見出し画像

【24日目】ウルグアイ牧場滞在記2019

DAY 24 2019/09/18(水曜日)


5時15分起床。
6時には既に仕事が始まっている。


画像1


朝一番は、ミゲルとトラックで4頭の羊を運ぶ。
これでミゲルとのトラックでの仕事も最後かと思うと、しみじみ。

小屋に戻り、毛の房のサンプルを採集する。


体重計測が滞らないよう、4人がかりでスカーティングの作業をしているため、
1頭当たり10秒程度で仕分けされていく。

房を取り分けてくれるので、こちらも急いでホチキスを止めていく。

毛量の計測は、人工授精候補のメスたちを対象に行われる。

生後7~9か月で左耳に番号が付けられ、
毛の量、毛質、体重によって、次の母親候補が決定する。

12時前まで作業は続き、昼食を取り、13時に仕事を再開。

画像2

画像3

(昼食)


先週、こんなに頭を掻いたらハゲるなあ、というほど頭がかゆかった。


夜中も寝ている間に頭を掻いていた記憶がある。


ガウチョたちと話していると、ピヨホと呼ばれる羊のダニなんじゃないか?とのこと。

たしかに、羊の毛をかき分けて見てみると、ダニがいる。


画像4

(黄色いぽつっとしたものがダニ)


毛並みが悪かったり、毛が抜けていたり、
口に毛を咥えていたりする羊が多い。

そういった症状のある羊には、ダニがいると教えてくれた。



痒みで体をこすりつけたり、口で毛を抜いたりするため、
毛並みが荒れるという。


画像5

(毛並みが悪い羊)




ロベルトが羊の身体から何かを剥ぎ取っている。
落ちていた針金が毛に絡んだのかと思いきや、植物だという。


画像6

(ウニャ・デ・ディアブロ。「悪魔の爪」という意味)


アザミのように固いトゲと、悪魔の爪のような突起物がついている。


触ると痛いくらい、カチカチのトゲがついている。

ヒツジの毛に絡みついて種子を運ぶのだろう。簡単には取れないくらい毛に絡みついている。


また、ガウチョたちの植物知識は多い。

この草は、風邪をひいた時に熱いお湯に入れ、
蒸気を吸うとすっきりするだとか
この草は、シャンプーに使えるとか、
胃薬になるだとか、歯に良いとか、
その辺の雑草に対して知識を持っている。

手先が器用で必要なものをこしらえたり、自然に対する知恵の多さに感心している。




毛量検査が終わると、人工授精で生まれたオス羊の毛を刈っていく。

立派な角を持った、大きな羊たち。
通常の毛刈りが17ペソ支払われるのに対し、
これらの羊達は19ペソ支払われるとのこと。

体が大きいうえ気性が荒く、角もあるため毛を刈りにくそうだ。


画像7


毛の量も1頭当たり、3.5~4.0㎏程度はありそうな、大きなフリース。


スカーティング台の上にも収まらないほど、大きなフリースが出来る。

画像8


朝6時から夕方6時まで働き、ようやく終わりかと思いきや、
帝王切開の手術をするとのことで、現場に駈けつける。


画像9


到着すると、既にお腹は割かれており
ハビエルがお腹の中に手を突っ込んで、子供の脚を探している。

子供は大きく成長しており、大人が3人がかりで引っ張ってもなかなか出てこない。


一度脚を腹の中に戻し、腹の中で子供の頭を探す。

子供の頭を出し、続けて前脚を出す。


前脚に縄をかけ何人かで引っ張ると、上半身だけ出てくる。

ハビエルはお腹の中に手を入れ、もう少し引っ張ると、
大きな骨盤と共に、全身が出てくる。

既に10分以上経過している。


母牛のお腹からは出血が多く、足元は血だらけだ。

ガウチョ2人が子牛の蘇生を試みているが、
恐らく、子供は助からない。

すぐさま、縫合作業に入る。
辺りは暗くなり、ライトをつけて手元を照らしている。


いろいろな内臓を収めている袋を縫合し、
それを収めている内側の皮を縫合し、
最後に皮膚を縫合する。

牛は目をひん剥いて、時折苦しそうに息をしている。

縫合が終盤になると、余裕も出てきて、
1ヶ月に2回も帝王切開があるなんて異常だから、
お前のせいだと笑っている。


画像10


しみじみしたりはしないけれど、何となく、あと数日で帰っていく日本人と過ごす時間を感じ、笑い話のネタを振ってくれたりしている。




手術が終わると、テキパキと片づけをし、
牛の様子を見守ることもなく、すぐさま解散。

牛はしばし呆然と座り込んだまま、
電気は消され、真っ暗闇の中に取り残される。


7時半に家へと戻り、すぐさまビールを持ってガウチョたちの元へ。

画像11

画像12

 


今日は、お礼の気持ちを込めて、ビールを持って彼らと一緒に夕食を食べる。

本当は、飲みながら本音のようなことを聞きたいと思っていたけれど、
じっくり語り合う的な雰囲気にはならず、またバカ話をしている。


そして飲むペースが異常にはやい。

若手ガウチョは普通に飲んでいるが、オヤジたちは一息に飲み干している。


昔のガウチョといえば、小さいころから働き始め、給料日にバーへ行き、お金が無くなるまで飲んで、所持金ゼロになってまた働く、という感じだったそうだ。


なんとなく傍若無人な荒くれ者というネガティブなイメージがあるものの、街の女性に聞いても全く悪い印象はなく、他の男性と同じくフラットな存在なのだそうだ。


アベルなんぞはモテモテで、バーに行ったらこう言えと、口説き文句まで教えてくれた。


Mi nombre es Wataru, soy de Japon.
「僕の名前は、ワタルです。日本から来ました。」

Vos sos muy linda.
「あなたは最高に美しい。」

Me gusta tu cara.
「あなたの顔が好きです。」

Puedes bailar conmigo?
「僕と一緒に踊ってくれませんか?」



ラテンアメリカ特有の腰を入れたダンスがあるので、

男女の出会いは全く苦労してないとのこと。

売春文化もないらしい。





帰りには天の川がみえる満天の星空を眺め、帰宅。

彼らのすっきりとした感じのおかげで、
しんみりとせずにお別れが出来るかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!