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性別に関する駅業務

手術なしでも戸籍上の性別変更が可能、という報道を見た。それとはあまり関係ないが、駅で仕事をしていると遺失物を引き渡すときに本人確認で身分証の提示をお願いすることがあったり、定期券の購入には性別の記入欄があるので、顧客の性別を知ることが多々ある。もちろん、99%以上は見た目通りの性別の方だ。残る1%未満に、いわゆる「性的少数者」、見た目は男性だが戸籍上は女性、あるいはその逆という人もたびたび見かけた。道行く人の性別を知るという機会は普通はないと思うが、実際にそういった人は多数いることをこの仕事で実感した。

このような経験から、駅員は人の見た目の性別と実際の性別は違うことがあるということは分かっていると思うが、それでも同僚が見た目で判断している場面が多かったので、ちょっとそれはどうかと思うことは多々あった。それはどういった場面か。

例えば定期券は記名された本人のみ使用可能で、家族のものを借りるというのは違反である。また、定期でない記名Suicaも、他人の利用は鉄道会社に損害がなさそうだが違反である。
ただし、毎回身分証チェックを行なっているわけではないので、事実上、他人の利用はできてしまう。
たまに、ICカードのエラーで引っかかって有人改札で対応することがある。その際に、ICカードの名前や性別を見て、「あなた男性ですよね?このカードは女性となってますが」と同僚が旅客に問いかける場面をよく見かけた。もちろん違反を撲滅するためには疑わしいと思ったら確かめるということで間違いではないと思うが、これがもし性的少数者の方だったら...「犯罪者扱いされた!」とクレームにならないかいつもヒヤヒヤしながら見ていた。実際は性的少数者の方はそういった対応をされるのは慣れていて、いちいち苦情を言わないかもしれないが、それもちょっと悲しい話だ。
私はこういった場面で旅客に声をかけるということはしなかった。というか、いちいち名前を見たりもしていなかった。
実際はそういった疑いのあるカードを使っている人に声をかけて実は本人だったという場面は見たことがなく、大半は他人の利用なのも確かだ。

他に、みどりの窓口でクレジットカード払いをする場面でも同様の光景が見られた。今は暗証番号を入力するようになっているが、数年前までサインを書く方式だった。クレジットには性別の欄がなく、名前が書いてあるだけだが、これがまた男性っぽい名前のカードを女性っぽい見た目の人が使っているから「本当に本人なのか」と声をかけている場面をよく見かけた。実際、夫のカードを妻が借りて買いに来るという場面はよく見かけるので、声をかけたら本人ではないとのことで発売をお断りしているという場面もよくあった。
ただ、これも女性っぽい名前の男性も多くいるし(桑田真澄、金子千尋など)それで声をかけられてたらいい迷惑だろうなと思うし、全ての利用者の身分証明書を確認するという義務もないので、名前だけで判断するのはよくないと考えて私はいっさい声をかけていなかった。
しかも、クレジットカードのサインに関しては、カード会社にサイン照合という仕事があるはずで、サイン照合の担当者が不正と認知すればそれなりの対応をするはずである(全取引に対してチェックをしているわけではないようだが)。なのでわざわざ接客時にトラブルのもとになるような「本当に本人なのか」みたいな対応をするのではなく、気になるなら対応後にカード会社に連絡して「こういった対応があった」とする方がまだスマートなのではないかと考えていた。

これらの対応を通じて思ったのは、「当たり前だが、名前と性別が一致しているのは過ごしやすい」ことだ。特にその点で不自由することなく暮らせてきて良かったと思う一方、不一致の人は事あるごとに犯罪者扱いで苦労しているだろうなとも思うので、せめて不一致の人も一定数いると皆の頭の片隅に入っていれば嫌な思いをすることも減りそうだなと感じた。

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