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新しき世代_04 千葉純胤の時空移動

千葉の館奥に成胤が一人いる。従弟たちである五家の面々はもう帰路へついていた。未来から来た子孫の純胤ももう霞と共に消えた。

純胤が言い残した「鎌倉の動向を見逃さぬよう。特に比企家と北条家」という言葉に従弟たちは「あれでは判らぬ」「三浦家はどうする」などさっきまで喧々諤々論じていた。

しかし成胤としては「早々には下総上総での大事はございません」という言葉の方が大きかった。

成胤の大きな悩みに下総上総のことがある。特に弟である常秀の存在に遥か苛まされていた。

もうすぐ成胤は父の胤正より千葉本家を継ぐことになるだろう。そうなると下総の多くは成胤が継ぐ。

一方、常秀はすでに上総の多くを今は亡き上総家から引き継いでいた。大須賀通信の言う通り、上総の方が栄えていて、常秀の方が従五位下と官位もあった。

常秀は本家である成胤より、なにもかも上だった。

このままではいつか上総が千葉本家として君臨してしまうのでは、従弟たちも成胤と常秀の歴然とした差を見続ければいつか見限ってしまうのではと何度も過った。

何とか打開したく辿りつたこと。

それが常胤のお祖父様と同じように妙見様へ願いを唱え、未来を知る子孫を呼び寄せることだった。

千葉本家の自分なら出来ると信じて妙見様へ願いを込めて唱えた。

結果は常胤のお祖父様と同じく純胤は現れた。この才力は常胤のお祖父様と成胤しかない。まさに秘中の秘である。

純胤が言い残した未来は破片でしかないが、これからのことを知りえていること自体が成胤に好機をもたらし、常秀より先手をうつこともできる。

しばらく下総上総に大事はないということは千葉一族内での騒動はなさそうだという事であろう。その分、鎌倉の大局へ集中できる。

純胤が言い残した比企家と北条家。因縁もある二家である。

成胤はこの二家にどう探り入れていくかを思考を巡らし始めた。




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