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新しき世代_03 千葉純胤の時空移動

武石胤重は千葉成胤に問うてはいたが純胤が割って入った。

「いやはや、僕が呼ばれた理由はいずれにせよ興味深いですね。成胤、どちらですかね。これからの鎌倉の大局と千葉一族内の趨勢」

純胤の眼は好奇に満ち、きらきらと輝いていた。

「とはいえ、僕は千葉一族内の『今』がどうなのか曖昧なんで。出来れば下総と上総の『今』を僕に教えてくれませんか」

武石胤重は承知と答え、語り始めた。

「成胤は常胤お祖父様から胤正叔父上からへ続く千葉本家。拠点は下総です。そして我らが胤正叔父上と兄弟を親とする分家が相馬・武石・大須賀・国分・東と五家」

「そして他にも千葉氏はいます。成胤の弟である常秀が上総を束ねています。下総・上総、いずれも千葉一族。ただ本家は変わらず下総の成胤となります」

大須賀通信が割ってはいる。

「本家って言っても、上総の方が豊穣だし都へは海路で近いしな。なんていっても常秀は従五位下で成胤は無位だぞ。朝廷での格が違う」

純胤はおや大変ですねと言いながらにやにやしていた。

しばし無言でいた成胤が口をひらく。

「確かに私は常秀と比べ無位だ。上総と下総を比べると明らかに上総の方が栄えている。ただ千葉一族は下総を本家として今があり、これからも変わらない」

成胤の口説に大須賀通信が「では上総も我らと同じく分家なのか」と問うも、成胤としては言葉が詰まってしまった。

純胤はまあまあと入り、語り始めた。

「なかなか下総上総の事は面倒ですね。僕としてはイマイチ下総上総の関係が掴めてませんでしたが、いまの皆様のやり取りだけでも微妙な関係が視えてきてありがたいです」

「僕が推察するに、ここには常秀がいない。僕を呼んだ理由が『鎌倉の大局』であれば下総上総、両総揃ってここにいるでしょう。『一族内の趨勢』を憂いてのことでしたら常秀はここに呼べないですよね」

成胤は渋い顔をしていた。純胤は続ける。

「一族内の事は安心してください。早々には下総上総での大事はございません。分家の皆様も成胤を想い、ここへ集うておられます。なんと麗しいことでしょう」

「それよりも『鎌倉の大局』です。これからの鎌倉の動向を見逃さぬよう。特に比企家と北条家」

純胤はそこまで言った最中、純胤の周りに突如として濃い霞がかかり、ものの数秒で霞ごと忽然と消えた。



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