舞台付箋 新作歌舞伎『FINAL FANTASY X』
03/11観劇記録予定。
観に行ってよがっだァァァァァァァァァ。゚(゚´Д`゚)゚。
今日という日に黙祷を捧げながら、良い芝居と出会えたことに感謝を。
■公演概要
企画・構成:尾上菊之助
脚本:八津弘幸
補綴:今井豊茂
演出:金谷かほり 尾上菊之助
公演期間
日程 2023年3月4日(土)〜4月12日(水)
IHIステージアラウンド東京(東京都江東区豊洲)
https://www.tbs.co.jp/stagearound/
・公演オリジナルグッズ
劇場販売
・公演パンフレット3,000円
・ブロマイドケース3,000円
・トートバッグ(2種:ライトブルー/ネイビー)1,500円
・オリジナルアクリルキーホルダー1,200円
・クリアファイル650円
・九谷焼 小皿2,800円
・九谷焼 コップ3,500円
受注生産
・新作歌舞伎FFXアクリルスタンド全13種 2,000円
アートボード(サイズ:410mm×318mm) 16,000円
FINAL FANTASY X OFFICIAL GOODS(税込)
クリアファイル(vol.1,2)550円、クリアヴィジュアルカードセット2,200円、アクリルスタンド全9種1,760円、モーテルキーホルダー1,100円、缶バッジセット3,300円、オルゴール(ザナルカンドにて/素敵だね)2,200円、キーホルダー(ティーダ)2,090円、ぬいぐるみ(ティーダ/ユウナ)4,180円、ぬいぐるみ(モーグリ)2,970円
・チケット
前編・後編通し(全席指定・税込)
SS席 32,000円(非売品オリジナルCGヴィジュアルアクリルスタンド付)
S席 28,000円(非売品オリジナルCGヴィジュアル公演ポスター付)
A席 24,000円
B席 19,800円
前編/後編(全席指定・税込)
……前/後編のみを観劇できるチケット、非売品グッズ無し
SS席 18,000円
S席 16,000円
A席 14,000円
B席 11,000円
STAFF
美術:堀尾幸男
照明:磯川敬徳
振付:尾上菊之助
音楽監督:新内多賀太夫
作曲:鶴澤慎治
作詞:尾上菊五郎劇団 音楽部鳴物
音響:小寺仁 山本浩一
映像:石田肇
衣装:松本勇
ヘアメイクデザイン:松本慎也
立師:山崎咲十郎 尾上菊次 中村獅一
演出助手:荒井遼 小正あをい
狂言作者:竹柴潤一
舞台監督:南部丈
技術監督:白石良高
■出演
ティーダ:尾上菊之助
アーロン:中村獅童
シーモア:尾上松也
ルールー:中村梅枝
ルッツ/23代目オオアカ屋:中村萬太郎
ユウナ:中村米吉
ワッカ:中村橋之助
リュック:上村吉田朗
ユウナレスカ:中村芝のぶ
キマリ:坂東彦三郎
ブラスカ:中村錦之助
ジェクト:坂東彌十郎
シド:中村歌六
ティーダ(幼少期)/祈り子:尾上丑之助(後編のみ出演)
尾上徳松、尾上菊史郎、尾上菊次、市川蔦之助、中村蝶紫、中村吉兵衛、澤村國矢、上村折乃助、中村橋吾、中村蝶八郎
その他長唄、鳴物、竹本連中、録音音楽の方も載せたかった省略すまぬ
■作品概要
上演時間
■舞台付箋
「最後かもしれないだろ、だから、全部話しておきたいんだ」
我が青春のFFシリーズまさかの歌舞伎作品になっていた。スクエニ最速最速先行で申し込みしたら当選したので3/11公演に行ってきた記録。
・歌舞伎としてのFF-Xへ
もともとアジアンテイストなデザインであるFF-Xだが、本作はより歌舞伎としての表現を強めるために歌舞伎『FF-X』として衣装やヘアメイクのアレンジがなされている。また、キャラクタービジュアルも、全員が歌舞伎役者なのでユウナもルールーもユウナレスカもその他市井の民も皆男、女形であることも含めて、大分、インパクトが、強い。
インパクトが強かったんだけど、いざ開演して物語が始まると自分は違和はなくなった。2.5次元舞台あるあるマジック。(コスプレだの何だのと散々2chでこき下ろされたliving stageシュタインズ・ゲートも衣装を着たヴィジュアル見たときは吃驚したのに、実際見たらキャラクターが現実に生きていたっていうあの体験を思い出す。)
ティーダの髷や、ユウナの着物姿、ルールーの着物に誂えられたアネモネの帯etc.etc……。その全てがFFX歌舞伎の為に織り上げられた世界を形作っていて、作り手の思い入れを感じられる。ティーダが、本当にティーダとして生きて動いて、喋っている。ジェクトはまんまジェクトだし、ユウナは17歳の少女だろ? え? 男性? そんな嘘吐いちゃいけませんよまじで??? 度肝を抜かれたユウナレスカも動いて喋ると本当にユウナレスカなんだ……中村芝のぶ氏は女性ではなかったんか……
・歌舞伎/FF初心者向けの前編冒頭のオオアカ屋前口上ありがとう
前編の開演と共に23代目オオアカ屋(中村萬太郎)による前口上がゆるーく始まるのが、これがもう歌舞伎初心者にもFFX初心者にとっても、素晴らしく優しい。歌舞伎初心者の筆者としても、さっぱりな世界だったので立ち回りをしたり、歩く姿の足音をつけたりという時に打ち鳴らす「ツケ」の説明や、所謂決めポーズとして「見得」の紹介と、見得を切ったら拍手をという説明のお陰で見得の場面がめちゃんこ楽しみになった。ワクワク全開。
且つ、オオアカ屋のこの台詞「これはあなたの、あなたあなたあなたの、物語」あなた達の物語ではなく、劇場にいる全ての人の、一人ひとりの物語であると言ってくれたのがすげぇ嬉しくてな、もうそこで泣いてた。
・だから、全部話しておきたいんだ
普通にOPが始まったんだがー!?今の似てるけどなんか森田一成さんの声じゃないやしかしこれは森田氏のティーダでは、嘘だろ此処からもう演者がァ!!!ってあまりの似た雰囲気の声質に驚きながら再現度の高さに泣いた。この場面二周目(なんて機能はXの本編ゲームにはないが)やる時にめちゃんこ泣いたやつなので。
その後もあれよあれよと丁寧なFF-Xが始まってビビる。1000年前のザナルカンドでは、FFXリミックスプレリュードが和楽器を使って奏でられるし、シンのコケラだってもりもり出てくる。アーロン(中村獅童)による「これは、お前の物語だ」が石川英郎氏そのものみたいな重低音で、だがあれは違うんだろう……?歌舞伎役者ァと唸りながらスピラへ飛ばされるIHIアラウンドシアター。海の遺跡(リュックと初邂逅・アニマの祈り子がいる彼処)は省略してビサイド島へ流れ着くなど歌舞伎舞台版としての省略、変更はあれど、流れとしては違和の少ない改変で、個人的には納得している。何せ細かい仕草やなんかも拾いつつ、丁寧にFF-Xを描こうとしていると感じたからだ。
・音楽が歌舞伎風に
和楽器でFF楽曲編曲まじか!?最高に合うんだが!!サントラください。
・歌詞も歌舞伎風に
「イエユイ~ ノボメノ~」でお馴染み祈りの歌。劇中、色々なver.で奏でられていたこの曲が後編のクライマックスで「祈れよ エボン=ジュ」に変化。FF-XとX-2の無印くらいしか知らんので、FF関連作品で何処まで表現されていたのか存じませんが、意味の通る歌詞になって聞くの生まれて初めて聞いたのですげぇ嬉しい。更には天地花の歌舞伎らしいFFX歌舞伎・祈りの歌として編曲されてラストバトルを飾っていくの本当に最高です。
・拘束時間9時間ゆえの丁寧な脚本と休憩
twitterのどこかで9時間ってのはRTA(リアルタイムアタック)の公式記録と同じだかなんだからしくて、歌舞伎になる+終演時間が6時間予定だったのが9時間に変更になった情報を知った時は、嘘だろふざけんなと思ったものだが、丁寧な脚本・演出作りを観終えて納得の9時間。
しかも前編は20分2回、1:30のマチソワ退出時間を経て後編25分1回の休憩がある。前編はほぼ1時間に1回くらいの間隔なので、お手洗い近い勢にも優しい。
・FFX歌舞伎ならではの追加シーン
歌舞伎でFF-Xを描くなら、という本作ならではのオリジナル追加シーンが各所に有る。ティーダとジェクト、ユウナとブラスカに加えた、シーモアと字スカルの親子関係。ユウナとシーモアを対比させるような異種族婚の子供の表現。
そして筆者がいっちゃん好きなのは後編終盤のジェクト戦。ゲームではシンの体内で、ジェクトのでっかい剣の上で異形と化したジェクトと戦うあの場面が本作ではティーダとジェクトの一騎打ちで表現される。が、コマンドアクションで声掛けができたように、この場面では、子供の頃のティーダがジェクトの動きを鈍らせる。これあれじゃん、お互いはっきりした意識の中で再会したのがこのシンの体内だったが為に、成長したティーダを息子とわかっていても、ジェクトの中には7歳の頃の姿が焼き付いている。彼の息子は10年前に分かれた7歳の頃のままだった。その思い出が自我を失いつつあるジェクト自身を止めようと呼びかけ続けているっていて号泣しかない。子供の頃のティーダは手毬遊びのようにブリッツボールで遊ぶんスよ、蹴って遊んでいた思い出があるんだよ……泣かせるな馬鹿ー!
二番目に好きなのは、エボン=ジュ戦の召喚獣バトルです。FFX歌舞伎による公式召喚獣擬人化(あれは擬人化ではないかもしれん。隈取りすごかったし後で歌舞伎のあれこれ調べます)ありがとうありがとう。
ヴァルファーレ以降召喚獣を呼べたか心配していたけれど、ユウナはビサイドのヴァルファーレの後、キーリカのイフリート、マカラーニャのシヴァ、ベベルのバハムートの他にもしっかりジョゼのイクシオン、ナギ平原の用心棒もゲットしてたぜ。(アニマとメーガス三姉妹除く)
歌詞のある楽曲で各召喚獣がわかりやすく歌い上げられ「好きな言葉はァ心づけェ」っていう用心棒めっちゃ好き。
・3.11とFF-X
これは唯の個人的な想いであってFF-Xとは直接の関わりはない。
FF-Xは2001年に発売された作品で、2011年の3.11には何の繋がりもない。発売されたあの時に、震災の影などこの作品にはなかった。
けれど、2023年の今、この作品を歌舞伎という形で改めて観た時、感じ方は大分変わったように思う。
前編でユウナ一行がキーリカへ赴き、作中で最初の「異界送り」をするまでに筆者は号泣した。異界送りをする要因となったキーリカへのシン襲撃が全ての理由だ。3.11という日付が何があったのか分かった上で、都合がつくからとこの日を選んでチケットを買った。筆者は直接の被災者ではない。被災した方々の気持ちを配慮しきれているとは思えない。けれどあの東北の震災に纏わる出来事で大きな影響は受けた。あのときの恐怖はまだ覚えている。
「いなくなってしまった人たちのこと、時々でいいから、思い出してください」
これは本編でのユウナの最後のスピーチの台詞だ。彼女は、彼女たちは失うものが多すぎたからこそ、この言葉を口に出すことが出来た。
だからこの言葉は自分達に向けられたもの、受け取り、忘れないことを刻む側なのだと自分は思っている。
この台詞は決して直近であった日本の震災を思い出して欲しいと言っている訳ではない。FF-Xのシナリオには、シンという震災の具現化、過去の戦争、人種差別、願いという名の終焉あるいは人災……様々なテーマを拾い上げることができる。ゲーム発売当時でも、2023年の今でも普遍的に問いかけられる事柄だ。その中でも、今2023年の大人になった自分が真っ先に思い浮かべるものが、直接の被災者でないながらも、親しい人が被災し、そして自分の人生にも影響を及ぼした3.11だった。
阪神淡路も、東北も、長野も、和歌山も、熊本も……地震大国日本に生まれ生きている限り……忘れないこと、自分の物語を、今、これからをどう生きるかをずっと考えていくことを、ユウナは、FF-Xは自分に伝えているのだと感じた。
新作歌舞伎FINAL FANTSY Xという作品を、今この瞬間に、自分の意思で選び、観に行くことが出来て良かった。ありがとう。