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舞台付箋 饗宴『chill moratorium』

チルモラトリウム、4/20夜の公演に乗船。自分が誰で、相手が誰なのか、相手が自分で、自分が相手なのかわからなくなる、二人だけの筈なのに、数多の数の役がいる静かで優しい時間がありました。観に行って良かった。

■公演概要

作・演出:西田大輔

企画・制作:DisGOONie
主催:DisGOONieS

公演期間
2022年4月19日(火)~4月26日(火)
月~金(各日1回開催)
OPEN/START 19:00

土日(各日2回開催)
OPEN/START 13:00
OPEN/START 18:00

DISGOONieS
〒104-0061 東京都中央区銀座3-3-1 ZOE銀座 B1F
( http://disgoonies.jp/ )
・チケット
テーブル/カウンター 15,000円
料理(折詰・持ち帰り可)・ワンドリンク・ショー鑑賞料含/(税・サービス料込)
START時間より約1時間の食事後、演目鑑賞。上演時間は1時間30分程度(休憩なし)。

■出演

CAST
凰稀かなめ
萩野崇


https://disgoonies.jp/show.html?code=0000034 告知ウェブサイトより

https://disgoonies.jp/show.html?code=0000034


■お弁当

※パン付き。オリーブ油つけて食べます。


■公演限定オリジナルカクテル

*アルコールカクテル Anlage ~素質~
*ノンアルコールカクテル kindlich ~無邪気~

anlage 〜素質〜

https://twitter.com/DisGooNieS_gnz/status/1516763654326169601?s=20&t=FkiFB5RqW4utfU5Fp3AY_A

■作品概要

ずっとこういう戯曲を描きたいと思っていました。
そして時間をかけ、ようやく辿りつきます。
逃げ道もなく、たった二人。
上質な俳優が、対峙するようで、信じあうようで、そしてその場所から
観客と深く深く、潜っていくような物語。
シンプル。それでいて、劇場という枠組みに囚われない可能性を、
僕が信頼する俳優とだけで創っていく物語です。
俳優の力で、物語が様々な形に変わっていきます。
登場人物は、無限に。そこに座ったあなたも、勿論そうです。
タイトルは、「chill moratorium」
一人の医者と、一人の詐欺師と、一本の古いシネマから物語が始まります。
是非、座ってみてください。
あなたの目の前に、一枚のカードがあります。

西田大輔

ウェブサイトより引用

https://disgoonies.jp/show.html?code=0000034

饗宴では初と思われる二人芝居の形式。

メモ:『La Strada』邦題「道」(1954年、イタリア)
https://eiga.com/movie/65473/

■舞台付箋

たった二人の真っ向勝負のような、重奏のような伴奏のような人の群れの中にいるような、たった一人でいるような芝居。
楽しんで、と凰稀さんの、或いは萩野さんの言葉を貰いながらテーブルに一通の封筒が置かれたところから物語は始まっていた。
他に誰の名前もなかったので本当に二人芝居だったのだけれども、互いが互いに人格と役を切り替えていくために、総勢八人くらい役があったと思う。映像で名前が投影されるし、その名を呼ばれるんだがもう誰が誰だかわからん。(最初に凰稀かなめ氏が切り替わる瞬間を見損ねた。)
役柄(と名前)の多さについては頭をつかう作品と言えなくもないけれど、名前を覚えていなくたって、そこに誰かがいるのに変わりなく、二人の激流のような芝居のやりとりを浴びるだけで健康になれそうな気がする。掛け合いが凄い。台本通りのような、アドリブだらけのような、台本を越えたような、その場で作り上げられていく芝居が凄い。
最初から彼女が本当に医師なのか、彼が詐欺師なのか疑ってみていたのに、誰が何なのか分からなくなるのが面白かった。混乱するのに、巻き込まれることが楽しい。難しいことは考えずに頭空っぽにして、あの奔流を浴びるのがいいのかもしれない。
上質な、静かで、熱くて、美しい時間があの場所にありました。観に行けて良かった。

公演終了後にテーブルに残った封筒を使って
再現したもの。
中身のカードは、中央の彼と彼女のテーブルへ。

観劇後に書きなぐったメモ:
診察だと医師は言った。長い長い、旅のような、一瞬の空白のような時間。
コールド・リーディング。
虚実を探すと言うより、眼の前のものをどう受け取るか。真実を探す、本物はどこか。誰か偽物か。何が本当で、何が嘘か、そんなことを考えている間に状況がくるくると変わっていく。二人いるはずの役者が三人に、四人に増えていく。五人目がきて、振り出しに戻る。二人が一人になる。一人が三人になる。一人殺されて、また一人。それから残ったのは何人? 役名も分からなくなる。今、誰が何を演じているのか、演じているのか元の素質なのか、その元の人格は本当に最初からあるものなのか、誰かが演じているものなのか、何者なのか。
虚実を探すと言うよりも、眼の前のものをどう受け取ったか。

いつ、どこの話なのか、過去と現在と、その場には見えていなかった未来が一箇所に同居している二人芝居。
chill moratoriumについて考える。公演の最後に映し出されたのは最初、ドイツ語だった。Erkältung moratrium。erがついていたか忘れたのでもしかするとKältungかもしれない。(※訂正、Kühlungでした、冷却!)チルモラトリウム。ゆっくりと、を強調する台詞。冷たいのではなく、ゆっくりとした猶予期間。何のためのものか、何のためのものか。意訳するなら魂の休息や、生死の彼岸、或いは終わりのその先。此岸と彼岸にいるような芝居の空間の中で、過去を振り返り、未来を見つめて今・此処にあるような時間だと感じられた。

東西ドイツのベルリンの壁、26年、これが崩壊から26年前の事を思い出しているのか、崩壊してから26年後の話なのか。
(ベルリンの壁の関連だと舞台「ひとりしばい」のvol.1『-ひとりシャドウストライカー、またはセカンドトップ、または、ラインブレイカー-』を思い出す。ベルリンの壁が崩壊した1989年から26年後というと2015年、言い間違いにより壁を崩壊させる切欠となったシャボフスキーが亡くなった年になる。)

死んだ人間を演じるということ。
既に亡くなった人間を、今生きている人間が演じるということ。
なりきるのではなく、そこに在るということを考える。
そこに、今もあるのだということを考える。

名前メモ
詐欺師 ヤコブ
医師 ジェルソミーナ
少女 ビアンカ (埋められた兎 ザンパノ)
老齢の医師 ポヤンスキー 63歳?
医師の弟子 クルト? 29歳
ハンス
東の兵士

人格:8 主婦
女/年齢:31歳
身長160cm/体重46kg

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