[10]F1で働きたいなら、日本のチームを目指すべきではない4つの理由

F1エンジニアに憧れる人へ。実際に目指してきた経験を元に、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く
・前回記事「[9]F1で働くには、求人が出てからでは遅いかもしれないということ

「F1エンジニアを目指してイギリスへ」と言うと、なんで日本じゃないの? とよく聞かれます。だって、日本にもF1に関わってきた会社はあります。又はありました。

2019年現在であればホンダ。[2014年]の復活以降、参戦し続けています。2008年までも参戦していたし、今後も参戦してく確率が高いでしょう。

他にもトヨタやニッサンといったメーカー、ブリジストンのようなタイヤメーカー。過去にもF1参戦をしてきた日本企業・チームはあります。

ただ、F1を目指すなら、日本国内のチームを目指してちゃダメでしょって思います。それは以下4つの理由からです。

(1)会社事情
(2)配属リスク
(3)どうせ欧米に弱い
(4)噂だけど:そもそも入れない

一つ目と二つ目はよく言われること、三つ目は僕の個人的見解です。四つ目は噂程度ですが、F1を本気で目指してるなら知っておいた方が良い噂。一つずつ見ていきましょう。



(1) 会社事情

日本でF1に関わることのあったホンダやトヨタ等ですが、これらの企業は、企業内事情でF1をやめてしまうことがあります。だから頼れない。

2008年にホンダが、2009年にトヨタが撤退してしまったのは、F1ファンにとってはまだ記憶に新しいところ。ホンダはエンジン供給で再参戦してますが、これだっていつまで続くか分からない。

経済危機がまた起こったらどうなるのか?
ホンダの業績が落ちたらどうなるのか?
社長が「F1は意味ない」と言ったらどうなるのか?
株主からの批判が増えればどうか?

他のチームだっていつ参戦取りやめるか分からないとは言えるけど、日本企業はF1をビジネスのツールとしてしか見ない傾向にある。だから、メルセデスやルノー等が「F1やめる」というのとは、少し訳が違う(と僕は感じています。)

また、イギリスに行けばチームに依存することはありません。たくさんのレースチームが常に存在してるので。


(2) 配属リスク

例えF1をやってる日本の会社にうまく入れたとしても、次なる大きなリスクがあります。それが、配属リスク。

僕が目指してたのは新卒でF1に潜り込むこと。新卒にとって、日系大手企業での配属リスクは、何よりも怖いものでした。

配属リスクの被害者は、今でもよく聞きます。

「F1に憧れてホ〇ダに入ったけど、実際やってたのは一般車の開発で、そこで10年働いて…」は最悪なパターン。

また、「最初は一般車の開発だったけど、数年してからF1開発部門に携わることになって…」なーんて美談にしてるけど、結局企業の言いなりかよと。

F1になんとしてでもたどり着きたいと考えるなら、あらゆる外部リスクは避けるべき。だから日本企業を目指さないことで配属リスクを避けるというのは、ある意味とても理にかなっていたのです。

ちなみにヨーロッパには、

「新卒一括採用→配属決め」
なんてことはありません。

新卒であろうと、就職は専門性が何よりも重視される。

例えば大学で学んできたことが、そのまま活かせる職につく。つまり、如何に自分が実力をつけ、専門性を身につけられるかが勝負の鍵。あとは自分次第となる。その方が確実性が高いですよね。



(3) どうせ欧米に弱い

日本のF1関連企業に対して批判的な書き方をしてきましたが、僕は日本のチームでF1をやるべきでないとか、そんなことを言ってるわけではありません。

日本のF1チームが活躍してたらやっぱり嬉しい。ただ、初めから日本のチームでF1を目指すのは、得策ではないんじゃないかと言いたいだけです。

この文脈で出てくるのが、日本では結局、ヨーロッパからの圧力や権威に弱い部分があるということ。

例えば「イギリスの大学卒業しました」という人と、「日本の大学卒業しました」という人がいるとする。もし両者の大学レベルや成績が同じだとした場合、企業や世間は両者を同等に見るか?

見ないですよね。

欧米の大学出た人の方が、なんか凄そうって感じる人が多いです。

あるいは中途でも、イギリスでF1やってたけど、これからは日本の企業でF1に携わりたいと言えば、話を聞いてくれる確率がグンと上がる。本場でF1やってた人、凄いやん、と。

別にF1をやってる必要もなくて、他のカテゴリーでも良い。中途で国を移動する時、

欧米→日本と、
日本→欧米を比べたら、
前者の方が圧倒的に楽。

特にF1の中心はヨーロッパにあるというのに、わざわざ自分をより状況の難しい場所に置く必要はない。ヨーロッパで挑戦しても、ダメなら日本に帰ってこれる。日本で挑戦してダメなら、ヨーロッパが受け入れてくれる…なんてほぼないけど。


(4) 噂:そもそもF1への想いが強いと、日本の企業に入れない

最後に、噂話程度のことですが、本気でF1目指すなら知っておいた方が良いことがあります。それが、

「F1やりたい!!!!」って人を、日本のF1やるような企業は取りたがらないということです。

面接ではF1をやりたくて志望している人より、なんでもやるって人の方が優遇される。これは日本企業の変なところ。結局、企業の言いなりになれる人が得をする。特に新卒ではそう。

先ほども挙げたように、日本ではまだまだ、配属リスクがある。もし「F1やりたい!」って人が、F1とは関係ない部署に配属されたらどうなるのか? ちゃんとやってくれるのか? 企業としては、心配なわけです。

だからF1やりたいって人を、わざわざ取らない。

F1やりたくてやりたくてしょうがないから、このnoteを読んでくれてるって人も多いので、ちゃんと知っておいてほしくて。

もちろん、企業側はそんなことを表立って認めませんよ。でも、F1やりたいって貫いて日系企業に就職決めた人なんて聞いたことない。逆なら複数人聞いてるけれど。

そもそも入れないなら、目指す意味ないやんって思います。



F1を目指す人へのTips

今回は日本のF1チームを目指すべきではないということについて書きました。前々回の「イギリスへ行くべき」を逆から説得した形となります。

・企業のF1撤退リスク
・配属リスク
・欧米に弱い
・そもそも入れない

それなら、日本でF1をすることを最初から目指すのは、得策ではないのではないでしょうか。ヨーロッパで目指す方が可能性が広がる。

少なくとも僕は、そうして日本でF1を目指すというのは、そもそもの選択肢として考えませんでした。是非参考になればと思います。


今セルビアでバックパック中なんですが、来週もちゃんと更新できればと思います🙄

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?