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【β版】千葉篤胤の転生記_04

モロツネは語り続ける

「我ら一族の事も伝えておこう。これから会うかもしれぬし。下総の地を束ねておる。とは言え下総全てではない。下総にはもう一人、藤原親政が束ねている地がある。この親政がなかなか喰えぬ。藤原の血統であり、妻は西国平氏の棟梁である平清盛様の妹と来た。こちらも手だしがなかなか出来ぬ相手よ」

「我ら一族の棟梁は父上であるタネツネ。その下に我ら7兄弟がいて、長兄がタネマサ。我が兄ながら思慮深い。次兄が俺。三番目がタネモリ。方々で探りに出てるのであまり下総にはいない。4番目がタネノブ。力は滅法強い。5番目はタネミチ、真面目が取りえだ。6番目はタネヨリ。都で使えている身だ。7番目はニチイン。こちらも都で僧をしている」

兄弟の説明ありがとうございます。なかなか多様なご兄弟でと思いつつ、モロノブ殿は右手にある袋より紙と筆を取り出し、それぞれの名前を書き記してくれた。

常胤 ツネタネ
胤正 タネマサ
師常 モロツネ
胤盛 タネモリ
胤信 タネノブ
胤通 タネミチ
胤頼 タネヨリ
日胤 ニチイン

らしい。僕のアツタネ(篤胤)とほぼ同じ法則。胤いっぱい!でも師常には胤がなく、日胤はタネって読まないのか。なんか不思議。

ほかにも師常(モロツネ)殿からは今の世の世情なりいろいろ教えてもらった。逆に師常殿からは未来である現代の話は殆ど聞かれなかった。聞いてしまうとその未来に縛られてしまうと感じているらしい。ただ僕のじいちゃんと師常殿の父親である常胤殿がいかにそっくりかの話は詳しく聞いてケラケラ笑っていた。

「少し日も落ちてきて肌寒くなってきたな。ちょっと館に戻ろうか」

確かに日は落ちてきたけど寒くなってきたのは感じなかったな。2人意識がある状態だと皮膚感覚もないのか

館に戻って中の広間を抜け、薄暗い部屋にきた。そこには常胤殿と仏様が祭ってある。仏間?仏様は僕の自宅でも見慣れている仏様。竜に乗った妙見様だ。

「師常、戻ったか」

「父上、また新しい状況になりました。なんと未来人である篤胤殿と私が一つの体に交えているのです。そして篤胤殿と沢山言葉を交わしました」

師常殿は父親である常胤殿に簡潔にポイントを押さえていまわかりえることを伝えた。

常胤殿は一通り聞き終えた後、うーんと腕組をしてしばらく考え込んでいた。

「なかなか珍妙なことが続くの。では物の怪がお前に取り憑いたという類でなく、本当に我らの子孫である篤胤殿という方がお前の中にいるというのか」

「はい、そう考えるのが一番最良かと」

我がことながら自分が未来or物の怪とは不思議な感じ

「では一体、800年も遡り、篤胤殿はこの世にたどり着いたのであろうか」

「そこは私も熟慮しましたが全く見えず」

「そうよのう。困ったときは妙見様へ祈り願うしかないかもしれぬの」

「ここ最近、隣の藤原親政めがより厳しく我らの地にちょっかいを出してくるので、妙見様に願いをしたばかりだというのに」

「父上がここ最近、こちらに一人でおこもりになっているのは妙見様へ願いをお伝えしていたのですが」

「そうじゃ、妙見様に『一族総出で困難に立ち向かってまいりますので何卒お力をお貸しくださいませ』と日々祈っておるのじゃ」

祈り…妙見様…一族総出…

僕と師常殿は声を揃えて(僕の声は師常殿にしか聞こえないけど)

「一族総出、それだ!妙見様への祈りが僕を(篤胤殿を)ここへ呼んだんだ!」

その刹那、また僕は深い眠りについた。



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