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企業解説 オーエスジー -shaping your dreams 

初めまして!
ワタライと言います! 工具や設備に囲まれた生活をしています。
日本が世界に誇るものづくり企業について私見を交えながら解説していきます。

事業内容について

オーエスジーは言わずと知れた切削工具のメーカーです。私の職場でもよくOSGの箱は目にします。

タップ、エンドミル、ドリル、転造工具(ダイスなど)を主に製造しています。工業系以外の方々には馴染みのない名前ですので、簡単にですが、解説いたします。(解説は少し下にあります)

この会社の主力製品と言えばタップです!!!
国内シェア50%以上、更に世界シェア30%以上になります!!!
自動車には約3千本、航空機には約1万本のねじが組み込まれているので、世界でどれだけ使われてるんだという話ですね。

雌ねじを切るタップと一言に言っても、素材は様々で要求は千差万別。それに応じて一々ステンレス用、合金用にタップを準備するのは手間ですよね。(オーエスジー側からしたら嬉しいのかも知れませんが……)
そんな悩みに応えたのが「Aタップ」というブランドになります。

Aタップとは

 個人的に切削加工で一番嫌なのは切屑の問題です。ステンレスやアルミだと長い切屑が工具に巻きついてしまったり、刃先に付着してしまうと切れ味が低下してしまいますので。(このような問題が解決されない場合、設備が複数台あっても、工具の折損や治具の破損などで機械を止めることになってしまうので、効率が非常に悪いです)
 このAタップというブランドの工具は、幅広い素材に対応するタップとして世の中に登場しました。切屑排出と切れ味重視の刃先になっております。
 切屑問題を解決し、機械を止めずに、工具集約出来る工具として、世界シェア拡大の一助となっていると思います。

              https://www.osg.co.jp/products/tap/spec/a-tap.html より引用

切削工具とは

 切削工具とは、読んで字の如く素材を切って削る工具になります。アルミのような柔らかい素材や硬い鋳鉄、チタン、インコネルなど耐熱合金(硬くて粘っこい)と呼ばれるものの加工に使用されます。

 先に上げた工具の用途は次の通りになります。①タップ(雌ねじ穴を作る)②エンドミル(外側削って形状を作る)③ドリル(穴を開ける)④転造工具(雄ネジを作る)
この他にスローアウェイチップのような刃先交換工具も製作しています。

 競合として話題にあがるメーカーは、タップだと、田野井製作所だったり、彌満和製作所、富士精工などになります。
 ドリルだと競合は多くて不二越、サンドビックなどになりますかね。基本的にはドリル→タップで雌ねじを切る訳なのでドリルよりタップの精度の方が要求精度は高いです。(穴開け精度に依存するので、ドリルを蔑ろにして良い訳ではありません)

ドリル、リーマ加工図
             https://www.osg.co.jp/about_us/ir/about_osg/index.html より引用
エンドミル加工図(金型)
             https://www.osg.co.jp/about_us/ir/about_osg/index.html より引用
転造工具
             https://www.osg.co.jp/about_us/ir/about_osg/index.html より引用

中期経営計画について

 それでは、オーエスジーの中期経営計画について深掘りして行きたいと思います!

                  https://www.osg.co.jp/about_us/ir/policy/plan.html より

 オーエスジーは中期経営計画にROA(総資産事業利益率)を採用しており、図中にもある通り営業利益率の上昇を主眼にしております。2021年11月時点での営業利益は16,105(百万円)となっており、これから3年で営業利益を倍にするという計画ということですね。
 極端な話、売上高を倍にしようと思えば薄利多売な商売をすれば達成は容易かと思います。(その場合、営業利益率は半分くらいになってしまうでしょうけど)
 売上高ではなく、営業利益を伸ばすためにオーエスジーは次のような戦略を掲げております。

                  https://www.osg.co.jp/about_us/ir/policy/plan.html より

 現在30%程度あるタップシェアを伸ばすのは勿論のこと、微細精密加工に力を入れていくということとなります。
 反面、自動車関連の比率は下落しており、電気自動車にシフトしていくためボディや内燃機関向けの工具需要が低下していく可能性を織り込んでいるのかと思います。当然電気自動車向けの切削工具需要はありますが、部品点数がどうしても減ってしまうので、総需要は減少してしまうのは避けられないかと思います。

 売上比率が伸びていく(予定)微細加工について簡単ではありますが、ご説明したい思います。微細加工とは読んで字の如く微細な加工となります。
 具体例を挙げると薄いステンレスやアルミの板に0.1mm未満の穴を均等に何個も開けたり、石英ガラスなどの脆性材料の穴開けや加工を行います。他には銅電極加工などに用いられます。
 穴開けにせよ銅電極にせよいずれも、非常に高精度が要求される加工になります。それに伴い、従来工具に比べて刃先の形状精度、ボディの寸法精度への要求値は必然的に高くなります。(刃先の公差:0,-0.003mm, ボディ精度:0,-0.0025mm)
 他には超精密金型(射出成形用金型)やモーター部品を加工する際に使用されます。どちらも今後成長が期待される分野になります。
 あとは面白いものですと、人工関節の表面を切削加工するのにもそういった工具が使用されます。
 付加価値のついた工具は必然的に従来品に比べて、高額になり、高利益率になる可能性が高い製品と思われます。
 私見で申し訳ございませんが、微細工具など通常よりも精度を要求される工具を製作するには ①分解能の高い工作機械 ②精密刃先加工のノウハウ が必要だと考えております。
 ①を実現する機械はやはり高価です。また②のような加工ノウハウは一朝一夕で身につくものではないので、参入障壁が通常品に比べて高いと思います。(あとは、それだけ超精密な加工をするのに、ネームバリューがないところの工具は何かあると怖いので使いたくないですよね……)

余談①


 5G対応のスマートフォンが発売されるとなった時、5Gの周波数の関係で背面や側面に金属が使えないのでアルミナやジルコニアなどの素材への穴開けが注目されたのは記憶に新しいです。(一時期盛り上がりましたが、その後パタリと話を聞かなくなり、従来と変わらないまま新型は発表されました)
 微細穴開けとなると競合はユニオンツール(6278)や日進工具(6157)になると思います。設備は芝浦機械や碌々産業を使用しているメーカーが多い印象ですね。

 

株価について

https://jp.tradingview.com/chart/?symbol=TSE%3A6136 より

 ここまでオーエスジーという企業がどのような製品に自信を持っており、今後どのように伸ばしていくのかというのを中期経営計画より、考えておりましたが、ようやく株価の話となります。
 オーエスジー(6136)は東証1部に上場しており、決算期は11月となっております。自己資本比率は68.7%と高い水準を維持しております。また外国比率が25.1%と高めなのが特徴となっております。直近の高値は2,172円(2022/1/13)につけております。11月期の決算発表にて増益と自社株買いの発表により窓を空けて上昇した形となります。
 直近の下落は日本全体の株式市場が下落しており、その煽りを受けて下落していると思われます。不安定な相場だと配当性向が高い株に注目が来ると思います。(現時点では配当性向は32%ですが、将来的に40%を目指していますし、ROAを重視した経営を行なっていくということは配当もそれなりに期待出来るかもしれません)
 今すぐ買うべきとは地合い的に申し上げられませんが、地合いが回復を見せたタイミングでは拾いたい銘柄だと思います。個人的な目標株価は2,400~2,700くらいかと思っております。(中期経営計画通り進んで行けばという条件つきですが……)

余談②

 世界シェア30%の製品を持ち、自動車だけではなく他の分野での売上を伸ばしていく計画を立てているオーエスジーですが、私見ですが懸念事項がない訳ではないと思います。

 ①素材高騰リスク
 食品や燃料などの値上げがしきりに行われている昨今、工具業界も例外ではありません。オーエスジーの工具ボディは大きく分けて2種類あり、超硬(WC)とハイスとなります。特に超硬の価格上昇がここ数年で著しいです。 
 Aシリーズなどに使うハイスの値段は上がっているでしょうが超硬はそれの比ではなく上がっています。
 超硬はWCと表記され、タングステンカーバイトと呼ばれ読んで字の如く超硬い素材になります。硬ければ硬いほど、工具としての寿命は持ちますし、超精密工具などのボディ精度を出すには超硬での製作がほぼ必須となります。
 超硬は、タングステンの価格によって価格が上下するのですが、ここ数年どんどん価格が上がっております。
 素材の高騰を製品単価にどこまで転嫁出来るかによって目標としているROAが達成出来るかに関わってくるかと思います。

②微細加工シェアについて
 微細加工については、先ほど説明させて頂きましたがこの分野はユニオンツールや日進工具など国内の競合メーカーがおり、今後競争が激化していくと思います。とりわけ日進工具との争いが激化するかと思います。
 日進工具は小径に特化した工具メーカーのため、一日の長は向こうにある可能性があるかと思います。

③複合材加工について
 航空、宇宙関係で最近使用されているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の加工はこれまでお話していた超硬やハイスではなく、表面をダイヤモンドにてコートした工具で加工することになります。
 ダイヤコートは他の超硬工具メーカーも行っていることもさることながら、ダイヤモンド工具メーカーなどもCFRPやGFRP加工用工具を販売してきております。競合メーカーが増えてしまわないか心配です。

終わりに

 ここまで見て頂きましてありがとうございました!
 最後の余談については、書くのを若干迷った部分もありましたが、強みと懸念点はしっかりと両方伝えてこそかと思いますので、書かせて頂きました。
 株価分析については、チャートと有価証券報告書などを鑑みた個人的な意見です。インするタイミングはご自身の判断にてお願いいたします。
 今回初めてこういった形で記事を書きましたので、順序や追加で欲しい情報などありましたら、コメント頂ければ幸いです。
 それでは、また次の記事でお会いしましょう!


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