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#24 畏怖

「畏れ」と「怖れ」、どちらも「おそれ」と読むが、その意味合いは大きく異なる。アミメニシキヘビが逃げ出したというニュースの世間の反応を見ながら、ふとこの違いについて考えていた。詳細は辞書に任せる。

世間の反応で僕が感じた違和感は、ニシキヘビは犬猫を食べるだとか、赤ん坊が飲み込まれるという怖れを多くの人が抱いていたことだ。もちろん過去に世界各地でそのような悲劇は起きてきた。しかし、それが生じる確率に比して世間が騒ぎ過ぎている。正直、今回の件で人間に害が及ぶ可能性は飛行機の墜落より低いと思っている。では、より危険な飛行機になぜ多くの人が乗るかというと、その危険性を正しく把握しているからだろう。

僕のように生物を相手にする生業をしていると、ニシキヘビがどの程度危険なのかを知っている。多くの人にその知識が無いのは仕方のないことだが、闇雲に怖れをいだくのではなく、相手をきちんと理解することで正しい行動をとれるようになるだろう。その瞬間に単なる怖れが、畏れへ変わるように思う。

まぁ、今回の件で思っているのは、正確なリスクを知って欲しいってところだ。

もう一点。危険生物を飼育するなんて、とんでもないから規制すべきだ、という一見ヒステリックな意見が多く見られていた。

誤解があるようだが、実はこの手のヘビを含む危険な動物(特定動物)を愛玩目的で飼育されることは昨年から禁止されている。個人的にはやり過ぎな法改正とは思うが。

では何故、現在も飼育している人がいるかというと「法の不遡及」に勘案して、過去に愛玩目的で飼育していた人は、事前に届け出さえ出しておけば引き続き飼育が可能なのだ。

どこかの国で遡って罰を与えようとして問題になったこともあった。自分の気に食わないことを禁止だ制裁だと騒ぐ前に、最低限の世の中の仕組みを知る努力は欲しい。

(2021/5/12)

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