2024年アンチ・ドーピング 変更点について
月刊弓道4月号より
◎(公財)全日本弓道連盟 医・科学委員会
スポーツの世界で、「反則」であるドーピングが無くなることはなく、オリンピック では毎回違反者が報告されています。また、 規制緩和により様々な薬物が入手し易くも なってきている状況下、世界アンチ・ドー ピング規程(WADA コード)にも示され ている「教育」は重要となります。
本連盟においても、昨年の弓道誌3月、 5・6月合併号、9月号にてアンチ・ドー ピングについて概説いたしました。
ドーピング物質について禁止されている ものは、禁止表国際基準に示され、全世界・ 全スポーツ共通のもので、少なくとも年1回、毎年1月1日に改定されます。選手は、 この最新の情報を常にチェックすることが 必要です。
今年もJADAが国内最高レベルの競技大会を指定していますが、弓道では国民スポーツ大会(令和6年度より国民体育大会 から名称変更)が指定されています。国民 スポーツ大会出場を目指す選手の方、その指導者の方、帯同スタッフの方は、アンチ・ ドーピング研修が義務付けられていますので、今年の変更点についてもしっかり理解をしておいてください。
2024年禁止表国際基準の変更点
昨年までは※①監視プログラムに入って いた「トラマドール」が※②競技会時に禁止される物資(S7・麻薬)に変更されました。 トラマドール(薬品名:トラマール、ワン トラムなど)は、がん疼痛や慢性疼痛の鎮痛に用いられます。アセトアミノフェンと の合剤(薬品名:トラムセット、トアラセッ ト)としても利用されることが多い薬です。 薬をほぼ全て体外へ排出するウオッシュアウト期間は2時間とされていますが、代 謝速度には個人差があり、競技会前後で治療のためトラマドールを使う必要のある選手は。※③TUE申請をしてください。
その他、新たな禁止物質の追加もありま すが、特に健康食品やサプリメント中に含 まれることが多いです。日本国内において も昨年外国産の健康茶からデキサメサゾン (糖質コルチコイド、競技会時禁止)が検 出された例があり、健康食品等は特に注意 してください。
サプリメントや健康食品の摂取は、あくまで自己責任となります。
特定競技において禁止される物質について
禁止物質は①常時禁止物質、②競技会時 禁止物質、③特定競技での禁止される物質と分類されます。
③は現在、ベータ遮断薬のみが禁止され、 対象競技はアーチェリー、射撃、ビリヤー ド、ゴルフ、ダーツ、スキー競技、自動車競技などです。
ベータ遮断薬は緊張を抑制し、「あがり」 を防止する作用や手指の震えを軽減する作 用があるとされています。
現在、国際弓道連盟は、世界アンチ・ド ーピング機構(WADA)に加盟していない ので、弓道は③の対象競技ではありませんが不必要な薬の摂取は、副作用発現のリスクからも避けるべきと考えられます。
最後に復習となりますが、選手がやるべ きことについて
(一)病気になって、病院で診てもらう時に は、必ず医師に自分がドーピング検査を受ける可能性があることを伝え、禁止物質を含まない薬を処方してもらう こと。
(二)薬局で薬を買う時には、スポーツファ ーマシストに相談し、禁止物質を含ま ない薬であることを確認する。調べた結果は記録しておくこと。
競技を続けていく限り、ドーピングコントロールは常識です。
ドーピングについて正しい知識を身につ け、正々堂々と競技生活を送りましょう。
※①監視プログラムとは、WADAがスポーツに おける濫用のパターンを把握するために監視することを望む物質であり禁止物質ではない。
*②競技会時とは、競技会前日の夜中23時50分か ら開始され、競技会での検体の採取過程の終了 までをいう。
*③TUE(Therapeutic Use Exemption =「治療 使用特例」)申請とは、病気やけがの治療のため に、禁止物質や禁止方法を使用せざるを得ない 場合には、特例として承認を得た上で使用が可能となる手続きです。
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