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和田合戦_04 千葉純胤の時空移動

和田義盛と三浦義村は鎌倉より遠い人里離れた古びた館で落ち合っていた。

館と周りには和田家と三浦家合わせて十人も満たない数である。

奥部屋で和田義盛と三浦義村が二人だけで対座していた。

和田義盛は静かに口を開いた。

「義村。儂はこの度、起つことにした」

三浦義村は黙って聞いていた。

「そなたの父である義澄の叔父上と儂の父である義宗は兄弟。儂とそなたは年は二十離れるも従弟同士じゃ」

「三浦家の家督は儂の父が早逝したため、義澄の叔父上が継いだ。儂は名こそ『和田』であるが三浦一党であることに変わらぬ気概で生きてきた」

「頼朝様が挙兵してからいままで三浦と和田はいつなんどきでも一丸となって苦難に立ち向かってきた」

「ここ幾年か和田家は北条家に苦汁を飲まされ続けてきた」

「三浦の惨苦は和田の惨苦。和田の恥辱は三浦の恥辱」

「義村。この機に北条を討たねば、もう北条の世を覆すことは出来ぬぞ。いまなら叶う」

「この度の決起の大概は和田家で致す。実朝様の御所にてひと騒動も起こし御所の北門より実朝様が出るように仕向ける故、三浦家で実朝様を匿ってくれればいい」

「北条義時は我らが誅殺する。義時が亡くなり実朝様が我ら三浦一党の手にあれば多くの御家人は我らに付き従うわ」

「儂は事を成せばもう家督を子に譲る。義直でも秀盛でもお主の望む方に継がす。侍所別当も儂が実朝様へお主に引き継がれるように嘆願する」

「三浦一党はお主の元でより強固になる。三浦の世が始まるぞ。揺ぎなく永遠にな」

三浦義村は和田義盛の眼をしっかりとみて頷いた。


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