経て、日本に輸入される。

CENTEXは1967年創業。約40の地方企業と連携し、2000もの牧場から羊毛を買い取っている。


ウルグアイの羊毛だけでなく、アルゼンチンのオーガニックウールなども扱っている。

自社で洗毛・カード工場を保有しており、年間6000トンのウールを世界中に輸出している。
この量は、ウルグアイ全体の羊毛輸出量の約15%に当たる。

ウルグアイには、CENTEXを含め4社の羊毛商社が存在している。


CENTEXの特徴は、地方企業と連携した牧場管理であり、
毛を細くするためのブリーディングプログラムと、牧場の経営バランスをとるための羊肉販売を行っている。

ブリーディングプログラムは、人工授精によって毛を細くするための方法で、
25年前の平均繊度が20~21μだったものが、現在では、17~19.5μまで細くなってきている。

*繊度とは、繊維の直径を表す単位で、μ(ミクロン・マイクロン = 1/1000ミリ)を使って表す。

羊毛の毛を細くするための方法は2種類。


① 羊の食事を制限し、飢えさせること
② 人工授精によって毛の細い羊同士をかけ合わせること

羊を飢えさせると栄養が不足するため、毛は細くなるが、
繊維がプチプチと切れやすくなる上、アニマルウェルフェアの観点からも問題がある。

一方、人工授精は管理も大変で、時間もかかるが、繊維の強度を保ったまま毛を細くすることが可能になる。


ウルグアイで現在の最も細いものが13.5μ。
カシミヤの平均繊度が14.5μなので、カシミヤよりも細いウールが登場してきている。(*もっと細いカシミヤも存在する)

ちなみに、ウルグアイに紡績工場はないため、生産された羊毛の100%が輸出される。


2016年頃までは、紡績から製品までの一貫工場が4、5件残っていたようだが、時代の変化とともに廃業し、現在は非常に小規模な工場が数件残っている程度だという。

そもそもウルグアイにはウールを着用する文化があまり無いらしい。


ウールのセーターは値段が高いため、多くの人にとって買いやすい製品ではなく、街にはMade in Chinaのアクリルセーターが低価で売られている。

CENTEXの主力事業は羊毛の輸出だが、羊肉の販売も行っている。

毛は、回収・加工・販売(輸出)までを管理しているが、
肉は、回収・国内屠畜業者への販売までを行っている。

羊肉事業は、牧場経営を安定させるために行っており、牧場を維持していくためのサービス事業だという。

食文化である肉は置き換えされにくいポジションにあるが、繊維・洋服は低価格の化学繊維(ポリエステルやアクリル、ナイロンなど)に代替可能であり、羊毛は利益が安定しにくいビジネスになってきている。

牧場の経営を安定させるための羊肉販売事業は、羊毛文化を維持していくために必要と考えているとのこと。

実際に、ウールの原毛価格は社会背景によって大きく変動する。


例えば、米中貿易摩擦によって2019年3月頃には原毛価格が25%もダウンした。


多くのMade in China 製品がアメリカのファッション市場で販売されていたが、関税が上がった結果、中国製の製品需要が減ったということだろう。


牧場経営という大自然相手の仕事は、意外なほどファッションという移ろいやすい需要と密接に関連している。

オーストラリアでは、羊毛価格よりも羊肉価格が上がった結果、羊毛牧場の多くが食肉用の牧場に切り替わった。

羊の頭数が減少している世界的な状況の中で、CENTEXのような10年先を見据えた施策を取っていなければ、羊毛用に飼育される羊の数は確実に減少していく。


オーストラリアのように各牧場に経営を任せていると、今後この問題はますます大きくなっていくだろう。

需要の衰退を受け、この30年でウルグアイの羊の頭数も1/4に減少している。
2500万頭だったものが、現在650万頭まで減っている。

ウルグアイ産ウールの特徴としては、ノンミュールジングであるということ。


オーストラリアでは、ある特定種のハエが羊の肛門付近に卵を産み付ける。

肛門付近の皮膚のしわの間などに排泄物が溜まり、ウジ虫が湧き、羊が死んでしまうこともあるため、お尻の周りの肉を切り取ることで、ハエを予防している。


この臀部の肉を切り取ることを、ミュールジングと呼んでいる。

一方、南米にはこの種のハエがいないため、ミュールジングは不要になる。


ミュールジングをしていない羊から取れた羊毛を、ノンミュールジングウールと呼ぶ。

アニマルウェルフェアの観点から、オーストラリア産からウルグアイ産ウールへの切り替えが起こっているようだ。

その裏側では幸せでないことも起こる。

僕の地元、新潟県見附市は繊維産地だ。

小学生の頃、アジアへの生産地移転によって、友人の父親は自殺した。そして今でも日本で売られる衣類の97%は外国製だ。

急激な変化がベストではないと思っている。


今朝は6時半に起床。


少しずつ日の出の時間が早くなってきている。
急いで支度をして、日の出を見に出かけた。

この美しい自然と羊毛の品質は、直接関係が無いのかもしれないけれど、
動物たちがストレスなく生きられる環境であることは間違いない。

豚小屋を見に行ったが、昨日の牛はまだ食べかけの状態だった。


豚は家族全員で体を寄せ合って眠っていて、湯気が立っている。


7時過ぎにようやく起き出し、すぐに食事を再開する。


家に戻って朝食を取り、部屋の片づけと洗濯をした。


考えてみれば、生まれたときには洗濯機があって、衣服を手で洗うという発想すらなかった。


旅先で下着を洗うことはあっても、シャツやパンツは初めて洗った。

汚れているところに石けんを付けて、手の加減で洗っていく。


汚れが落ちていく感じや、揉んだりこすったり、絞ったりという作業は意外に楽しく
干した後の衣類も気持ちよさそうにしている。
(帰国した今でも手洗いを続けている)

(昼食。自家製のパセリが入っていて美味しい。)

(デザートのアロースコンレチェ。お米をミルクと砂糖で煮たもの。伝統的なデザート)

(夕食はアサド。牛肉を炭火でじっくりと焼き上げた伝統料理。)

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