顔だけの問題じゃない


とわかっている。


風邪が悪化して胃腸を壊し、
このクソ暑い中、カイロを貼って布団にくるまって寝たきりである。
体が弱るとメンタルも弱る。

なんとなく、ちゃんと言葉にしてこなかったことを、考える時間になった。

私が生きづらいのは顔のせいじゃない。
自分に似た顔の人が活躍しているのもみたことがあるし。

社会性の無さがいちばんの問題だと思う。

発達障害のことで精神科にかかったことはないが、Twitterでその話題についてよく見かけて、
ASDってこれ、自分に似ていると気づいた。

正式に診断されたことはないので、あくまでASDぽいということでごまかして書く。

昔は社交辞令がマジでわからず、
お世辞なんか一つも言えなかった。
思ってもないことを言うのはかえって失礼だと本気で思っていた。
冗談にマジギレし、たびたび空気を凍り付かせた。
聞き上手な人に会うと、この人私のこと好きなんだと思い込んで自分語りに長々と付き合わせた。
バイト先で自分ルールを優先して訳のわからない行動を取り続け、私にも体がコントロールできなくて、何度注意しても治らないから、わざと?私のこと嫌いだから嫌がらせするんですか?と同僚を泣かせた。
泣かせた張本人の私はそれをぼんやりみていたと思う。謝罪でも弁解でも、なんでもいいから何か言うべきだったと後になって思うのだが、そのときは一切の言葉が浮かばない。すべて、「後になって」だ。


経験を積んで、
なぜあの人はあんなリアクションをしたのか?とか
私の行動はそんなに責められるべきことなのか?
とかネチネチ考えて、ある程度軌道修正してきた。

自分語りはしない。
マイルールは貫かずちゃんと指示通りにやる。
思ってもないことでも、場が円滑になりそうなことだったら言う。

それでも失敗する。

「場が円滑になりそう」の判断がすでにズレているから、ただの失言になる。

またイレギュラーな事態にめっぽう弱い。
すぐパニックなり、最悪の行動を取る。
例えるなら、エクセルがフリーズしたからブレーカーを落とすようなことを2秒くらいで行う。
このときの判断だけはめちゃくちゃ早い。
だから、頭がおかしい人としてよく扱われてきた。

これについては、イレギュラーな事態用の台本を書くようにして、業務に関することでは問題は起こらなくなった。

しかし台本が通用しないこともある。

雑談である。

急に話を振られたり、
思ってもないことについて
「ワタリノさんはどうですか?」
とか名指しで質問されると、もう頭の中は真っ白である。
自分の物事の感じ方や話し方がズレていて、さらには自分の容姿が他人を不愉快にさせるということは自覚している。視線が自分に集まっている、どうしよう、という緊張で言葉がトぶ。

このときの脳内のイメージは白濁した温泉である。
深い湯船の底には質問に対する回答になりうる、
堅い事実があるのだが、
そんなものはもう見えないのである。
わたしは湯気の向こうの白濁した水面に目を凝らして、
その事実に結びつきそうな言葉がぼんやりと浮いているのを見つけて、
それをとりあえず掴み取って並べる。
内容は全く精査していないので、
その結果、事実と真逆のことを喋っていることもある。

毎度言うことが違うので戸惑わせることもたびたびだし、トンチンカンなことをいう失礼野郎になることも多い。


学生の頃の苦い思い出をひとつ。

サシでは遊ばないが同じグループにいて、仲良くさせてもらってる女の子がいた。
グループで遊んでて、人身事故で電車が止まって帰れなくなったとき、
彼女の実家が近くて、皆んなうちに来なよ!といって泊まらせてもらった。

ご家族も優しくてとても楽しかった。

その3ヶ月後くらいに、
グループで飲んでて、
なんか日本の地域トークになった。
その途中で私は彼女に
「実家どこなの?」
と聞いたのである。

え…実家?○○市だよ…

ガチ困惑してた。
彼女の顔には「おまえこないだ泊まったやん」って書いてあった。

違うの、わたしはあなたの祖父母のお宅の場所を聞きたかったの。言葉が出てこなくて、実家って言っちゃった。もちろんあなたの実家が○○市にあることはよくわかってるし、泊まらせてもらったことも覚えている。とても楽しくて素敵な思い出になっている。言葉が足りなくてごめん。

という言葉も出てこなかった。そっか、と一言答えただけだった。
イカれてる。
彼女の困惑顔に気づいてて、伝えたいことはいっぱいあるのに、言葉が出てこない。

10年以上経っているのに、
彼女の怪訝な顔が焼き付いて頭から離れない。


***

いま職場の隣の席の同僚と若干のトラブルになりかけている。

ファーストインパクトはいい感じだったのにかなり嫌われている気がする。
なぜだろうと記憶を遡ってみて、
先日のランチ会で私がかなりの失言をしていたのかもしれないと思い当たった。
突然名指しで質問されて頭真っ白になってわけわかんない返答をした瞬間があった。
あまりにも言葉足らずで、聞き方によっては彼女へのディスになっていた。

失言ひとつでハラスメントの正当化がされるわけないから、一応証拠集めとかして、戦っていく気ではあるが、
きっかけが自分にあるかと思うと、
情けない。


ワタリノちゃんてシンデレラだよね、
と揉めたバイト先の先輩に言われたことがある。 

健気な良い子のシンデレラポジションにおさまって、人を「意地悪な継姉」ポジションにするんだよ、と。
それを言った時先輩はほとんど涙していた。

多分当たってる。
色々ありつつも普通に頑張ってる普通の人に、
訳のわからない言葉や挙動で喧嘩を売って、
それでいて被害者ぶっている。

嫌われて当然である。

これで見た目が可愛いとか愛嬌があるとかあればまだ許容される範囲が大きいだろうが、仏頂面のクソブスである。好きになれというほうが難しいだろう。

顔が原因で嫌われることもある。
そういう人は初対面でわかる。
初めましての自己紹介でなんかニヤついてたり、顔が引き攣ってたり、目を合わせてくれなかったりする。

そうじゃない人まで、私はコミュニケーション上の不手際で怒らせてきた。
上のシンデレラ発言の先輩だって最初は優しかった。人手が足りないからあなたが入ってくれて良かったと歓迎してくれて、私がどんなに狂ったミスをしても根気強く指導してくれた。
私は彼女のことが好きだったし、ありがたい存在だと思っていた。
しかし彼女にとって私は、どんなに親切に指導しても真顔で真逆のことをやりつづけ、ペコペコ謝って悲壮感は出すものの一切話が通じない、どうしようもない後輩だったのである。
怒りたくないのに怒らせ、罵りたくないのに罵らせたんだな、と思う。


明日仕事だけど、行きたくないなあ。
正直辞めたい。
でも、辞めたところで、どこの職場に行ってもきっと同じだし、30過ぎてようやく得た正社員のポジションをわずか1年で手放すのは危険すぎる。


できることを一個ずつやっていくしかないんだよね。

Twitterでは、ASDで苦しんでいる人を多く見かけるが、街中でそれっぽい人を見たことがない。どこでどんなふうに働いておられるのだろう。私のように事務職なのだろうか。

ぼちぼち改善策を勉強していきたい。

読んでくださってありがとうございました。
明日からまた頑張りましょう。

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