みんな空の下
今年も残りわずか。
本当に大変な1年でした。
おそらく今日は2020年最後の投稿になると思います。
このコロナの状況を海外で過ごした中で感じたことを書き、今年を締めくくりたいと思います。
ことの始まり
今年はとにかく「コロナ」という目に見えない敵に苦しまされた年でしたね。
僕の仕事がストップしたのは3月18日。
新しいショーのお披露目まであと2日というところでした。
シルクドゥソレイユとディズニーが初めて手を組んで創るエンターテイメントの舞台。
マスコミなどの報道により評判は広まり、お披露目前からかなり期待を寄せられているショーだったために、アーティストや制作陣はもちろん、チケットを予約していたお客さんもすごく残念そうでした。
仕事が止まった当初、”ひとまず2週間だけストップする”という話で解散になりました。
そこからというもの、事態は悪化するばかり。
一時、僕の住むフロリダ州はアメリカ最大のコロナ感染者地域となり、スーパーに買い物に行くのでさえも怖さを感じていました。
もちろん2週間で再開するはずもなく、ショーが再開するどころか会社が経営危機に陥ってしまいました。
そんなこんなをしているうちにもう年末。
本業には9ヶ月半関われていません。
そして今も明確な再開予定は出ていません。
得たもの
人間、暇になれば何かしらアクションを起こさないといけないと思うものです。
YouTubeを始めたり、オンラインレッスンをしたり、ウェブ大会を開いたり。
いろんなことに必死で取り組みました。
お金にならなくても良かったから、今日できることをしたかった。
そのおかげもあってか、様々な分野において自粛以前より知識が増えましたし、人脈も広がりました。
パソコンも学生の時よりかなり上手に使えるようになったし、趣味もかなり上達したと思っています。
決してマイナスなことだけではなかった。
それは確実に言えます。
日本との差
県をまたぐ移動だけでも脅迫が行われるような状況でしたので全く公にはしていませんでしたが、少しばかり日本に帰国もしました。
アメリカは、マスクをしなければならない条例に対して講義運動が行われるような国ですので、周りのどんな人でも菌を保持している可能性があると思い、何ヶ月にも渡りソーシャルディスタンスの確保はもちろん、外出も最低限に抑え、家に篭っていました。
僕の中では緊張感がすごかったんです。
でも、日本に帰って来てびっくり。
僕の眼に映る日本人は、まるでコロナを気にしていないかのように見えたんです。
日本人はもともとマスクをよくつけますし、そこに対しての抵抗が薄い。
それもあって、比較的早めにコロナを抑え込むことに成功しました。
その事実はもちろん知っているし、アメリカとは感染者数の規模が比べ物にならないほど小さいのもわかっている。
しかし、
「あまりに気にしなさすぎじゃないか」
というのが僕の正直な感想でした。
電車はいつも通り超満員。
席があけば間隔を空けずに我先にと座るし、それを気にする様子もない。
街の様子だっていつも通り賑わっている。
その光景を見て、なんだか羨ましさを感じたと同時に自分の状況が馬鹿らしくも思えました。
アメリカにはそんな安心感はなかったからです。
※もちろん、日本の人が安心して何も気にしていないという意味ではありません。気にしなければならないレベルの差を感じて羨ましくなったということです。
みんな空の下
この記事の題名にもした、この言葉。
今年1年本当に強く感じたことでした。
海外にきてからというもの、不安や寂しさという感情は少なからず自分の中にありました。
素の自分を出せるような親しい人が近くにいなかったり、なかなか思うように周りの人とコミュニケーションが取れなかったり、わからないこと、不便なことがたくさんあったり…。
そんな中で始まった自粛。
普段以上に人と顔を合わせて話す機会が減り、外を出歩くことは愚か、1日の中で一言も言葉を発さないなんていう日もありました。
正直本当に辛かったです。
一時期はSNSを見るのも嫌になり、スマホの電源を落としている日だってありました。
楽しそうにしている姿、イキイキと仕事をしている姿を見るのが本当に辛かった。
でも、空をぼーっと見ている時間だけはすごく好きでした。
好きというかすごく楽でした。
どこかで同じように耐えている人がいると思うことができたから。
日本だろうが、アメリカだろうが、どこの国だろうが、コロナに苦しめられ大変な思いをしているのはみんな同じ。
「自分だけじゃないぞ」
と自分を励ますことができたのは、心配して連絡をくれる人がいたり、僕の活動を暖かく応援してくださる方がいたから。
その人たちの気持ちを空を見ることで感じることができたのです。
「みんな空の下」
こんな風に世界を大きく客観的に捉えることができたのは、海外に出ることに挑戦したから。辛い思いをたくさんしたから。
そして、たくさんの人が支えてくれたから。
ショーの再開がいつになるかはわかりませんが、年が明ければ少しは光が見えてくるはず。
その時にパワーアップした自分でいられるよう、今は耐え忍ぶことを頑張りたいと思います。
2020年、本当にたくさんの方にお世話になりました。
たくさんの素敵な出会いをありがとうございました。
2021年が皆様にとって最高の年となる様、心から祈っております。
良いお年をお迎えくださいませ。
井藤 亘(いとう わたる)
・シルクドゥソレイユアーティスト(Cirque du Soleil)
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