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10万配って得た100万の価値

本noteは、パーソルとnoteで開催するコンテスト#はたらいて笑顔になれた瞬間の応募として、わたしの仕事での壮絶なエピソードを綴った記事です。

『緊急事態宣言を発令します』

2020年4月 今もなお続く新型コロナウイルスによる第一回目の緊急事態宣言発令。

安倍総理の真剣な眼差しをテレビで見ながら、え。これどうなんの。と声が漏れたあの日からはや2年。

店頭からマスクが消え、仕事はリモートに切り替わり、今までの生活基準が180度、いや一周して540度、本当に変わってしまった。この事実は今でもみなさんの頭の中に鮮明に刻まれている出来事かと思います。

その影響で、わたしの“仕事”にも多きな変化がありました。

一律10万円を全国民にばらまきます

2020年4月中旬 国の緊急措置の1つとして、全国民に一律10万円をばら撒く。というニュースが目に飛び込んできました。

その時の率直な感想は、

おい、まじかよ、最高やん。

正直そう思った方がほとんどかと思います。そのうちの私も1人でした。

と同時に

どうやって1億何千人もいる国民に配っていくん?一体だれが?

というシンプルな疑問が脳裏に走りました。

この疑問の答えが、私の壮絶なドラマの幕開けとなるのです。

まさか自分が配っていく側の人間になるなんて予想もしていませんでした。

大規模PJTの統括リーダーとして任命される

ここで簡単に自己紹介を。

私はパーソル社で今もなお働く橋本 航といいます。
2018年に新卒で入社し、今年4月で4年目を迎える26歳です。

2020年当時、わたしは新卒で配属されたアウトソーシング事業を展開する部署の法人営業として働いていました。

法人営業といっても、民間企業での営業と、官公庁での営業にわけられ、わたしは官公庁(国・地方自治体)での営業担当として働いていたんです。

実は、あまり知られていませんが、全国民に10万円を配るこの業務は、すべてといっていいほど民間委託されています。

その業務量とやらは膨大な量に上るため、国はそんな事務処理に時間を割てられない→地方自治体に丸投げ→市役所も市民対応に追われている上に、+αの仕事が降ってくるから対応できない→最終的に民間企業にアウトソースしていくわけです。

実は、みなさんの指定銀行口座に振り込まれた10万円は、委託を受けた民間企業の支えによって振り込まれているのです。

パーソル社も、その事業の先駆者として全国の自治体様とお取引をスタートさせていました。

そして、大阪府下のある自治体様でお取引が決まった直後、直属の上司からこう言われました。

『わたる、統括リーダーやれるか』

営業が運用現場のリーダーをすることは基本ありません。
ですが、今回の特需の動きによって、複数の自治体での取引が決まっていたことで、現場のリーダーを担える人材は不足しており、わたししかやれる奴がいない。これが現実でした。

正直不安でした。
ずっと営業しかしれこなかった人間がいきなりプロジェクトの最高責任者になるなんて・・大丈夫なのか。できるのか。

その一方、お願いされたことが嬉しくて、その期待に応えたい。やってみたい。その気持ちも大きく、少し悩んだ結果『はい!』と全力で答えていました。

寝た記憶が全くない1カ月間

事業がスタートすると、それはとてつもなく忙しい日々の連続でした。

まず、市民全員の一斉配布された『特別定額給付金申請書』が、想像を絶するスピードで返送されてきました。

1日に3万通。多い日で5万通を超えました。

トラック2台で配送されるのですから、どれくらいのボリュームかはご想像の通りです。

加えて、コールセンターでは10回線の電話が朝9:00~夜18:00まで鳴りやむことはなく、ひっきりなしに市民からの入金確認の問い合わせ、場合によっては激しいクレームの電話も多くありました。

そんな中、統括リーダーに課された責務は、以下の通りです。

・1日の処理件数のKPIを自治体と定め、それ通りに運用を回す指示を出す
・80名を超えるスタッフをチーム分けし、無駄な作業を最小限に減らす
・だれでも同じクオリティの仕事ができるようマニュアルを整備する
・コールセンターの回答スクリプトを作成し、スタッフ研修で落とし込む
・どうしても対応しきれない重いクレームの処理を担う
・二重振り込みが発生しないよう振込リストの最終チェックを行う

どれも経験がしたことがないことばかりで、本当に苦しみましたが、共に働いてくださっているスタッフさんに恵まれ、1つずつ困難を乗り越えていきました。

次第に、チームで処理をしている団結力が定着しはじめ、こうしたらどう?この方が効率よくないかな?などとスタッフ間で話し合いをする光景が見られました。

よし。変わってきた。

というたしかなリーダーとしての手応えを感じながら、地道な作業を繰り返していった結果、わたしの担当市の給付率は関西全自治体の中で3本の指に入るほど、優秀なプロジェクトとして成長していました。

全体としてはそれでよかった。

ただ、

統括リーダーとしての責務は全く果たせていなかったんです。

『リーダー降格』雨の中全力で泣いた5月27日

事前に自治体様と定めた処理件数のKPIは連続3日間未達成が続き、振り込み遅延による市民からのクレームも日に日に増していきました。

日々襲い掛かるプレッシャーに押し殺され、ほぼ寝れていなかった私は、ケアレスミスの連続で、冷静な判断ができない状態になっていたんです。

最後の決め手になったのは、

同じ人に10万円を2度振り込んでしまう『二重振り込み』

これは、本事業では最大の課題とも呼ばれており、綿密なデータ突合によるチェックが行われていましたが、わたしの確認漏れにより約100件にもわたるデータが重複している事実が、発覚しました。(※振込前に確認が取れたため結果二重に振り込まれることはなかったのですが、あり得ないミスでした)

これを機についに、

『リーダー降格』

聞きたくなかった厳しい言葉が自分に襲い掛かりました。短い命でした。

必死に頑張ったつもりだった。
上司からの期待に応えたかった。
でも、できなかった。自分には無理だった。

悔しい。情けない。
そんな感情がぐるぐる自分の頭の中を駆け巡っていた時、心配して声をかけてくれた先輩との電話で、気が付いたら大雨の中、大声をあげて泣いていました。

忘れもしません。少し肌寒い5月の末の出来事でした。

スタッフからの1通の寄せ書きで人生が変わる

正直、リーダー降格を命じられてからの生活は、もぬけの殻状態で、自分という存在を全否定された気がして、生きる気力すらしないやばい日々が続いていました。肌は荒れ、軽度な鬱状態だったと思います。

ここだけの話、公園のベンチで転職サイトを1時間ぼーっとただ眺めているやばい奴状態でした

そんなこんなで、後任のリーダーの方と引継ぎも無事終え、約1カ月半という短い期間であったがお世話になったプロジェクトを卒業するときが来ました。

あ~色々あったよな~と辛い時期を思い返してしまい、少し悲しい感情を抱いていた時、立ち上げ当初から苦しい時期をともに乗り越えてきたスタッフさんから、渡したいものがあると、あるハガキを渡されました。

そこには、自分に対する感謝の気持ちが生の字体でたしかに書かれていました。

頑張ってよかった。なにも間違ってなかった。リーダーは降ろされてしまったけど、それでも少しでも力になれていたんだ。

そう感じた瞬間、前向きに一歩踏み出してよう。そう心から思えたんです。

こんなことをしてくれると思ってもみなかった私は、嬉しさのあまり、このはがきを握りしめて泣いていました。

仕事は目に見える数字のみを達成するだけではありません。
自分の働きがだれかの役に立っている。無駄な仕事なんて1つもないんだな。と、わたしのこの経験から学びました。

今年、ついに4年務めたパーソルを退社し、個人として独立していくことになります。

10万円を配るという1つの経験からわたしの人生は一変し、いまでは新たな夢に向かって毎日を過ごしています。その価値は計り知れません。

このような貴重な経験をさせてくれたパーソル社には感謝しかありません。

働くを通して、かけがえのない経験を得ることができました。

みなさんの働くとはなんですか。それは今、あたなの目の前の仕事の中にちゃんと存在していると私は思っています。

これが私の#はたらいて笑顔になれた瞬間 です。

はたらいて笑おう。

#はたらいて笑顔になれた瞬間

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