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【β版】千葉篤胤の転生記_03

モロツネは語る

「いまアツタネがかかわっている不思議な現象を整理しよう。まずは未来からアツタネが今の世にきている事。あくまでも依り代として俺の体に取り憑いてくること」

取り憑くって、そんな物の怪のような言い方しなくても

「取り憑き方は、完全に私の意識を遮って憑く方式と、今のように私とアツタネで意識を共有して取り憑く方式があること。完全に取り憑く場合は私にはその間の意識はなにもないこと。共有して取り憑く場合は体を動かすのはあくまでも私しかできないこと。さっきの鏡が取れないときにそう感じたのだが、いまアツタネはこの体をなにか動かせるか?」

たしかにモロツネの言う通り、僕は全然動かせない。体の命令系統は完全にモロツネのようだ。

「あとわかっていることは私とアツタネでは時間の流れが違う事。私にとって取り憑きは3日ぶりだが、アツタネにとっては昨日の事なんだろ?」

その点もモロツネの言う通り。確かに時間の流れが異なっているようだ。

「ざっとこんなところか。これからも何かわかるかもしれぬが。なにかアツタネの方で気づいたことはあるか?」

あるかっていっても。なにも浮かばず。モロツネの言う通りでしかない。むしろこのハチャメチャ現象が整理できた感にお礼が言いたいくらいです。

モロツネは一呼吸して、おもむろにまた語り始めた。

「もうひとつ..多分合っていると思えることがある。それはアツタネが我が千葉一族の子孫ならば800年後経ても我らは滅びずその世にいるという事だ」

確かに!僕にとって遠い祖先の話で昔話のように当たり前に800年前にいたことは知っていても、逆の立場なら自分たちの子孫がいるかどうかなんで知りもしないこと。

「千葉氏はアツタネの世ではどうなっている。今のように下総を束ねておるのか。ひっそりと土地もなくどこか遠い地にいるのか、はたまた…」

「いや、800年も遠くの話を聞いても絵空事と変わらぬであろうな。ただ父上に尋ねたことで気になることがある。なぜ源頼朝様の居場所と齢を尋ねた」

「それは、いまがいつ頃なのかを知りたくて聞きました」

「頼朝様は源氏と平氏が袂を別ち、争乱して平氏の世となった折に囚われた。もう20年近く囚われの身。なにも力も持っておらぬ。そんな頼朝様の居場所と齢は、800年も先の人々からして今の世を探るにたいしたことなのか。なにか頼朝様がされる大事があるということか」

モロツネ、するどすぎ!どう答えていいものか。そもそもこれって答えていいこと何か。よくある歴史ものの時代干渉になるような。なにしゃべったらいいか怖い…

「まあ、アツタネも答えにくいことかもしれぬし、私も仮に未来人として何百年も昔に遡ったらその時代の人々に何を知っていることを伝えていいのか思い悩むであろうな。自分の言葉がこれからの流れを変えてしまうかもしれぬし」

「ただ我ら一族がちゃんと800年の時を超え、その世に生きて、我らの事を時折語ることがあることだけでもと感慨深くおもう」

僕の立場?を察していただきありがとうございます。

「私が未来を知ることはなにかと覚悟はいるが、アツタネが過去である今の事を知るのはいいだろう。私も別に壬申や将門公様の事は知っておるし。というかどこまで知っているのだ、今の世を」

「あまり知ってないです。この時代は未来で歴史を学ぶ際にはちょっとしか触れず。たまたま僕がご先祖の由来故、少しかじったかもくらいで」

「なるほど。これからも取り憑きが時折続くなら、少しは知っておいたことがいいことがあるな。今からお伝え申そう」

「今は平氏が世を束ねている。天子様や上皇様よりも平氏の世といえる。それも20年前に源氏と平氏で争うた結果だ。我ら千葉一族は源氏に味方した。我らも平氏ではあるが、東国武士の多くは源義朝様に味方したのだ。結果は敗れてしまった。故に今は平氏、いや西国平氏の世が20年程続いている」

「その後、西国平氏は方々で源氏を滅ぼした。義朝様も殺されはしたが、遺児は命は取られず生きながらえることとなった。頼朝様のそのおひとり。義朝様に味方した東国平氏は特に咎めはないままのものの多い。特にこの下総と上総は。西国平氏からすると下総上総は攻めに来るには遠くて強大だからな。特に上総は上総広常様ががっしりと構えておる。広常様は東国一の兵力を持ち、広常様自身が東国最強の漢だから西国平氏もてをつけれぬ。ちなみに我らと上総家は親戚よ」



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